nishi19 breaking news

スポーツでもっと楽しい未来を作る

熱風に連載されている川上量生さんの連載「鈴木さんにも分かるネットの未来」第12回:機械が棲むネット

      2014/02/19

スタジオジブリは、毎月10日に「熱風」という無料の小冊子を発行しているのですが、2012年11月からネット業界で仕事をしている人にとって、興味深い連載が始まっています。ドワンゴの会長であり、またスタジオジブリのプロデューサー見習いでもある川上量生さんの連載で、その名も「鈴木さんにもわかるネットの未来」です。

タイトルに書かれている「鈴木さん」とは、スタジオジブリのプロデューサーの鈴木敏夫さんの事です。ネットの世界に詳しくない鈴木敏夫さん向けの連載ということで、この記事ではネット業界の現状がとてもわかり易く解説しています。個人的には、梅田望夫さんが7年前に書いた「ウェブ進化論」の続きが書かれていると思って、いつも楽しみにしています。「ウェブ進化論」が好きな人は、この連載はオススメです。

熱風は無料の小冊子ですが、目を通している方も少ないと思いますので、ここでは連載の中から、印象に残った文章を読書メモとして紹介します。
第12回は、「機械が棲むネット」です。

機械が会話するインターネット

  • インターネットで通信しているというのは、もはや人間ではなく機械のほうが多い
  • 2012年5月時点の総務省の調査によると、国内で流通する電子メールのうちスパムメール(迷惑メール)の総数は1日あたり12億通以上で割合にして全体のメールの65.8%を占める
  • つまり、スパムメールだけ考えてみても、インターネットでメールを送っているのは機械の方が多い
  • スパムメールじゃない残り1/3も宣伝メールが大半なので、おそらく人間が自分で送っているメールは全体の1割にも充たない
  • ブログにもスパムブログ(迷惑ブログ)があり、文章まで機械で自動生成しているブログもある
  • 総務省による2009年の「ブログの実態に関する調査研究」によると、2008年1月の目視によるサンプリング調査では全体の12%がスパムブログで、主要20ブログサイトにアップロードされた記事数だけでみると、スパムブログの割合は32.2%に達する
  • スパムメール、スパムブログが宣伝するのは、以下の3点
    1. ポルノ、売春、ドラッグ、コピーソフトなどの違法性の高い商材の販売
    2. その他の詐欺。(例:賞金があたったので振り込みたい、など)
    3. アフィリエイト広告の表示
  • スパムメール、スパムブログがなかなかなくならないのは、それで儲かる手段があるから。
  • スパムメール、スパムブログを作るコストは、プログラムを組んでしまえばほとんどタダ同然でお金がかからない

機械が人間に勝つネット

  • 株式取引の世界では、コンピュータが自動的に売買を繰り返して儲けるアルゴリズム取引が非常に盛んに行われている
  • 米TABB Group(金融関連の調査会社)が2009年に発表したレポートによると、米国の株取引におけるHigh Frequency Trading(アルゴリズム取引の中でもわずかな価格変動を利用して、超高速に売買を繰り返して儲ける)の割合は70%にのぼる
  • アルゴリズム取引の利点は取引を実行する速度が人間に比べて桁外れに速いこととと併せ、市場の全ての動きを同時に監視できる
  • 別の例をあげると、RTB(リアルタイム入札)と呼ばれる広告のオークション取引は、広告料金がどこまであがって構わないかを機械に計算させようとしてもの
  • 市場で取引をして利益をあげる、人間の中でも最も頭のいいひとたちが切磋琢磨している世界では、すでに人間を超えるプレーヤーとして機械が幅を利かせ始めている

人間が機械に合わせる世界

  • ブログで日記とかを書くと、どんなに無名でつまらない日記を書いても、ログを調べると何人かは必ずその日記を見たことになっているが、自分が見たうちの何カウントかは、人間ではなくボットと呼ばれる機械が自動的に巡回してきた数であることが多い
  • Webページのページビューに占めるボットの割合は、結構馬鹿にならない
  • いま、ネット業界でネットサービスのマーケティングの責任者が、まず第一に重視するのは人間ではなく、ボットのほう。重要なのは検索エンジンのボット、それもGoogleのボット。検索エンジンのボットに合わせてWebページを最適化することをSEO(検索エンジン最適化)という
  • 人間から見て、とてもインパクトのあるWebページのデザインを思いついたとしてもSEO的に不利であると判断されると却下される、そういう現象が起こっている
  • つまり、SEOとはGoogleなどの検索エンジンのボット、つまり機械に気に入ってもらうためのマーケティング

人間と機械の共存する未来

  • 紹介したスパムメール、スパムブログ、HFTは最近になっていずれも減少している。その理由は儲からなくなったから
  • 機械がはびこる世界では、おそらく人間が機械に合わせないと生活できない容易なる
  • パーソナルな機械は人間に合わせてくれる、でもパブリックな機械には人間が合わせるようになる

Google機械帝国に対する反乱

川上さんの会社ドワンゴでは、社内標語のひとつに「Google機械帝国に対する反乱」という言葉を掲げていたそうです(今はあるのかはわかりませんが)。川上さんは、以前「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ」に出演した時「人間と機械が戦って、一矢報いる。これをやりたい」と語っていたこともあります。

今回の連載は、川上さんが以前から感じていた、「コンピュータプログラムの進化にいかに人間が向き合っていくか」という問題意識をまとめたものです。ドワンゴは最近、コンピュータとプロ棋士の対決をニコニコ生放送で中継したりしました。これも、川上さんが考えている問題意識が形になったものだと言えると思います。

SEOは機械に気に入ってもらうためのマーケティング、という言葉は、Webサイトの制作やマーケティングに携わる人間として、肝に銘じておくべき言葉だと思います。ユーザーのために、と思って実践していたマーケティング手法が、実は機械のためにやっていた。この事実は、知らず知らずのうちに、人間が機械に合わせる世界になっているのだということを、実感させられました。

関連記事

熱風に連載されている川上量生さんの連載「鈴木さんにも分かるネットの未来」第11回:グローバルプラットフォームと国家
熱風に連載されている川上量生さんの連載「鈴木さんにも分かるネットの未来」第10回:インターネットの中の国境
熱風に連載されている川上量生さんの連載「鈴木さんにも分かるネットの未来」第9回:オープンからクローズドへ

関連商品

 -