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熱風に連載されている川上量生さんの連載「鈴木さんにも分かるネットの未来」第13回:電子書籍の未来

      2015/06/19

スタジオジブリは、毎月10日に「熱風」という無料の小冊子を発行しているのですが、2012年11月からネット業界で仕事をしている人にとって、興味深い連載が始まっています。ドワンゴの会長であり、またスタジオジブリのプロデューサー見習いでもある川上量生さんの連載で、その名も「鈴木さんにもわかるネットの未来」です。

タイトルに書かれている「鈴木さん」とは、スタジオジブリのプロデューサーの鈴木敏夫さんの事です。ネットの世界に詳しくない鈴木敏夫さん向けの連載ということで、この記事ではネット業界の現状がとてもわかり易く解説しています。個人的には、梅田望夫さんが7年前に書いた「ウェブ進化論」の続きが書かれていると思って、いつも楽しみにしています。「ウェブ進化論」が好きな人は、この連載はオススメです。

熱風は無料の小冊子ですが、目を通している方も少ないと思いますので、ここでは連載の中から、印象に残った文章を読書メモとして紹介します。

第13回は、「電子書籍の未来」です。

紙の本が電子書籍に置き換えられるのは避けられない未来

  • 紙の本が電子書籍に置き換えられるのは避けられない未来
  • 電子書籍のデバイス(iPadやKindle)はほとんどの本よりも薄く、重さも雑誌やハードカバーの本などの1冊と同程度、もしくは軽い。既に携帯性において本よりも優れている
  • 複数の本を内蔵できるため、いくら本が増えても重さも大きさも増えない。複数の本を所有する場合は圧倒的に電子書籍が省スペースであり、持ち運びも便利
  • 文字が電子化されている。これによる利点はいろいろ考えられるが、とりあえずの例を挙げると文字列の検索が可能
  • 紙代、印刷コスト、物流コストがほぼ無料であるため、価格を安く出来る
  • すべての本が電子書籍になっていない。特に過去に出版された本はほとんどが電子書籍化されていない
  • 多くの出版社は原価の安さに拘わらず、紙の本と電子書籍を同じ定価に設定しているため、価格優位性が発揮されない
  • 電子書籍のデバイスは充電が必要
  • 多くの読者は紙で文字を読むのに慣れている
  • 電子書籍は紙の本のような存在感がない
  • 今後は電子書籍と紙の本を両方出さないと売上が下がってしまうから、ほとんどが電子書籍化される
  • むしろ、電子出版のほうがコストが安いので、今後は電子書籍しか出ない例のほうが増える可能性が高い
  • 電子書籍は品切れにも絶版にもならないので、ラインナップは電子書籍のほうが将来的には充実するだろう
  • 価格優位性についても、長期的にはプラットフォーム側が有利となり、紙の本のほうが売値が高くなるのが当たり前という時代がくる

未来の電子書籍

  • テキストや画像だけでなく、音声や動画などのいろいろなデータを取り込んでマルチメディアの電子パッケージ媒体になっていく
  • 自動的に内容が更新、追加されるようになる
  • 検索、引用、メモ、読書記録の自動保存など、読書体験の進化
  • 他人と読書体験を共有できるようになる
  • 本の非局在化。自分の持っている本はネットワークにつながっていれば、どこでもさまざまなデバイスで読めるようになる
  • 電子書籍のマーケットが主流になっていくにつれ、紙の書籍から離れて電子書籍ならではの機能を使った、本格的な電子書籍が出てくるようになる
  • 今後、本を完成しないまま出版したり、最終章だけ完成していないまま出版することもありうる

出版業界はどう変わるか

  • 取次店は、電子書籍が主流になると書籍の印刷と流通については電子書籍においてはAmazon、Appleなどのプラットフォーム側が同等の機能を提供するから、まったく必要がなくなる
  • 書店は、AmazonやAppleなどのプラットフォームが直接に販売をしますので、全体としては紙の本の市場の縮小とともに売上を減少していく未来が予想される。ただ、長期的に見ると書店が無くなることにより、電子書籍を含めた書籍全体の市場が縮小していく可能性がある
  • 電子書籍時代には市場の大半をコントロールするのはAmazonとAppleの2大プラットフォームになる
  • AmazonとAppleが電子書籍市場の規模を守るために、プロモーションを兼ねた直営店を展開するという流れは、ありえない話ではない
  • 出版社側がコストを負担して書店を経営するという流れはありえないモデルではないが、書店でのかなりの売上が出版社の書籍で占められている必要がある
  • その時は、出版社が書店を持つというよりは、集客力を持っている流通側が出版社の機能も持つということではないかと思う
  • AmazonやApple自体が出版社となり、作家と直接契約するようになることは起こりうる
  • 紙の本では作者が印税を1割しかもらえないが、Amazonと直接契約すると、3割もらえる
  • 現在Amazonは出版社に7割、Amazonが3割の比率で配分しているが、出版社側に残っている4割のマージンはいろんな形で減らされる圧力があるというのが自然
  • Amazonは好きなタイミングで作家への印税率を引き上げるか、出版社への印税率を引き下げて、出版社の息の根を止めることが出来る
  • AmazonとApple以外の電子書籍のプラットフォームが生き残る可能性は厳しい
  • 電子書籍時代は、印刷会社や運送会社や書店などが得ていた収入を、出版社とプラットフォームと消費者の3者でわけあう構図になっている
  • 電子書籍が普及すると販売数量は増えるかというと、断定的なことは言えないが、現状だと減る要因ははっきり見えているのに対して、増える要因についてはどうなるか不透明
  • 電子書籍が普及することで、書店の数が大きく減るから、人が書籍に出会う機会がその分減る
  • 今後はネットで本と接触する機会が増えれば問題ない
  • 有料の電子書籍間でのハイパーリンク網が、インターネットの新たな知のネットワークを構築する可能性があるんじゃないかと期待している
  • Webの知のネットワークを電子書籍が担うようになれば、むしろ電子書籍はインターネットによって最も成功した有料コンテンツの地位を得られるんじゃないかと期待している

世界一美しい本を作る男

「世界一美しい本を作る男」という映画があります。ノーベル賞作家や有名写真家、著名なデザイ­ナーら一流芸術家たちに支持されるシュタイデル社という出版社を主宰するゲルハルト・シュタイデルの書籍作りに迫るドキュメンタリー映画です。

シュタイデル社は、企画、編集、デザイン、印刷、製本といった書籍製作の工程の全てを手がけ、紙の質やインクの質、時には匂いにまでとことんこだわり、オンリーワンの書籍を作っています。ゲルハルト・シュタイデルは1冊の本を作るために世界中を飛び回り、打ち合わせを重ねながら、こだわりを形にしていきます。

僕はこの映画をまだ観れていないのですが、電子書籍の話題が出る度に、この映画の事を思いだすのです。何を言いたいのかというと、シュタイデル社は、電子書籍時代に出版社が生き残る1つのモデルだと思うのです。極端な例かもしれませんが、シュタイデル社のやっていることに注目することは、今後の電子書籍時代を考える大きなヒントになると思うのです。

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