熱風に連載されている川上量生さんの連載「鈴木さんにも分かるネットの未来」第8回:コンテンツのプラットフォーム化

2013/07/24

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スタジオジブリは、毎月10日に「熱風」という無料の小冊子を発行しているのですが、2012年11月からネット業界で仕事をしている人にとって、興味深い連載が始まっています。ドワンゴの会長であり、またスタジオジブリのプロデューサー見習いでもある川上量生さんの連載で、その名も「鈴木さんにもわかるネットの未来」です。

タイトルに書かれている「鈴木さん」とは、スタジオジブリのプロデューサーの鈴木敏夫さんの事です。ネットの世界に詳しくない鈴木敏夫さん向けの連載ということで、この記事ではネット業界の現状がとてもわかり易く解説しています。個人的には、梅田望夫さんが7年前に書いた「ウェブ進化論」の続きが書かれていると思って、いつも楽しみにしています。「ウェブ進化論」が好きな人は、この連載はオススメです。

熱風は無料の小冊子ですが、目を通している方も少ないと思いますので、ここでは連載の中から、印象に残った文章を読書メモとして紹介します。

第8回は、「コンテンツのプラットフォーム化」です。

コンテンツホルダーは顧客接点を死守スべし

  • ネット時代にはコンテンツホルダーはコンテンツ自体を独立したプラットフォームとしてクリエイトしなければならない
  • 顧客との接点をプラットフォームに依存せずにコンテンツホルダーが持つ
  • 顧客接点の死守、これが非常に重要なポイント
  • iTunes StoreやKindleストアにコンテンツを提供しても顧客との接点はAppleやAmazonに独占されるだけ
  • 独占されるとコンテンツホルダーにはどのユーザーがコンテンツを購入したかの情報がもらえないので、購入者限定でなにか、特別なマーケティングを行うこともできない
  • あるコンテンツを購入した人に、他にどんなコンテンツを買えばいいかをレコメンドするのはプラットフォームホルダーの権利
  • プラットフォームホルダーにとってコンテンツは、とっかえの聞く消耗品。なにが売れるのかを自由にコントロールできるのが、一番都合がいい
  • これまではCDにせよ、書籍にせよ、流通にのっけて販売しさせすれば、自動的に売上があがったので、いかに顧客を”サポートしないか”が大事だった
  • ネット時代には昔のように手離れの悪い地道な客商売が大切
  • 顧客との接点をプラットフォームに握られると、コンテンツから得られる収益が好きなだけプラットフォームホルダーに吸い上げられる構造になる
  • プラットフォームの協力なしで、販売できる顧客の数を確保するということが収益を上げる上ではとても大事な財産
  • ネット時代にはネット版の”ファンクラブ”を作ればよい

動的なコンテンツがネット時代に売れるコンテンツ

  • これまでのパッケージコンテンツのビジネスとはコピーする権利(複製権)を販売するモデル
  • しかし、複製権を販売するというモデルはネット時代には通用にしない
  • デジタル時代には違法コピーがあまりにも容易なので、複製権自体の価値がどうしても下がってしまう
  • 複製権をネットで販売するだけのモデルではプラットフォームに顧客情報を握られてしまうので、ほとんどの利益をプラットフォームに持っていかれてしまう
  • CDやDVDや書籍などの従来のパッケージコンテンツ市場をたんにデジタル化して、流通をネットに置き換えただけのモデルには未来はない
  • 川上さんが予想するコンテンツビジネスの進化は、以下のとおり
    • コンテンツが動的なものに変化していく
    • コピーしたコンテンツのデータではなく、コンテンツをコピーするサービスに対してお金を払うようになる
    • コンテンツそのものではなく、クリエイターとのコミュニケーションにお金を払うようになる
    • クリエイターがコミュニケーションが出来ない場合には、編集者あるいはプロデューサーが代わりにファンとのコミュニケーションを代行するような分業がすすむ。そしてファンとのコミュニケーションを代行できることは、プロデューサーにとって必須能力となる。
    • コンテンツホルダーは複数のプラットフォームをプロモーションを目的として使い分け、収益は自分たち自身でつくったファンクラブ型の独自プラットフォームであげるようになる
    • コンテンツパックの定額利用モデル(定額料金を支払えば全部のコンテンツが無制限に利用できる)はパッケージコンテンツ市場の崩壊とともに新しいコンテンツが集まらなくなり、自分たちでコンテンツをつくりはじめる
  • コンテンツが動的なものになるというのは、利用する度にデータが変わる動的なものに進化する
  • 完成版はお金を払わないと見られない、あるいはいつまでたっても完成しない。こうしたコンテンツのつくりかたが主流になっていくだろう
  • 中身がどんどん変わっていく動的なコンテンツというものがネット時代に売れるコンテンツのキーワード
  • ネット時代のクリエイターはネットを通じたファンとのコミュニケーションが非常に重要
  • セルフブランディングの中にネットを通じたフォントのコミュニケーションも必須スキルとして加わる
  • 定額サービスは過渡的なもので限界があると思う。それは全てのコンテンツの制作費を賄うような分配が難しいだろうから

メルマガはコンテンツ独自のプラットフォームが作れる

  • 自前でプラットフォームを持つのにサーバーの開発能力や運営能力がまったく不必要なプラットフォームがメルマガ
  • メルマガというのはコンテンツの独自プラットフォームをつくれる「プラットフォームのためのプラットフォーム」
  • ドワンゴが提供する”ブロマガ”はネット上でのファンクラブを作成できるように設計されたサービス
  • 有料会員が同じ記事をメールで読む割合とブログで読む割合ではブログのほうが高い
  • メルマガは個人で発行しているケースがほとんどだったが、ビジネスとして成立しはじめるとスタッフを雇ってチームでつくりはじめる人たちが生まれた
  • 今後メルマガがネットでの”雑誌”という原型になると思う
  • もともと雑誌は同じ価値観を共有するひとが買うものという要素があり、コミュニティとしての機能をもっている
  • 現在の電子書籍化された雑誌ではその機能が果たせない
  • コンテンツをプラットフォーム化して提供するサービスが成長すれば、Amazon、Apple、Googleもコンテンツをプラットフォーム化する機能を提供しはじめるだろう。その時にコンテンツの市場は再び花開く

コンテンツ市場を再び花開かせるための”ブロマガ”

今回の連載を読んで、ドワンゴがブロマガを始めた理由がよくわかりました。”ブロマガ”はまだまだ不完全ではあると思いますが、川上さんが予想するコンテンツビジネスの進化に必要な要素が含まれています。つまり、”ブロマガ”は、ドワンゴがというより、川上さんが描くコンテンツ市場の未来を実現させるために考えだされたプラットフォームというわけです。

ブロマガは、AmazonやAppleが提供するプラットフォームに対するカウンターとして、コンテンツホルダーの事を考えて作られたプラットフォームです。川上さんが予想するように今後ブロマガのようなプラットフォームが発展するのか。それともAmazonやAppleのようなプラットフォームがさらに発展するのか。僕もプラットフォームを利用する1人として、考えさせられるテーマでした。

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