資本主義と社会主義の間。書評:熱風2013年10月号 特集「人口減少社会」

2013/11/23

スタジオジブリは、毎月10日に「熱風」という無料の小冊子を発行しているのですが、今月の特集は、「人口減少社会」についてです。

「人口減少社会」特集のラインナップは、以下の通りです。

「人口減少社会における希望」とは何か(広井良典)
「里山資本主義」で、”人口減少する過疎地”は楽しく、豊かな場所になる(井上恭介)
人口減少社会と貨幣(岩村 充)
人口減少社会と資本主義の関係(小飼 弾)
「家族をつくれる人」と「つくれない人」という格差社会(山田昌弘)
見えない文明移行期(平川克美)

ヒトラーが提示した「結婚推進法」

本書を読んでいて思い出したことが、あります。「ヒトラーの経済政策」という書籍に書かれているのですが、ヒトラーという人は政権を握った後、「生活に困っている国民を助ける」という方針のもと、徹底した公共事業の推進と、社会福祉制度を充実させるための施策を次々と行いました。施策の中には「○○歳以上の男子を優先して雇用する」といった、高年齢者の雇用を安定さ得るための施策もあったのだが、同時に行ったのが「結婚推進法」の制定です。

高年齢者の雇用が推奨され、職を失って不満をもっている若年層の不満を解消するため、結婚した人に対しては一定額の補助金を出す、という法律です。ヒトラーとしては、既婚者を増やすことで、税収入を増やそうという狙いもあったと思います。

小飼弾さんは、記事の中で「資本主義が普及すると人口が減少する」「資本主義は社会主義で裏打ちすることによって継続する」と書いていますが、人口減少社会と資本主義の関係は、現代においても、ヒトラーの時代とあまり変わらないといえます。

高齢化社会の最先端を走る中国

本書を読んでいて思い出したことが、もう一つあります。中国の人口は13億人を超え、今後も増加し続けると言われています。しかし、中国は一人っ子政策の影響で、高齢化社会になると言われ、数十年後は人口が大幅に減少すると言われています。中国という国は、現在「人口増加社会」だと思われていますが、実は将来的には「人口減少社会」になることが約束されている国でもあるのです。

中国は「人口増加社会」から「人口減少社会」までを、日本の何倍ものスピードで進んでいます。そして、中国は資本主義と社会主義を組み合わせ、今日の隆盛を築いてきた国でもあります。つまり「人口減少社会」とは、中国の将来そのものだと思いますし、資本主義の行く末なのだと思います。

時代を象徴する言葉「人口減少社会」

今月の「熱風」を読み終わって感じるのは、経済の発展とあわせて人口が増加し、物をたくさん作れば売れる時代ではないのだな、という当たり前の事実です。人口が減れば、市場も小さくなるので、物を沢山作っても余ってしまう。

では、どうするべきか。そんな社会を、どう生きるべきなのか。
「熱風」には答えは書かれていません。
しかし、考えるきっかけは、この特集には書かれています。

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