熱風に連載されている川上量生さんの連載「鈴木さんにも分かるネットの未来」第15回:機械知性と集合知

2014/03/12

スタジオジブリは、毎月10日に「熱風」という無料の小冊子を発行しているのですが、2012年11月からネット業界で仕事をしている人にとって、興味深い連載が始まっています。ドワンゴの会長であり、またスタジオジブリのプロデューサー見習いでもある川上量生さんの連載で、その名も「鈴木さんにもわかるネットの未来」です。

タイトルに書かれている「鈴木さん」とは、スタジオジブリのプロデューサーの鈴木敏夫さんの事です。ネットの世界に詳しくない鈴木敏夫さん向けの連載ということで、この記事ではネット業界の現状がとてもわかり易く解説しています。個人的には、梅田望夫さんが7年前に書いた「ウェブ進化論」の続きが書かれていると思って、いつも楽しみにしています。「ウェブ進化論」が好きな人は、この連載はオススメです。

熱風は無料の小冊子ですが、目を通している方も少ないと思いますので、ここでは連載の中から、印象に残った文章を読書メモとして紹介します。

第15回は、「機械知性と集合知」です。

集合知とはなんでしょうか?

  • ネット時代に集合知という言葉が注目されたのは、Googleの検索エンジンのように大勢の人間の行動を集計して情報処理することで高度なサービスを作れるようになったから
  • 集合知にはひとりの人間の知性よりも優れていると思われているだけでなく、人間の知性には思いもつかないような答えを導き出してくれるような神秘的なイメージもある
  • 集合知においては部分に属するものなのか全体に属するものなのかは意外と区別が難しい
  • “部分の知性”が集まった”全体の知性”なんてものが存在すると過程下としても、”全体の知性”だと思って取り出した知性が、”全体の知性”に影響されて変化した”部分の知性”にすぎないということになってはいないか
  • 人間が持つ学問体系そのものが巨大な集合知であるという考え方もある
  • 集合知が凄いと思っているものの多くは、集合知に影響されて学力の向上した生徒や集合知のある部分を代表して教えている教師のようなもの
  • 集合知が”全体の知性”なのか、””全体の知性に影響を受けた”部分の知性”に属するものなのかをきちんと区別して考えないと、どのように発達して社会をどのように変化させるかが理解しにくい

集合知は頭が良いのか?

  • 集合知が頭が良くなるように見える場合は「”全体の知性”に影響を受けて頭が良くなった”部分の知性”である」解釈したほうが適切
  • 集合知は人間よりもむしろ頭が悪く、知性が集まって頭が良くなるのは特定の条件下で発生する例外的な減少
  • 「三人寄れば文殊の知恵」かもしれないが、1000人集まったら「船頭多くして船山に登る」になってしまう
  • 頭の悪い人間がたくさん集まるよりも、優秀な人間がひとりいるほうが、すぐれた能力を発揮する
  • 将棋が好きなアマチュア10人が集まっても、プロ棋士に勝てるわけではない
  • 知性が集まったことで向上できる知性なんて、たかがしれている

集まった知性は遅くなる

  • 知性というものは抽象化すると入力した情報を解釈して、なんらかの意味がある情報を出力するもの。つまり情報処理のことをさす
  • 情報処理のひとつの過程をどれくらい短い時間でおこなうかによって、知性の速度が決まる
  • 知性が集まってなにかやろうとすると遅くなる、集合知は思考速度が基本的に遅い
  • 思考速度が遅いのは、情報処理の各プロセスでの情報の伝達速度が遅い
  • 複数の知性に仕事をさせるのは、ひとつの知性で処理できる情報量に限界があるため
  • インターネット経由で通信し、大量のデータ集計をコンピュータがおこなうことによって、集合知の内部でおこなわれる情報処理のある部分を機会化し、本来、とても遅くなるはずの集合知を使って人間の能力を拡張することが実用的な速度でできるようになった

“全体の知性”と”部分の知性”

  • 全体として発生する知性とは、自律分散システムから生まれる働きのことをさす
  • 自律分散システムとは、全体をコントロールする中枢部分がなくて、各要素が自分自身の判断でばらばらに動いているのに、なぜか、うまくやっていけるようなシステムのこと
  • 自律分散システムは知性のようなものを自然と生み出す
  • ウィキペディアは同じ記事を編集するにしても、知識レベルの高い人もいれば低い人もいて、意見の対立もあれば間違いもある中で、全体としてなんとなく落ち着くところに落ち着いて、意外と信頼性が高いと思われている
  • みんなで影響を与え合いながら、一定のバランスが自然に生まれて記事のレベルが安定するはたらきこそが、自立分散システムが生み出した秩序
  • 自律分散システムがつくる”全体の知性”と”部分の知性”とは、本来は独立の知性であって、与える影響はたまたまプラスになることもあれば、マイナスになることも当然ある
  • 意見調整の仕組みは”部分の知性”に影響を与えて、より頭を悪くする自立分散システムの典型
  • 有意義な結果を出す集合知になるか、衆愚になるかは”全体の知性”の部分の出来にかかっている

集合知の未来

  • 統計的に集計した「みんなの意見」が専門家の意見よりも精度が高いといった例が多数紹介されているが、将来的には集合知は個人の知恵を上回っていくんだという夢と希望に満ちているのを感じるが、あまり正しい予想にはみえない
  • 集合知はむしろ頭がよくないし、計算が遅くなる
  • 集合知という名前とは裏腹に、人間の集合から計算されるデータを機会知性が利用するためのもの
  • 「みんなの意見」が採用されるのは、人間相手のマーケティングデータとしてだけに限られる
  • 人間の集団から、なんらかのパターンを抽出して、そこからエネルギーを取り出して、なにか仕事をさせて、お金を儲けるための仕組みをつくる、そういったことに集合知というのはまず使われていくのだと思う
  • 集合知が民主主義に役立つのではないかという期待もあったが、今のところは裏切られている
  • 集合知は正しい問題解決の方法を考える能力が低い
  • 集合知がどういうところに収束するかは、構成メンバーのレベルと、自立分散システムとしてのネットのコミュニティの設計がどうなっているかで決まってくる
  • 集合知の特徴は「頭が悪い」「遅い」「頑固」
  • 集合知をコントロールするとしたら、自律分散システムの設計によってで、それはネットによって大変容易になった
  • 人間の集合知から収集したデータを利用してシステム設計を変更していくノウハウを確立すれば、人間の集団のコントロールは、いまよりもずっと楽に出来る

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