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「風立ちぬ」のメッセージはどのように受け止められたのか。書評:熱風2013年7月号 特集「風立ちぬ」

      2013/12/06

スタジオジブリは、毎月10日に「熱風」という無料の文芸誌を発行しています。今月の特集は先日公開された映画「風立ちぬ」です。

「風立ちぬ」特集のラインナップは、以下の通りです。

  • 庵野秀明x松任谷由実x宮崎駿 映画「風立ちぬ」完成報告会見
  • ふたりの堀越二郎(堀越雅郎)
  • 思いは時空を超えて、いろんな人に届いていく。(中田敦彦)
  • 人間であることをやめるな(半藤一利)

本当の堀越二郎

「風立ちぬ」の主人公は本当はどのような人物だったのか。その疑問に答えてくれているのが、実の息子でもある堀越雅郎さんが書いた「ふたりの堀越二郎」という記事です。堀越さんは映画を観始めた時は、映画と実際の人物や設定の違いに戸惑ったそうですが、途中から自分が二郎になったつもりで観ていたそうです。

息子から見た実際の堀越二郎さんは2つのイメージがあるそうです。ひとつは、勉強の教え方が下手で、すぐ怒り出す、怖い父親のイメージ。もうひとつは、柔和で、温厚で、穏やかなよき父親のイメージだそうです。映画では後者のイメージを元に描かれていると思いますが、映画を観ていると、とてもすぐ怒り出す怖い人には見えません。

でも、映画とも共通点があったのは、戦争に対する考え方です。若い頃からアメリカやヨーロッパに留学していた堀越二郎は、「欧米と戦争をしたら勝てない」ということを分かっていたそうです。分かっていながら、零戦を設計した。そこには映画と同じように、「美しい飛行機を作りたい」という思いがあったのではないのでしょうか。

ジブリで育った世代は「風立ちぬ」をどう受け止めたのか

個人的に1番面白かったのは、オリエンタルラジオの中田敦彦さんの記事です。中田さんは自分のことを「ジブリとともに育った世代」と語っています。「ナウシカ」「ラピュタ」を知って、「トトロ」「魔女の宅急便」と時系列通りに、自身の成長とともに作品に出会った世代が「風立ちぬ」をどう受け止めたのか。そのことが書いてあったからです。

中田さんは「風立ちぬ」を「今の自分のために作られた映画」だと思ったと言います。正直、近年のジブリ作品には距離があったが、「風立ちぬ」はそうでなかったというのです。それは、なぜか。

中田さんも書いてますが、「ラピュタ」のパズーと同じくらいの少年だった人物が、今は二郎の年齢になっているからです。仕事に挫折する二郎、同期と競い合う二郎、恋愛する二郎、それはジブリとともに育ってきた世代にとっては、今の自分と同じ悩みを抱えた主人公なのです。だからこそ、映画を観に行った「ジブリで育った世代」は、「風立ちぬ」に共感し、感動するのだと、この記事を読んでいて思いました。

困難な時代に生きる

半藤一利さんの記事「人間であることをやめるな」には、宮崎さんが「風立ちぬ」を作った背景にはどのような考え方があったのかが書かれています。
半藤さんは、宮崎さんが今の日本の状況を憂い、どうにかしなければならないと考えた結果生まれた作品が「風立ちぬ」なのだと指摘します。

いまの日本は「天上大風」、
すなわち、ものすごい勢いで荒々しく吹きまくる嵐の真っ直中にある。解決する道はなかなかみつからない。
中国がどうの北朝鮮がどうのということではなく、
日本国そのものが大転換期、解体しつつある。
先行きは不安ばかり、と言ってもいい。
そうした「行き止まり」のときに、日本人は、
とくに若い人たちは、どう生きたらいいのか。

昨今「働き方」について論じたり、考えたりすることが盛んに行われていますし、「働き方」について論じた本がベストセラーになっています。

nishi19 breaking newsでも「“働き方”を考えるのが流行っている。」などという記事を書いたことがありますが、働き方を考えることが流行っているということを言い換えると、皆どのように生きたらいいのか分からない、という事なのだと思うのです。高度経済成長の時代では、男性は経済の成長をなし得るために働くこと、女性は男性を支えるという生き方が提示され、人々は迷うことなく進むことが出来ました。

ところが、経済成長が実現した現代では、自分自身でどう働くべきか、どう生きるべきか、考えなければならなくなりました。そこに、リーマンショック、東日本大震災といった時代の転換期となる事件が起こります。一直線に進むことに慣れていた人々は、時代の波にのまれ、道標を失ったといえるのかもしれません。

では、どうするべきなのか。半藤さんは宮崎さんの考えをこのように代弁します。

明日に光明がもてない、「行き止まり」であればあるほど、
物事をきちんと考え、真面目に、
自分のなすべきことを困りつつウンウンと唸ってやりつづけながら、
君たちは人間であることをやめないで生きなさい

そして、これらの主張は、堀辰雄が書いた「風立ちぬ」の冒頭の言葉に集約されるのです。
「風立ちぬ、いざ生きめやも」

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