nishi19 breaking news

スポーツでもっと楽しい未来を作る

熱風に連載されている川上量生さんの連載「鈴木さんにも分かるネットの未来」第11回:グローバルプラットフォームと国家

      2014/02/19

スタジオジブリは、毎月10日に「熱風」という無料の小冊子を発行しているのですが、2012年11月からネット業界で仕事をしている人にとって、興味深い連載が始まっています。ドワンゴの会長であり、またスタジオジブリのプロデューサー見習いでもある川上量生さんの連載で、その名も「鈴木さんにもわかるネットの未来」です。

タイトルに書かれている「鈴木さん」とは、スタジオジブリのプロデューサーの鈴木敏夫さんの事です。ネットの世界に詳しくない鈴木敏夫さん向けの連載ということで、この記事ではネット業界の現状がとてもわかり易く解説しています。個人的には、梅田望夫さんが7年前に書いた「ウェブ進化論」の続きが書かれていると思って、いつも楽しみにしています。「ウェブ進化論」が好きな人は、この連載はオススメです。

熱風は無料の小冊子ですが、目を通している方も少ないと思いますので、ここでは連載の中から、印象に残った文章を読書メモとして紹介します。
第11回は、「インターネットの中の国境」です。

Apple税、Google税

  • AppleやGoogleなどの独占している市場を持つ企業は、第三者が自分たちのユーザーへサービスを提供する場合にはレベニューシェアといって売上の一定割合を要求するのが一般的
  • プラットフォーマーというのは立場が強いし、そもそもプラットフォームを作成、維持するには多額の費用がかかるのだから、取引条件を有利にするのは当たり前
  • グローバルプラットフォーマーの収入に対して、ほとんどの国家は課税できない
  • 課税できないということは、グローバルプラットフォームが独占している市場に係る産業が生み出す付加価値の大半が海外に流出する
  • 広告やデジタルコンテンツについて、プラットフォーマーが得るレベニューシェアは30%〜70%くらいが一般的
  • たとえ30%だとしても原価があるなかで売上の30%なので、例えば原価が50%だとすると30%でも利益の6割が持っていかれる計算。そして海外に流出した利益については課税が一切できない
  • 個人の所得税についても、ネット経由で仕事をする仕組みが普及した場合は、課税が困難になることが予想される。さらに、報酬が通貨ではなくポイントでなされた場合は更に課税が難しい。

審査とDNA

  • 国家の統治権である立法権と行政権と司法権に相当する権力を行使できる
  • この仕組で最初に成功したのは、実は日本の会社、任天堂。
  • オープンな市場形成を目指すドコモのiモードは「審査」を行い、ドコモの審査を通ればだれでもサービスを提供できる仕組みを導入した
  • AppleやGoogleは日本のiモードを参考にしたと言われているが、鍵になるのは「審査」
  • 審査があることで、みんなプラットフォーマーの決めたルールを守るようになる
  • 審査のもう一つのメリットは、審査の結果が人間によって左右されるため、コンテンツ提供側はプラットフォーマーの機嫌を損ねて不利益を被らないように努力するようになる
  • NDAはプラットフォーマーによる審査と組み合わせることで、コンテンツ提供側を支配することがより容易になる
  • NDAを締結することで、プラットフォーマーの都合で判断を都度変えても、世の中に知られずに思い通りの結果を出すことが出来るようになる
  • 国家権力とグローバルプラットフォームの持つ権力との間に食い違いが会った場合、多くの場合はグローバルプラットフォームが優位になる
  • グローバルプラットフォームが従うべき法律は、基本的にはサーバーを所持する国の法律。したがって、グローバルプラットフォームを通じて統治権も海外に流出する

利用規約とプライバシーポリシー

  • ネット時代は国家よりもグローバルプラットフォームに個人情報が自動的に集まる仕組みになっている
  • 主なウェブサービスにはサイトの一番下に利用規約が書かれていて、ほとんどのユーザーは利用規約に同意したという前提でユーザーはウェブサービスを利用している事になっている。その中に、ウェブサービスがユーザーの利用履歴や個人情報を収集して利用します、ということも大抵書かれている
  • 利用規約はユーザーが勝手に同意させられるユーザーの義務でサービス提供者側については何も責任を負わないという免責事項ばかりが書かれている
  • プライバシーポリシーは個人情報を使う時はこういう制限のもとできちんと管理して使いますよ、と珍しくサービス提供者側の義務として一方的な約束が羅列されている
  • プライバシーポリシーを一方的に宣言することで、ウェブサービスが個人情報を収集することはなし崩し的に一般化した
  • 利用規約とプライバシーポリシーを食い合わせることで「自分はk仁情報を勝手に集めるけど、他の人に集めた個人情報を渡すことはやりません」と言っているに過ぎない
  • 事前の同意を得ない個人情報の収集は、アドネットワークなどの広告用のタグがウェブページに埋め込まれているだけでも実行される。例えばユーザーから見るとニュースサイトを利用しているだけのつもりなのにGoogleに情報が送信される
  • いまのところ、プライバシーを巡る議論はネット起業側が思い通りに進めている状況
  • 集められた個人情報は、例のごとくサーバーが所在する場所の法律に従うことになる
  • 国家による検閲は多くの人がアレルギーを持つが、サーバーが所在する国家以上に、最も個人情報を正確にリアルタイムに把握できて自由に利用できるのはグローバルプラットフォーム自身

治外法権とグローバルプラットフォームの荘園化

  • ネット上のグローバルプラットフォームは彼らが支配している市場においては国家を上回る影響力を持つ
  • サーバーの所在地さえ異なれば、時に国家の法律よりもグローバルプラットフォームのルールのほうが優先される
  • さらに彼らは、国家よりもユーザーの個人情報を持ち、収入に対してはなかなか課税されない
  • グローバル企業というのはそれに似た性質を持っていたが、インターネットと組み合わせると治外法権に似た状態が成立する。放っておくと、長期的に治外法権の領域は世界的に次第に範囲を拡大していく
  • インターネットの登場により、国家の存在は意味を失い国境はなくなるという予想する人がいるが、弱体化する国家とグローバルプラットフォームが並立している状態が出現する。それはおそらく混乱した世の中

税金とインターネットと国家

熱風では、以前「グローバル企業とタックス・ヘイヴン」という特集を組みました。アメリカですらデトロイト市が破綻し、つい先日まで国自体がデフォルト(債務不履行)になる可能性があったりと、国や地方自治体が力を失っています。

その原因となっているのが、税金です。企業の事業がグローバル化し、税金をタックス・ヘイヴンと呼ばれる租税回避地に納めるようになったため、以前は国や地方自治体に納められていた税収入が減り、国や地方自治体の力が弱まる、という自体に陥っています。こうした国の弱体化に大きく関係しているのがインターネットというわけです。

「グローバル企業とタックス・ヘイヴン」については、nishi19 breaking newsでも熱風にかかれていた記事の感想文を書きました。今日の記事に興味がある方は、ぜひ過去の記事も読んでほしいと思います。

関連記事

熱風に連載されている川上量生さんの連載「鈴木さんにも分かるネットの未来」第10回:インターネットの中の国境
熱風に連載されている川上量生さんの連載「鈴木さんにも分かるネットの未来」第9回:オープンからクローズドへ
書評:熱風2013年5月号 特集「グローバル企業とタックスヘイヴン」-ボーダーレス化する時代に求められる新たな「税」の形-
アップルの税金問題に興味がある人必見の特集「グローバル企業とタックス・ヘイヴン」に関する記事まとめ。
情報産業の未来はこの本にすべて書かれている。書評:情報の文明学(梅棹 忠夫)

関連商品

 -