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熱風に連載されている川上量生さんの連載「鈴木さんにも分かるネットの未来」第17回:インターネットが生み出す貨幣

      2014/05/20

スタジオジブリは、毎月10日に「熱風」という無料の小冊子を発行しているのですが、2012年11月からネット業界で仕事をしている人にとって、興味深い連載が始まっています。ドワンゴの会長であり、またスタジオジブリのプロデューサー見習いでもある川上量生さんの連載で、その名も「鈴木さんにもわかるネットの未来」です。

タイトルに書かれている「鈴木さん」とは、スタジオジブリのプロデューサーの鈴木敏夫さんの事です。ネットの世界に詳しくない鈴木敏夫さん向けの連載ということで、この記事ではネット業界の現状がとてもわかり易く解説しています。個人的には、梅田望夫さんが7年前に書いた「ウェブ進化論」の続きが書かれていると思って、いつも楽しみにしています。「ウェブ進化論」が好きな人は、この連載はオススメです。

熱風は無料の小冊子ですが、目を通している方も少ないと思いますので、ここでは連載の中から、印象に残った文章を読書メモとして紹介します。

第17回は、「インターネットが生み出す貨幣」です。

ビットコインは誰のものでもない?

  • ビットコインの運用に関して主体的に責任を担おうという存在がいないということであって、現実にはビットコインのソフトウェアを作成した”だれか”は存在しているし、また、不具合があった場合は、過去何回か”だれか”がソフトウェアのバージョンアップもしている。ただ、その”だれか”というのがとても曖昧。
  • ビットコインは、オープンソースソフトウェアというかたちで、たくさんの開発者が匿名のボランティアで開発に参加してつくられたことになっているので、だれがつくったのかがあまり明確にならない。似たような構造は、コンピュータウイルスにもあてはまる。
  • コンピューターウイルスと違って、ビットコインのような仮想通貨の開発、配布自体が違法となる可能性は少ないと思うが、ビットコインをお金と交換したり、ビットコインを通貨のように財やサービスの対価、つまり決済手段として使用することには、なんらかの規制がされる可能背が十分にある。
  • ビットコインが既存の通貨の機能を代替することは、国家は歓迎しない。

ビットコインの仕組み

  • ビットコインは中央銀行のような中央機関が存在しないことが、最大の特徴。
  • P2Pソフトと呼ばれるタイプのソフトウェアなので、サーバーを介在せずに、ユーザー同士が1対1で通信する仕組み。
  • 1対1の通信をする場合に、Aさんの財布に張っている暗号化された1BTCをBさんが受け取ってBさんの財布に入れること自体は簡単だが、難しいのは、AさんがBさんに送った1BTCをきちんとAさんの財布から減らすこと。
  • ビットコインでは、P2Pソフトのため、Aさんの財布はAさんのコンピュータにあって、Bさんの財布はBさんのコンピュータにあるため、AさんのコンピュータがちゃんとAさんの財布から1BTCを減らしたかどうかを確認する方法がない。
  • ビットコインは上記の問題を解決するため、取引データをビットコインに参加しているコンピュータの全てで共有することにしている。つまり、AさんがBさんに1BTC送金するためには、他のビットコインに参加している全部のコンピュータに、AさんがBさんに1BTCを送ったという事実を報告しないといけない。
  • ビットコインのようにP2Pソフトで仮想通貨のやりとりをするのは、サーバー上で仮想通貨のやりとりをするのに比べて、ひとつの取引をするだけでも、ビットコインのネットワーク上にある全部のコンピュータと通信しないといけないので、とても遅くて効率が悪い
  • ビットコインは、だいたい10分ごとに取引をまとめて1ブロックにし、取引が成功したというメッセージとして各コンピュータに送る仕組みになっている。これを、採掘(マイニング)という。
  • ちょうど10分くらいで解けるように設定された問題を最初に解いたコンピュータが、それまでに自分が受信した取引を、取引が成功したと報告するために、全部ブロックにまとめて送信する。採掘した報酬として、25BTC分のビットコインが新しく発行されて、無料でもらえる。
  • 計算問題を最初に解いたコンピュータが取引成功の証として送ることが出来、なおかつ無料でビットコインが発行されて貰える、というのがビットコインの革命的な発明といわれる核心部分になるが、このシステムは性能的に効率が悪い。
  • ビットコインの優位性として説明されているのは、以下のとおり。(川上さんは「イデオロギー的優位性を主張しているのだと解釈すべき」と指摘)
  • 通貨の発行権が全てのコンピュータ=ビットコイン利用者にある。
  • ビットコインネットワークを維持するための取引の認証作業の対価として、通貨の発行権が与えられる。
  • ビットコインの利用者が増えれば増えるほど、ビットコインネットワークへのハッキングは困難になるので、取引履歴の改ざんは起こらないだろう。
  • ビットコインは発行の上限が最初から決まっているので、中央銀行が紙幣を大量に発行することでインフレになるようなリスクがない。

ビットコインは本当に中立なのか

  • ビットコインの通貨の発行上限は、2100万BTCと決まっている。
  • 2100万BTCをどのように発行するかは、以下のようなロジックで決まる。
    • [ビットコインの総額2100万BTCの通貨発行手順]
    • まず、最初の4年間(正確には少しずれる)で半分の1050万BTCを発行する。
    • 次の4年間で残った半分のさらに半分の525万BTCを発行する。
    • 以降、同様に4年間ごとに残った半分のさらに半分のビットコインを発行する。
  • 2014年現在は、1ブロックあたりに発行されるビットコインは、25BTC。
  • 効率性から考えると、仮想通貨はP2Pソフトでなく、巨大なサーバーで一元管理をしたほうがはるかに効率がいい。
  • ビットコインがもてはやされるのは、サーバーで管理された仮想通貨なんてものはサーバーソフトの管理者がもろに通貨を発行しているのと同じだから、日本を含めてほとんどの国で違法になるからであって、性能が優れているからではない。
  • ビットコインの仕組みはこのままではすぐに破綻する。

ビットコインは本当に使われているのか

  • Coinmap.orgというサイトを見ると、全世界でビットコインが使える店は2014年3月23日時点で、3,690店、日本だと23店しかない。
  • ビットコインは決済に時間がかかりすぎる。標準的なビットコインの財布の実装では1部ブロックだけでは本当に成功したのかが分からないため、連続する6ブロック=1時間ほどが無事に経過してはじめて入金されたビットコインが使用されることになっている。
  • 取引にいちいち時間がかかるのがP2Pソフトで動作する仮想通貨の欠点。
  • ビットコインの取引の便利そうな使用目的としては、海外への送金や、取引の匿名性が高く追跡が難しいことを利用した違法な商品の売買や、マネーロンダリングくらいしか思いつかない。
  • ビットコインは、ビットコイン自体を売買することに使われている。つまり、投機対象として盛り上がっているに過ぎない。
  • 仮想通貨が注目される中で、ビットコインの持つ上限2100万BTCという仕組みが通貨としての信用性を超えて、投資対象としての信頼感を生んだ。
  • ビットコインの需要が拡大していくスピードに対して、ビットコインの通貨の供給量は4年ごとに半分になっていくので、希少性は加速度的にたかまっていく。
  • 投機資金がビットコインに流入することで、ビットコインの価格は乱高下を繰り返している。これが、ビットコインの決済通貨としての有用性を下げていて、将来性について、否定的な見方を生む原因のひとつとなっている。
  • ビットコインが1ブロックあたりで処理される取引数は、だいたい400件から500件くらい。ちなみにVISAが2013年9月に処理した取引数は約155兆回。

ビットコインの性能限界

  • ビットコインの標準的な実装では、1ブロックあたりのデータ量の上限は1MBとなっている。1回の取引あたりのデータ量は平均350バイトぐらいなので、1ブロックあたりに処理できる取引数は、だいたい3000件ぐらいとなっていて、実はビットコインの取引処理能力はかなり限界にきている。
  • ビットコインはP2Pソフトなので、瞬間で多数のユーザーにバージョンアップをしてもらうのは困難だが、X月X日から動作が変更するような時限プログラムを埋め込んだバージョンアップ版のクライアントソフトウェアを事前に配布しておき、X月X日までに出来るだけ多くのユーザーに切り替えておいてもらう、という作業が必要。こういう手順を踏めば、ビットコインの仕様はいくらでも変更可能
  • ビットコインに新たに参加するコンピュータは、いままでの取引履歴を共有するために一挙にダウンロードする必要があるが、これが現在20GB近くあり、高速なインターネット回線を使っても、ダウンロードに半日かかる。
  • ビットコインがどんどん盛んになればなるほど、普通のユーザーがビットコインネットワークに参加することが現実的ではなくなってくる。
  • ビットコインが安定して発展していくためには、このP2Pソフトがもつスケーラビリティの問題、ようするに参加者と取引量が増えた場合にどうするかを解決する必要があり、その鍵は取引所にある。

取引所とはなにか

  • ビットコインの取引所とは、ビットコインと米ドルなどの現実の通貨を交換する場所のこと。
  • ビットコイン取引所があって現実のお金と交換できるから、ビットコインは価値を持つ。
  • 取引所で取引されているビットコインの大部分は、ビットコインのネットワークには履歴が残らない。
  • 取引所はいったん取引所の口座にビットコインを振り込んでもらって、ビットコインを預かっている。同様に現金も振り込んでもらって預かる、そして預かった米ドルとビットコインを取引所の中で売買している。つまり、ビットコインのネットワーク外で交換が行われている。
  • 入出金しなければ、いくらビットコインを売買してもビットコインのネットワークには取引情報が流れない。

ここまでのまとめ

  • ビットコインは決済のための通過としては認証が遅く、コストも高いので適さない。
  • ビットコインは大量の取引データを処理するのには向かない。
  • ビットコインが普及していくと、個人のコンピュータが参加するのは困難なくらいにデータ通信量や共有する過去の取引履歴のデータ量が肥大化する。
  • 性能、処理能力を考えた場合には仮想通貨のシステムはP2Pソフトではなくサーバー型で構築すべきである。
  • 仮想通貨をサーバー型で構築するのではなく、P2Pソフトで構築するのは、根本的には法律で規制されないためである。その際にビットコインは中立な通過であるというイデオロギー的な主張が付随している。
  • 現状でもビットコインの取引量は限界に近づきつつあり、クライアントソフトウェアのバージョンアップで対応されるだろう。
  • ビットコインの仕様はクライアントソフトウェアの仕様を変更し、普及させることができればいくらでも変更が可能。
  • 取引所でのビットコインの取引は、ビットコインのネットワークから切り離されている。
  • 取引所はビットコインを売買しているのではなく、ビットコインと交換できる権利を売買しており、ビットコイン本位製のサーバー型の仮想通貨を発行しているとみなせる。

ビットコインの未来

  • クレジットカードのように、便利かつ頻繁に使用されるビットコインが成立するとすれば、P2Pソフトが提供する本物のビットコインではなく、取引所が提供するサーバー型のビットコインと交換できる権利がビットコインそのものであるかのように使用されるようになるだろう。
  • それは、「決済時間が遅くなること」「P2Pソフトでは大量の取引を同時に捌けないこと」「決済用のコンピュータに要求される通信料や計算量などの能力が大きすぎてわりにあわないこと」からです。
  • ビットコインの新規通貨発行システムである採掘(マイニング)は、家庭用コンピュータではほとんど成功しなくなっていて、マイニングプールと呼ばれる専用のコンピュータを集めたデータセンターがほとんどのシェアを占めている。
  • 本来のビットコインの仕組みは、少数のマイニングプールと、それぞればビットコイン本位制の中央銀行と化した取引所間だけで使用されることになるのではないか。

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