熱風に連載されている川上量生さんの連載「鈴木さんにも分かるネットの未来」最終回:リアルとネット

スタジオジブリは、毎月10日に「熱風」という無料の小冊子を発行しているのですが、2012年11月からネット業界で仕事をしている人にとって、興味深い連載が始まっています。ドワンゴの会長であり、またスタジオジブリのプロデューサー見習いでもある川上量生さんの連載で、その名も「鈴木さんにもわかるネットの未来」です。

タイトルに書かれている「鈴木さん」とは、スタジオジブリのプロデューサーの鈴木敏夫さんの事です。ネットの世界に詳しくない鈴木敏夫さん向けの連載ということで、この記事ではネット業界の現状がとてもわかり易く解説しています。個人的には、梅田望夫さんが7年前に書いた「ウェブ進化論」の続きが書かれていると思って、いつも楽しみにしています。「ウェブ進化論」が好きな人は、この連載はオススメです。

熱風は無料の小冊子ですが、目を通している方も少ないと思いますので、ここでは連載の中から、印象に残った文章を読書メモとして紹介します。今回が最終回です。

最終回は、「リアルとネット」です。

バーチャルがリアルへ

  • 人間が関わる現実=リアルというもののかなりの部分は、人間の想像の産物
  • IT革命とは、人間がインターネットについて誇大妄想をし、多くが実現してしまった家庭。
  • インターネットがよく理解は出来ないけれども、とにかく凄いらしいという印象づけのやりかたは、怪しげな商品を売りつけるマルチ商法などの手法に似ている
  • IT業界と資本市場が組み合わさると、想像上の戦いで勝利を収めると、現実の方も影響を受けて変わる。そのためにIT業界では想像上の戦いで勝利を収めることに、非常に熱心な人達が現れる。(連載では、ネットスケープ、Googleの例を紹介)
  • コンセプト、ビジネスモデルが素晴らしい、想像すると負けるわけがない、頭のなかでみんながそう思うと、もう莫大なお金が集まって、既に勝ったことにしてしまう。それが当たり前になっている。
  • インターネットは、バーチャルな存在であるみんなの想像や妄想、ひょっとしたらという願望を、資本市場と組み合わせることで、それをリアルな存在=現実の物へと変える装置として働いている。その装置は、以下のようなプロセスで動作する
  1. インターネットでのサービスやビジネスモデルを頭の中で考える
  2. 「1」の妄想を世の中に撒き散らして、同じく、みんなの頭の中で成功するかどうかシュミレーションしてもらう
  3. 「2」が頭の中で成功したら、株式公開をする
  • ほとんどが失敗し、一部だけ成功する
  • 段階的に大きな資金をベンチャー・キャピタルなどから集めて、その度に社員を増やしたり、オフィスを拡大したり、営業などが増えると、自然と会社の売上も増え、上場までの道筋の説得力が増す

リアルからネットへ

  • リアルの世界と鏡像関係にあるような未来のネット社会、という単純なモデルは他人に説明するビジネスモデルをつくるときに、とても使いやすい
  • ネット広告代理店、ネット証券、ネット銀行、ネット生保など、なんでもネットをつければ新しいビジネスモデルが出来る(という時代があった)
  • インターネットにまつわるビジネスというものは、ほとんどすべて、本質的には安売り商法
  • インターネットを利用することで、あらゆるサービスや商品を安く、無料で提供するため、安かったり無料だからお客が集まる、というあまりにも単純であるが故に、あまりにも万能なモデル。

パターンA(無料モデル)

  • 合法的コピー、あるいは違法ではあるがネットユーザーが自主的に行っているコピーを利用することにより、低コストでコンテンツを集めて、無料でサービスを提供する
  • 集まったユーザーを利用して、広告収入を得る

パターンB(安売りモデル)

  • ネットを利用してサービスや商品の提供をおこなうことにより、物流コスト、営業コストを抑える
  • その分価格を安くする
  • パターンAで提供される商品の格好の材料になったのは、コンテンツと呼ばれる情報だけで構成される商品。代表的なものとしては、Googleなどの検索サービスやYouTube、ニコニコ動画などの動画共有サイト
  • パターンBの代表的なものとしては、ECサイトと呼ばれるショッピングサイトの大半や、ネット証券やネット銀行、ネット生保などのように、通常は営業所や営業マンを抱えて販売するサービスをネット経由で申し込めるようなもの。ネット経由で営業することで、効率化してコストを下げる
  • パターンA、Bのような単純なロジックに非常に説得力をもっていたもうひとつの理屈が、「早い者勝ち」理論。「成功の理由はこんなに単純明快で、実はだれでもできるから早い者勝ちになる。そして、われわれは今、成功に一番近い位置にいます」といったような理屈。これによって、うさんくさいITベンチャー企業がはびこるのも当たり前

ネットとリアルの融合

  • インターネットに関る様々な人が、自分の都合のいい概念をもっともらしく世の中に押し付けていて、本当の姿が見えづらくなっている
  • ビジネス、ネット原住民、デジタルネイティブの3つの要素からなる力学で考えないと、正しく理解できない
  • ビジネスの面からも、単純なリアルの鏡像としてのネットのビジネスモデルという概念が使い古されてきて、よりリアルとネットを組み合わせた概念でないと、世の中を説得出来ない時代になってきた
  • ネットとリアルの融合とは、リアルの世界からみたバーチャルな人間の想像とネットの世界がひとつになる過程であり、人間が住む世界としてのリアルとネットがひとつになる過程でもある

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