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スタジオジブリの海外ビジネスを手がけた担当者の連載「吾が輩はガイジンである。」が面白い

      2013/09/20

スタジオジブリは、毎月10日に「熱風」という無料の小冊子を発行しているのですが、2013年7月号から始まった新連載「吾が輩はガイジンである。」が面白いのでご紹介します。

「吾が輩はガイジンである。」では、スタジオジブリの海外事業部取締役部長として、ディズニーとの提携や海外での配給など、スタジオジブリ作品の海外ビジネスを担当してきたスティーブン・アルパートさんが、今まで表立って語られてこなかったスタジオジブリの海外ビジネスの裏側について語っています。

なお、スティーブン・アルパートさんは「風立ちぬ」にてカストルプというキャラクターの声を担当しています。(詳しい経緯は「風立ちぬ」オフィシャルサイトの「プロダクションノート」に書かれています。)

ガイジンが”日本で働く”ということ

読み始めて面白かったのは、著者が「ガイジンが日本で働くこと」について語っている箇所です。

日本に長く住み日本語を話すガイジンは、いつかガイジンでなくなる日を夢見るものだ。
外資系企業で働くガイジンは本当の日本の会社で働ければ、
あるいは私が聞いたところではガイジンを「卒業」し次のレベルに達すれば、
日本でガイジン扱いされなくなると期待する。
しかし、そうは問屋がおろさないということに気づく。

こうしたことは、海外で働く日本人も少なからず同じようなことを考えたことがあるのかもしれないなぁ、と読んでいていて感じたのですが、それと同時に著者がスタジオジブリでの仕事について、他の社員とは違った態度で接していたのではないか、とこの文章から感じました。

ガイジンが”スタジオジブリで働く”ということ

著者からみたスタジオジブリとは、どんな会社なのでしょうか。
著者はスタジオジブリで仕事する前は、シティバンクやウォルト・ディズニーで働いていたそうですが、その経験を踏まえて、著者はスタジオジブリのことを「本当の意味で会社ではない」と言います。

「無」とは、加工すべき「もの」がない事を意味する。
原料を買い、いろいろ手を加えて原型を変え、できた製品を売って利益を得る。
それが標準的なビジネスモデルである。
自分のアイディアの力と想像力で出発し、それを意志の力で「形」のあるものを創りだすのは、ビジネスとは呼ばない。それはアートである。
スタジオジブリは本当の意味で会社ではない。

また、著者はスタジオジブリでの自身の仕事について、以下のように語っています。

(ウォルト・ディズニーやシティバンクといった)企業における自分の仕事について聞かれた時は、
何をして給料をもらっているのか簡潔に説明できた。
いっぽう、ジブリにおける仕事が何なのか聞かれると、
相手が納得するような事絵はなかなかできない。
どうしても一言でまとめろと言われれば、物事を説明する仕事が大半だと答えざるを得ない。
グローバル化が急激に進む中、日本企業には取引先の欧米企業に対し、説明しなければいけないことがたくさんある。
そしてスタジオジブリの場合は普通の会社以上に説明を要することが多いのである。
(中略)
アートであってもときにはお金が必要で、お金はふつう安定している状態を望む。
うまく説明できる人がいればお金は安定する。
いくら説明してもだめな場合もあるが。

ちなみに、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーには、自らの仕事について以下のように言われたそうです。

「アルパートさん、あなたに求めるのはわれわれの作品を海外に持っていって成功させることです。成功とは高い評価を得ること、そして稼ぐことです。もちろんどちらも望んでいますが、もしどちらも実現できなかったらあなたはクビです」

なお、鈴木敏夫さんからは「アルパートさん、人生は仕事だけじゃない」とも言われたそうですが、僕の経験上「人生は仕事だけじゃない」という人の大半は、仕事に人生をかけています。鈴木敏夫さんもその1人です。著者はその事を振り返って「仕事が24分の23を占める人のアドバイスだったことに注意すべきだった」と語っています。

ディズニーとの提携を利用した「野茂戦略」

スタジオジブリにおける著者の初仕事は、ウォルト・ディズニー・スタジオと徳間グループの事業提携の記者会見でした。「もののけ姫」のアメリカでの配給についても発表されたこの記者会見は、衛星中継で行われました。

スタジオジブリがなぜディズニーとの提供を衛星中継で発表したのか。そこには鈴木さんの「野茂戦略」と言われる戦略がありました。

「野茂戦略」とは、近鉄時代は野球好きにしか知られていなかった野茂英雄が、メジャーリーガーになることで野球好き以外にも知られた存在になったことにならって、スタジオジブリがディズニーと提携したことを大々的にアピールすることで、海外での成功が約束されていることを伝え、日本での価値をさらに高めようとしたのです。

ここで面白いのは、ディズニーとの提携はあくまで日本や日本のメディア向けにPRしようとして実施したことで、必ずしも海外進出ありきではないということです。スタジオジブリは事ある毎に「海外の人に向けて作品を作ることはない」と語っていますが、この記者会見の例からもPR戦略についても一貫して日本のマーケットに向けた戦略をとっていることが分かります。

スタジオジブリの海外戦略とは何か

スタジオジブリについては、これまで作品づくりの裏側については様々な媒体で語られてきました。しかし、スタジオジブリという会社のビジネスや、スタジオジブリがいかにして海外ビジネスを展開してきたのかということは、これまであまり語られてきませんでした。だからこそ、ひっそりと始まったこの連載は読んでみる価値があると思うのです。この連載は隔月の連載ということなので、再来月を楽しみに待ちたいと思います。

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