nishi19 breaking news

スポーツでもっと楽しい未来を作る

熱風に連載されている川上量生さんの連載「鈴木さんにも分かるネットの未来」第16回:ネットが生み出すコンテンツ

   

スタジオジブリは、毎月10日に「熱風」という無料の小冊子を発行しているのですが、2012年11月からネット業界で仕事をしている人にとって、興味深い連載が始まっています。ドワンゴの会長であり、またスタジオジブリのプロデューサー見習いでもある川上量生さんの連載で、その名も「鈴木さんにもわかるネットの未来」です。

タイトルに書かれている「鈴木さん」とは、スタジオジブリのプロデューサーの鈴木敏夫さんの事です。ネットの世界に詳しくない鈴木敏夫さん向けの連載ということで、この記事ではネット業界の現状がとてもわかり易く解説しています。個人的には、梅田望夫さんが7年前に書いた「ウェブ進化論」の続きが書かれていると思って、いつも楽しみにしています。「ウェブ進化論」が好きな人は、この連載はオススメです。

熱風は無料の小冊子ですが、目を通している方も少ないと思いますので、ここでは連載の中から、印象に残った文章を読書メモとして紹介します。

第16回は、「ネットが生み出すコンテンツ」です。

UGC(User Generated Content)とは

  • インターネットの世界でユーザーが作るコンテンツの事をUGC(User Generated Content)と呼ぶ
  • インターネットの世界では、プロがつくるコンテンツよりも、アマチュアがつくるUGCのほうがともすれば集客力を持つ
  • UGCという言葉の範囲は広く、掲示板やYahoo!知恵袋のようなQ&Aサイトも含まれる
  • プロとアマチュアの違いは、額の多寡はあるが、結局はコンテンツをつくることによって収入を得ているかというところに帰着する
  • マンガ家や小説家が原稿料や印税をもらえるのは、出版社が販売している雑誌や書籍が売れるから、テレビドラマを放送しているテレビ局に広告料を支払ってくれるスポンサー企業がいるから
  • UGCの場合は大抵は、無報酬でネットユーザーがコンテンツを提供する
  • UGCのサービスを提供している会社は、広告料がもらえたりして、経済的な合理性が存在する
  • UGCと従来のコンテンツ業界の最大の相違点は、コンテンツのクリエイターに対して金銭的報酬が支払われないということ
  • 多くのコンテンツは生活必需品ではないのではないので、個人間の取引においてコンテンツで対価を受け取るのは容易なことではない
  • インターネットの時代には、口コミも立派なコンテンツのひとつであると認識されるようになった

UGCの特徴

  • ユーザーが無報酬でコンテンツを提供する構造が成立している要因としては、以下が考えられる
    • コンテンツをつくる手間がそれほどではない
    • 自分のつくったコンテンツを他の人に見てもらいたい
    • UGCのサービスのユーザーとして自分も楽しんでいて、お返しの感覚が存在する
    • そもそも自分の作ったコンテンツでお金がもらえるとは期待していない
    • インターネット上にコンテンツの提供者が無数にいる
  • お金を取れるような本格的なものではなくて、ユーザーが手軽につくれるコンテンツをネットを通じてみんなで発表して見せ合うという。なにか遊びか奉仕活動に近い感覚でコンテンツをつくるのがUGCの本質
  • プロがつくったコンテンツと張り合うようなものはそもそもUGCは得意ではない
  • プロが作ってきた映画、音楽、アニメ、ゲーム、コミック、小説といったものは、UGCは苦手
  • しかし、最近は商業作品の領域ですら、UGCは一部進出を始めている
  • カラオケボックスで歌われる音楽のランキングを見ると、上位の半分くらいはレコード会社が発売する商業音楽の曲ではなく、ネットでニコニコ動画に登校されたボカロ音楽の曲で占められている。
  • ボカロ音楽は本来はネットで無料公開されるのだが、人気のある曲はCDとして発売されることも増えてきた
  • UGCがプロの作品と競争するための条件のひとつは、個人のネットユーザーにもつくれるぐらいのコンテンツであること
  • もうひとつの条件は観客がたくさんいること。UGCでのクリエイターへの報奨は金銭ではない。自分のコンテンツを見てくれる人がいることと、願わくは見てくれたひとから賞賛されることがクリエイターにとって最大の報奨

UGCのレイヤー構造

  • ニコニコ動画のコメント機能こそが、クリエイターを引き寄せて、ニコニコ動画を日本のネット上での創作活動の中心にさせる原動力になっている
  • クリエイターがニコニコ動画に投稿するのは、コメントがつくのが嬉しいから
  • ニコニコ動画はコメントがつきやすく、再生数に比較してコメントの数がとても多い
  • ニコニコ動画は動画にコメントがオーバーラップして表示されるので、コンテンツの改変になるという声があったが、コンテンツを実質的に改変できるという点が、ニコニコ動画でたくさんの視聴者がコメントする理由
  • コミケ(コミックマーケット)の参加者総数52万人に対して、出店しているサークル数が3万5000もある。
  • コミケは52万人も来場するイベントでありながら、実は”身内”でやっているイベントの巨大な集合体
  • コミケでは来場者のことはすべて「参加者」と呼ぶことになっていて、「お客様」は存在しない
  • コミケとUGCサイトであるニコニコ動画はコンテンツの作り手と受け取り手の距離が近い
  • UGCサイトがユーザーを動員できる最大の原動力は、コンテンツのクリエイター側としてユーザーが様々なレイヤーで参加できる仕組みが備わっているから

UGCはプロのコンテンツを凌駕するか

  • UGCがあればプロの作品はもはや必要ないと考える人の根拠は、大きくわけて次のふたつ
    • UGCは無料で十分な質のコンテンツを十分な量だけ提供する
    • UGCは自由な創作活動が可能なので、コンテンツに多様性がある
  • 個人レベルで技術的にはほぼなんでもつくれる時代となっているが、作業量が必要なコンテンツを作れるユーザーの数は極端に少なく、十分な量を提供するのは難しい
  • コミケを例に取ると、オリジナル作品は少数で、商業作品と比較するとむしろ偏っている。ニコニコ動画についても同じ。
  • UGCでは商業作品でやれないことや商業作品には存在しないことを題材とするのが、好まれる
  • UGCとプロが作った作品は、基本的にはあまり競合しない。個人がつくるものには限界がある

UGCの進化

  • 若年層においては商業コンテンツをほとんど利用せずUGCを中心に消費するようなネットユーザーが増えていることは事実
  • ニコニコ動画において、既存のコンテンツではできないインパクトをネットユーザーに与えたものは整理すると以下
    • コンテンツが無料で手に入る
    • コンテンツの作り手と受け取り手の距離が近い
    • 自由な二次創作
    • 手作り感のあるコンテンツ
  • お金を払えといわれないコンテンツで、自分たちと住む世界が違うアーティストではなく、自分たちと似たような仲間からクリエイターが生まれ、商業作品では許されないようなコラボも自由にできて、自分たちにもつくれそうなコンテンツをみんなで楽しむ。そういう見たことのないコンテンツの世界に、ユーザーは興奮し熱狂し、コンテンツの未来をそこに見た。
  • UGCがつくり出した特徴のほとんどすべては、次第になくなり、既存のコンテンツの世界に近づいていっている
  • ニコニコ動画でも自分の好きな動画投稿主の動画しかチェックしないようなニコニコ動画ユーザーが増えてきて、有名動画投稿主がスター化してくるようになり、コンテンツの作り手側と受け取り手側の距離が離れていった
  • スターを生み出したUGCは、やがて、コンテンツ業界のこれまでの進化の歴史をゆっくりと再現することになるのだろうなと思っている

関連記事

熱風に連載されている川上量生さんの連載「鈴木さんにも分かるネットの未来」第15回:機械知性と集合知
熱風に連載されている川上量生さんの連載「鈴木さんにも分かるネットの未来」第14回:テレビの未来
熱風に連載されている川上量生さんの連載「鈴木さんにも分かるネットの未来」第13回:電子書籍の未来

関連商品

 -