熱風に連載されている川上量生さんの連載「鈴木さんにも分かるネットの未来」第14回:テレビの未来

2014/07/22

スタジオジブリは、毎月10日に「熱風」という無料の小冊子を発行しているのですが、2012年11月からネット業界で仕事をしている人にとって、興味深い連載が始まっています。ドワンゴの会長であり、またスタジオジブリのプロデューサー見習いでもある川上量生さんの連載で、その名も「鈴木さんにもわかるネットの未来」です。

タイトルに書かれている「鈴木さん」とは、スタジオジブリのプロデューサーの鈴木敏夫さんの事です。ネットの世界に詳しくない鈴木敏夫さん向けの連載ということで、この記事ではネット業界の現状がとてもわかり易く解説しています。個人的には、梅田望夫さんが7年前に書いた「ウェブ進化論」の続きが書かれていると思って、いつも楽しみにしています。「ウェブ進化論」が好きな人は、この連載はオススメです。

熱風は無料の小冊子ですが、目を通している方も少ないと思いますので、ここでは連載の中から、印象に残った文章を読書メモとして紹介します。

第13回は、「テレビの未来」です。

テレビからインターネットへ覇権交代が起こる可能性

  • テレビからインターネットへ覇権交代が起こる場合は3つの段階に分けて考えられる
  • 第一段階:人間がテレビを見る時間よりもインターネットを見る時間の方が長くなる。テレビ端末とネット端末が併存し、消費者は両方とも所有する
  • 第二段階:テレビ番組はネット端末のイチ機能になる。テレビ端末とネット端末が融合してネットテレビになる
  • 第三段階:テレビ番組の伝送路が放送波ではなくインターネットに置き換わる。テレビがなくなりネットテレビを含むネット端末だけになる
  • テレビ局に対応するネットサービスは、大きく分けてVOD(ビデオオンデマンド)系のサービスとライブストリーム(生放送)系のサービスの2種類
  • VOD系もさらにふたつに分類できる。ひとつは主に無料で提供されるニコニコ動画などの動画共有サイト、もうひとつはHuluやBee TVのような定額課金制の動画配信サイト
  • テレビが果たしている昨日で、VOD系のネットサービスで置き換えられる部分はテレビが苦手、逆にライブストリーム系のネットサービスに対しては、テレビがまだまだ優位性を保つ
  • 未来のテレビとネットの役割分担がどうなるかを考えるときには、従来のテレビが依拠している電波を利用して映像を表示する方法と、インターネットによるデータ通信を利用して映像を表示する方法とでは、いったいなにが違うのかを明確にする必要がある
  • テレビの特徴は、同時に同じ映像をあるエリアにいるすべての人々に、テレビとアンテナさえ持っていれば伝えることができる。その代わりチャンネルチャンネル数には制限があって、伝えられる映像の種類はチャンネル数と同じだけしかない
  • インターネットの特徴は、チャンネル数は無制限だが、映像のような容量の大きなデータを同時にたくさんのひとに伝えるのは向いてないというか、現在の放送インフラとしてのインターネットの性能では不可能
  • インターネットのほうが、新しい映像サービスにチャレンジしやすいわけだから、長期的には有利だが、現状のインフラの性能では完全にテレビに取って代わるのは不可能

放送インフラとしてのインターネット

  • CS放送ぐらいであれば電波ではなく、インターネットで現状のインフラとしては十分に置き換えられる
  • インフラ面から考えると、20年後から30年後にはテレビにアンテナがなくなって、全てインターネットから映像が配信される世界になっている可能性は、インフラ面からは考えられる
  • このシナリオが実現するには、魅力的なネットテレビが発売されること、テレビ局で放送している番組をインターネットでも同時配信すること、さらには毎年増加するトラフィックに合わせてインターネットのインフラがちゃんと増強されること

インターネット放送だけができる機能

  • 双方向性はインターネット放送のほうが得意な分野だが、従来のテレビでもデジタル放送では簡単な双方向は実現している
  • インターネット放送でないとできなくて、視聴者にとってキラーになる機能は「視聴者のひとりひとりに別々の映像を見せる」こと。視聴者が1万人いれば1万回、100万人いれば100万回、別々のデータを送れるので、中身を変更できる
  • 動画サイトというのは、視聴者ひとりひとりがクリックして選んだ別の動画を見ることができるテレビと考えることができるし、生放送サイトもやたらチャンネル数の多いテレビとも考えられる
  • 視聴者の属性によって違う映像が流れたり、視聴者が操作することでカメラが変更できたり、そういった視聴者ひとりひとりに違う映像が流せるという特徴をうまく利用した、決定的に素晴らしい機能が実現したら、それは電波では真似できないもの
  • 現在は双方向性を活かした番組づくりという視点ではいくつも実例が登場しはじめていますが、その次に重要になるのは、サーバー側で映像を視聴者ひとりひとりに合わせてリアルタイムで加工して配信するという技術になる

ネット時代のテレビ局の競争

  • 自由競争化におかれたインターネット放送におけるプレイヤーは、既存のテレビ局の方が協力な収益基盤を確立しているため強い。そして、テレビ以上に大勢のユーザーにPUSH型で情報を届ける存在はネットにも見当たらない
  • 元々インターネットは、まったく興味のないものを宣伝するのには、向いていない
  • ネットが発達した現在においてもネットでの最大の話題は、常にテレビが提供している
  • テレビの競争力を生み出す鍵となっているのは、大量の人々に同時体験を与えていることで、この構図が崩れるとテレビの優位性は失われる
  • ネットにおいて競争力を維持するには、チャンネル数を減らすことのほうが有効で、チャンネルを増やすことは大量の視聴者を分散させてしまう危険性がある
  • ネット時代に大勢のユーザーが日常的に使用しているサービスのUIにコンテンツが組み込まれることが起こった場合は、テレビ局が脅かされる可能性がある。
  • 例えばGoogleの検索ページのトップで突然連続ドラマの配信が始まったら、社会的な人気ドラマが誕生するかもしれない
  • 放送免許で守られていないインターネット放送局間の競争は、ポータルとしての集客力と囲い込んだコンテンツの競争力が勝負を決めることになる
  • インターネット放送局で生き残るためには、新しい映像ソフトのフォーマットに対応したサーバーシステムを設計・開発できるエンジニアチームと、従来の制作手法にとらわれず新しい映像ソフトのフォーマットにチャレンジするコンテンツ制作チームを自前で抱える必要がある

ネットテレビ時代のビジネスモデル

  • インターネットの広告モデルでコンテンツの制作費を補うのは不可能なので、ポータルが自社の宣伝費用としてコンテンツの制作費を出すか、Huluのような定額制のサイトがコンテンツの制作費を出すしかない
  • しかし、テレビにおいてはテレビの広告モデルをネットに持ち込むことがうまくいけば、コンテンツの制作費を賄える可能性がある
  • そのためには、テレビ番組のネットへの同時放送をいずれは実現しなければいけない。同時放送でなくても、ネットでテレビ番組を流す場合には、CMも一緒に配信するということを徹底すべき

「Movie NEX」におけるドワンゴの取組

「Movie NEX」というサービスをご存知でしょうか。ディズニーが2013年11月から開始した、一度映画を購入すればディスクを使ってテレビで視聴するのはもちろんの事、ネットを通じてパソコンやタブレット、スマートフォンなど様々なデバイスでいつでもどこでも手軽に映画本編と関連する様々なコンテンツを楽しむことができるようになるサービスの事です。

実は、この「Movie NEX」の映画をネット上で楽しむためのプラットフォームとして、ニコニコ動画の「niconico」という動画サービスが連携し、ネットを通じてどこでも手軽に映画を楽しめるようにするための取組を開始しています。

ネットテレビとは少しずれますが、ドワンゴはネットテレビ時代を見据えて、こんな取組をしています。ネットテレビが本格的になるには、もう少し時間がかかりそうですが、その時を見据えたサービスは既に始まっているのです。

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