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スタジオジブリの海外ビジネスを手がけた担当者の連載「吾が輩はガイジンである。」が第3回もおもしろい。

   

スタジオジブリは、毎月10日に「熱風」という無料の小冊子を発行しているのですが、2013年7月号から始まった新連載「吾が輩はガイジンである。」が第3回も面白いのでご紹介します。

「吾が輩はガイジンである。」では、スタジオジブリの海外事業部取締役部長として、ディズニーとの提携や海外での配給など、スタジオジブリ作品の海外ビジネスを担当してきたスティーブン・アルパートさんが、今まで表立って語られてこなかったスタジオジブリの海外ビジネスの裏側や、外国人からみたスタジオジブリについて語っています。

なお、スティーブン・アルパートさんは「風立ちぬ」にてカストルプというキャラクターの声を担当しています。

今回は連載の第3回。スタジオジブリの制作に関するお話です。

忙しい人であると同時に最も自由な時間を持っている人

アルパートさんが、スタジオジブリとの関わりを持つようになったのは、「もののけ姫」の頃です。第1回、第2回でもアルパートさんの記事には、スタジオジブリのプロデューサーである鈴木敏夫さんのことが頻繁に登場するのですが、今回も鈴木さんに関する興味深い文章があったので、紹介したいと思います。

彼は私がそれまで会ったなかでもっとも忙しい人であると同時に、
もっとも自由な時間を持っている人でもあった。
どうやって忙しくありながら自由でいられるのか、
いまだに謎である。

実は、アルパートさんと同じ点に着目した人がいます。それは、ドワンゴの川上量生さんです。川上さんは、鈴木さんが「なぜあれだけ楽しそうに仕事をしているのか」が知りたくて、弟子入りしたのだと語っていたのを、読んだことがあります。

「もっとも忙しい人であると同時に、もっとも自由な時間を持っている人」
この言葉に、鈴木敏夫さんの魅力が凝縮されている気がします。

田中裕子にひとつの台詞を50回言わせた宮﨑駿

アルパートさんは、「スタジオジブリを代表して外国人相手に交渉するなら、ジブリの映画がどのようにしてつくられているか理解する必要がある」という鈴木さんの考えのもと、「もののけ姫」の制作現場に立ち会っており、記事の中では、アフレコの様子が紹介されています。

「もののけ姫」では、田中裕子さんはエボシ御前の役を演じているのですが、田中裕子さんのアフレコの様子を、アルパートさんは以下のように書いています。

ふつう公の場で見る田中裕子は元気はつらつとしているが、
録音スタジオの彼女はまるで別人だった。
彼女はジーンズにフランネルの仕事着といういでたちで、真剣そのもの。
彼女の役の印象とあまりにも違うのに驚く。

しかしなぜか私の印象にのこっているのは、
宮崎さんが彼女にひとつの台詞を50回も言わせたことだ。
それは「国崩しにふさわしい」で始まる台詞だったが、
なかなか彼の望みどおりにいかない。
(中略)
「国崩しにふさわしい」を50回繰り返したとき、
宮崎さんは田中裕子に
「最初の部分は4回前にやったように、終わりには最初の3回にしたように力強くしてください」
などと指示する。
不思議なことに田中裕子はそれをきちんと理解した。
もっとも、なかなか成功はしなかったが。

「風立ちぬ」のカストルプ役のエピソード

アルパートさんは、「風立ちぬ」にカストルプ役として出演しています。リヒャルト・ゾルゲを思い起こさせるような謎の人物を好演したアルパートさんは、「風立ちぬ」出演のエピソードをこのように語っています。

ほとんどプロからなる交響楽団に参加してみないかと誘われるのは、
おもちゃの笛(カズー)を与えられ、ニューヨーク・フィルハーモニーに加わって、
指揮官からソロを弾くよう指示されるようなものだ。

録音室の隅にある小さい画面を見上げると、
コントロール室にいるディレクターとプロデューサーが今言ったばかりの台詞を検討しているのが見える。
頭の上で腕で円を描いたらマル、腕を堅く交差していたらバツである。
(中略)
1回か2回、宮崎さんが机に顔を伏せて泣くような恰好をするのを見たことがある
それは「バツ・マイナス」だ。

ちなみに、アルパートさんは「もう一度やる気はあるか?」と聞かれたら「とんでもない」と答えるそうです。
今回紹介したエピソード以外にも、「もののけ姫」を海外のマスコミはどのように報道したのか、アルパートさんから見たスタジオジブリの制作現場、「もののけ姫」英語版のエピソード、最終版に残らなかったアンジェリーナ・ジョリーの役柄とは、など、あまり知られていないスタジオジブリのエピソードが紹介されています。興味のあるかたは、ぜひ「熱風」を読んでみてください。

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