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いざ、生きめやも。書評:熱風2013年7月号 特集「憲法改正」

   

スタジオジブリは、毎月10日に「熱風」という無料の小冊子を発行しているのですが、今月の特集は、「憲法改正」についてです。
今回の特集は、自民党(特に安倍総理)が憲法改正に意欲を燃やしていることに端を発し、憲法改正の条件を記した「憲法第96条」と、平和主義を規定した「憲法第9条」に焦点をあてています。

日本国憲法 第96条

この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票において、その過半数の賛成を必要とする。

日本国憲法 第9条

日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない

「憲法改正」特集のラインナップは、以下の通りです。

  • 憲法を変えるなどもってのほか (宮崎駿)
  • 9条 世界に伝えよう (鈴木敏夫)
  • 戦争は怖い (中川李枝子)
  • 60年の平和の大きさ (高畑勲)

なお、今回の「憲法改正」特集については、8月20日18:00まで「熱風」のWebサイトから特集記事のPDFをダウンロードすることができますので、ぜひダウンロードして読んで頂きたいと思います。今回の記事では、憲法改正の是非についてではなく、「熱風」の特集について印象に残った点をご紹介します。

『熱風』2013年7月号特集「憲法改正」(852KB)

スタジオジブリに息づく社会主義の思想

今回の特集を読み終えて、スタジオジブリに根付く「反戦」「半個人主義」といった社会主義思想の根幹を見た思いがしました。

宮崎駿さんの作品にはそこまで強く社会主義思想は反映されていませんが、(「紅の豚」や「ハウルの動く城」の主人公には反権力的なニオイがしますが)高畑勲さんの作品には社会主義的な考えが強く反映されています。

戦争が引き起こした悲劇を伝えることで反戦への想いをこめた「火垂るの墓」、多摩ニュータウン開発をテーマに都市開発が引き起こす影響をコミカルに伝えた「平成狸合戦ぽんぽこ」といった作品には、高畑勲さんの考えが強く反映されていると感じます。

なお、日本テレビ放送網の元会長だった故氏家齊一郎氏は、高畑勲を評して「あいつにはマルキスト(マルクス主義者)の香りがする」と語っていたのを聞いたことがあったのですが、(余談ですが、氏家齊一郎氏も、渡辺恒雄氏も、学生時代は共産党員として活動していたことがあります。)そんな氏家さんが最も好きだった作品が「ホーホケキョ となりの山田くん」でした。

「ホーホケキョ となりの山田くん」は一見特に何のメッセージも込められていないように感じる作品ですが、糸井重里さんが作った「家内安全は、世界の願い。」というキャッチコピーが採用されたように、「何の事件も起こらない平穏な生活が、最も素晴らしいのだ」という高畑さんのメッセージが込められている作品です。

宮崎駿監督の新作「風立ちぬ」では、関東大震災、世界恐慌、そして太平洋戦争へと突入していく動乱の世の中を、強く生きようとする人々が描かれています。スタジオジブリの作品は、権力者を描くのではなく、権力者に翻弄されながらも、強く生きようとする人々を一貫して描いてきました。スタジオジブリが熱風のテーマとして「憲法改正」を取り上げたのは、スタジオジブリに根付く思想に照らしあわせれば、当然のことだと思います。

大事なことは産業構造をどうするのかということ

今回の特集記事で興味深かったのは、宮崎駿さんが記事の中で語っていた2つのテーマです。1つは、今後の産業構造についてです。宮崎さんは現代の産業構造について、以下のように語っています。

「自分たちの食うものや着るもの、住むものは自分たちで作ろう」
という思想を持たずに、ただ消費して、あとは全員がサービス業みたいな、
そんな国にしたってしょうがないし、うまくいくわけがないに決まってます。
(中略)
今は針や糸も知らないお母さんたちがいっぱいいる。
火も知らないでしょう。亭主がたばこを吸わなかったらライターもマッチもない。
そういう人間が無事にこの世界で生きていけると思いますか。

流行っていることはやるな

もう1つ、宮崎さんが語っていたこと。それは「流行っていることはやるな」というメッセージです。
憲法改正とは少し外れていますが、新作「風立ちぬ」の内容にも通じる、宮崎さんが今伝えたいメッセージが語られています。

将来の希望とかではなく、今やっている仕事がおもしろいとか、
友人とホッとするいい時間を持つだとか、
好きな亭主の顔見たらうれしいとか、
これから、人はそういうことで生きていかないといけない。将来の保証なんかない。
こんなこと言っても何の励ましにもならないけれど、でも、本来人間はそうして生きてきたんです。

最後に一言だけ言うとすれば、
「流行っていることはやるな」ということ。
アニメーションもそうだけれど、流行っているものを追いかけたら、もう間に合わない。
今、みんな口を開けば「不安だ」って言うけれど、
「じゃあ、前は不安じゃなかったの?」と聞きたくなるくらい、実は状況はそれほど変わっていないと思います。
こんなこと言っても何の励ましにもならないけれど、でも、本来人間はそうして生きてきたんです。

健康で働ければいい。
働く場所がなければ、自分で作りゃいい。
不安が流行っているから不安になる。
だから、流行っていることはやらないほうがいいです。

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