「8マイル」で考える都市と郊外。書評:熱風2013年11月号 特集「東京はもういらないのか」

2014/11/06

スタジオジブリは、毎月10日に「熱風」という無料の小冊子を発行しているのですが、今月の特集は、「東京はもういらないのか?」です。かつて渋谷や新宿という街は、地方に住む若者にとって憧れでした。「上京」という言葉が、そんな憧れを象徴している気がします。ところが、現代では上京する若者が減り、逆に地方で働くことを目指す若者もいると言われています。そんな現代の東京と郊外、および地方についての記事が掲載されています。

「東京はもういらないのか」特集のラインナップは、以下の通りです。

若者のいま–郊外化する日本の「新しい公共」(阿部真大)
わたし以外は大丈夫!(山内マリコ)
若者が生きるジモトという世界(原田曜平)
もう郊外はいらない!?–都市と農村の二極化のススメ(速水健朗)

都市と郊外

本書の記事にも書かれていますが、郊外や地方に様々なショッピングモールやアウトレットモールが建設された結果、地方や郊外でも東京と同じようなものが手に入るようになり、東京と地方の差が明確でなくなりつつあります。インターネットの発達によって、東京と郊外や地方との情報格差は、以前に比べてなくなっていますし、流通・交通網の発達により、移動時間もコストも大幅に減りました。

東京に魅力がなくなったという考え方もありますが、地方や郊外が東京に近づいた結果、上京する若者が減ったと言えるのではないかと、本書を読み終えて感じました。また、地方や郊外が東京に近づいた結果として、東京と同じようなものが手に入るようになった反面、地元の商店街がシャッター通りに変わりはててしまい、郊外が東京や大阪といった都市圏の経済圏の影響下におかれつつあるということも、読み終えて再認識しました。

週末だけ郊外に住むロシア人の生活

都市と郊外の関係で思い出したのは、ロシア人が郊外に所有している「ダーチャ」という別宅です。「ダーチャ」は古くからロシアにあり、ソ連時代に労働者の保養施設として整備されていきました。労働者は普段は都市部に住み、週末は郊外のダーチャで休日を楽しみます。

ダーチャには、小さな菜園も備えられており、ソ連崩壊時に発生した経済危機の間、市民はダーチャで作物を栽培し、飢えをしのいだと言われています。今後の都市と郊外の関係を考えると、仕事は都市部、生活は地方というロシア人の生活スタイルは、1つの方法だと思うのです。

映画「8マイル」が映し出す郊外と都市の問題

他に今回の特集を読んでいて思い出したのは、「8マイル」という映画です。2002年に公開された「8マイル」は、エミネムが主演し、デトロイトという都市を舞台に、当時のアメリカ社会の背景を描いた映画です。映画のタイトルになっている「8マイル」とは、デトロイト北部に伸びる「8マイル・ロード」のことなのですが、この「8マイル・ロード」が、そのままデトロイトの都市と郊外を分ける境界線になっています。

「8マイル・ロード」を挟んで、都市に住むのは貧しい黒人。郊外に住むのは、裕福な白人です。デトロイトは2013年7月に財政が破綻しましたが、財政破綻の影響を受けたのは、主に都市部に住む貧しい黒人だったと言われています。

「8マイル」で印象に残っているのは、「都市」に住んでいるのは、裕福な白人ではなく、職や家を求める貧しい黒人だということです。日本でも、フリーランスで働く人の中には、郊外もしくは地方で働く人が増えてきています。生活コストも郊外や地方の方が安く、都市に住んでいる時と同じか、それに近い賃金を稼ぎ出せる人にとって、東京はもしかしたら住むに値する街では無くなっているのかもしれません。また、地方を拠点に活動するミュージシャンの名前を、以前より多く聞くようになった気がします。

こうした事象を集めていくと、今後東京は、デトロイト同様に貧しい人が集まる街になり、裕福な人は郊外に移り住むという動きが加速するかもしれません。2020年には東京オリンピックが開かれるため、地価の上昇に伴い生活コストが上昇する可能性が考えられるからです。

なお、「8マイル」の公開から10年後、デトロイトの財政は破綻しました。今のデトロイトの姿は、10年後の東京の姿なのか、それとも。

「東京」という都市を題材にしながら、将来の日本の姿について考えさせてくれる1冊です。

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