熱風に連載されている川上量生さんの連載「鈴木さんにも分かるネットの未来」第7回:コンテンツとプラットフォーム

2013/07/16

スタジオジブリは、毎月10日に「熱風」という無料の小冊子を発行しているのですが、2012年11月からネット業界で仕事をしている人にとって、興味深い連載が始まっています。ドワンゴの会長であり、またスタジオジブリのプロデューサー見習いでもある川上量生さんの連載で、その名も「鈴木さんにもわかるネットの未来」です。

タイトルに書かれている「鈴木さん」とは、スタジオジブリのプロデューサーの鈴木敏夫さんの事です。ネットの世界に詳しくない鈴木敏夫さん向けの連載ということで、この記事ではネット業界の現状がとてもわかり易く解説しています。個人的には、梅田望夫さんが7年前に書いた「ウェブ進化論」の続きが書かれていると思って、いつも楽しみにしています。「ウェブ進化論」が好きな人は、この連載はオススメです。

熱風は無料の小冊子ですが、目を通している方も少ないと思いますので、ここでは連載の中から、印象に残った文章を読書メモとして紹介します。

第7回は、「コンテンツとプラットフォーム」です。

コンテンツプラットフォームとは

  • コンテンツプラットフォームとは、コンテンツを流通させる仕組みのこと
  • 電子書籍の世界でプラットフォームというとAmazonとかAppleのことを指す
  • 書籍の場合だと印刷所や取次会社と配送システム、書店などが全体として書籍を流通させるプラットフォームになっている
  • コンテンツを流通させるプラットフォームを1社だけで全て提供できるのが、アナログとデジタルのプラットフォームの違い

コンテンツプラットフォームの役割

  • プラットフォームには以下の様な役割がある
    • ユーザーベースの提供
    • プロモーション手段の提供
    • コンテンツの枠組み(フォーマットの定義)
    • コンテンツの品質の管理
  • コンテンツホルダー側から見た場合は、ユーザーベースが一番大事なポイント。
  • プラットフォームのユーザー数が少なくても、コンテンツホルダーにとって自分の固定客のほとんどがその中に入っていれば、いいプラットフォーム
  • 自分の顧客のカバー率が重要で、カバー率が高ければ高いほどプラットフォーム側が強くなる
  • コンテンツホルダー側にはカバー率が低いとメリットがないが、プラットフォーム側にとってはカバー率が低い方がプラットフォーム自体のユーザー数を増やす働きがあるのので、メリットがある
  • プラットフォームにとって最大の宣伝材料はコンテンツ
  • コンテンツホルダー側がプラットフォームにコンテンツを提供したいと思う動機のひとつに、新規顧客の獲得がある
  • コンテンツホルダーはプラットフォームに対して、自分のもつコンテンツを提供する見返りにどれくらいの宣伝協力をしてくれるのかということを条件にする
  • プラットフォームの役割として、価格帯やデータ形式などのフォーマットを決める役割がある
  • プラットフォームはある程度の品質コントロールも必要で、品質の劣るコンテンツが溢れかえると、プラットフォームの信頼まで損なわれる

プラットフォームとコンテンツホルダーの関係

  • プラットフォームがコンテンツホルダー側に期待することとしては、以下が挙げられます。
    • 十分な数のコンテンツラインナップを揃えたい
    • 自分のプラットフォームだけの独占コンテンツを確保したい
    • 他プラットフォームよりも有利な条件でコンテンツを販売したい
  • 場だけ提供してコンテンツは全て他社が提供する場合は、似たようなプラットフォームとの競争の第一のポイントは品揃え
  • プラットフォームとコンテンツホルダーを兼ねるような場合は、コンテンツホルダーとしてライバルのコンテンツを排除したほうが得になる場合がある
  • 独占コンテンツを獲得することはプラットフォーム側にとって重要。代替可能性が低く、忠誠度が高いユーザーが大勢いるコンテンツを独占したいと考える
  • コンテンツホルダー側にとってあるプラットフォームにコンテンツを独占させるという決断はリスクのある行動
  • 大抵のプラットフォームは、コンテンツがもっているユーザーを100%カバーしてはいないから、その分だけ売上が減る。コンテンツホルダーが失う潜在的なユーザーと売上を上回るだけのメリットをプラットフォーム側が提供できるかどうかにかかっている
  • コンテンツを独占する取引が成立しやすいパターンは2つある
  • ひとつは、コンテンツへのユーザーの忠誠度が高いこと、もうひとつは代替可能性が高いコンテンツ、つまり代わりがあるコンテンツ
  • すべてのコンテンツに対して独占の見返りを与えるということは非効率的。この部分は将来的にはコンテンツホルダーが契約するプラットフォームごとになにかおまけをつけることになると予想
  • 多くの場合、プラットフォームは個別のコンテンツから得られる利益よりもマーケットシェアの拡大を優先させる
  • したがって、プラットフォームは常にコンテンツの価格を下げようとする

プラットフォーム側はコンテンツの価格を下げたがる

  • コンテンツの値下げ合戦がエスカレートすると、コンテンツホルダーへの値下げ要求がきつくなり、最終的には立場が弱いコンテンツホルダーが受け入れざるを得なくなるという展開が考えられる
  • ドコモがコンテンツの価格を下げるために最初に採用した戦略が月額課金方式の導入
  • 月額課金方式にするとユーザーから継続的に売上を得ることができるため、コンテンツホルダーにとって非常に有利な方法
  • ドコモが月額課金の上限を300円に設定したことも大きなポイント
  • ドコモはコンテンツホルダーが上限の300円よりもさらに価格を安く設定するように会員数によるランキングを導入
  • コンテンツホルダーは競って会員数を増やしてランキングをあげようとしたため、コンテンツの価格を下げるコンテンツホルダーが続出した
  • 後発のau(KDDI)が採った戦略は月額課金方式だけではなく、都度課金方式も導入
  • コンテンツを利用すれば利用するほど売上があがる都度課金のほうが儲かるのじゃないかと考えたコンテンツホルダーも多かった
  • ソフトバンクが導入したのはソフトバンクがコンテンツを買い付けて安いコースを作るという仕組み
  • 特定のコンテンツホルダーと組んで大量に会員を誘導する仕組みを羝羊する代わりに価格のダンピングを要求
  • コンテンツを作るというのはじつは一番手間がかかって大変
  • プラットフォームにとってコンテンツを作らないというのは楽をする戦略
  • コンテンツは作らないと宣言するプラットフォームが責任なる態度だとは思わない
  • 任天堂やソニー・コンピュータエンタテイメントのように自らもコンテンツをつくり、コンテンツから利益をあげる家庭用ゲーム機のようなプラットフォームが、実はコンテンツが儲かる仕組みが維持されて、コンテンツホルダーにとって幸せな環境ではないか

ニコニコ動画の運営者が語る”プラットフォーム論”

今回の記事は、これまで着メロサイト「dwango.jp」や「ニコニコ動画」といったコンテンツプラットフォームを運営してきた、川上さんの実体験に基づいたプラットフォーム論です。この記事に書かれている、プラットフォーム側ならびにコンテンツホルダー側が考えるべき契約や価格コントロールに関する考え方について、語られている記事や書籍は読んだことがないので、とっつきにくいテーマの記事ではありますが、興味深い内容だと思います。

印象に残ったのは、「コンテンツは作らないと宣言するプラットフォームが責任なる態度だとは思わない」という考え方です。AppleやAmazonといったコンテンツプラットフォームはコンテンツを自ら作っていませんので、この言葉からは、川上さんのAmazonやAppleに対する若干の反発と、コンテンツホルダーの幸福がコンテンツプラットフォームの幸福につながるのだという考え方がうかがえます。

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