いまの広告を考える。書評「次世代コミュニケーションプランニング」(高広 伯彦)

本書には、20世紀の百貨店王であるジョン・ワナメーカーのこんな言葉が紹介されています。

I know that half the money I spend on advertising is wasted: but I can never find out which half
(広告に費やす金の半分は無駄であることはわかっている。問題は無駄になるのがどっちの半分かわからないことだ)

この言葉の意味を、著者の視点で考えたのが、本書「次世代コミュニケーションプランニング」です。

広告は無駄なものか

本書の冒頭には、著者が実際に体験したこんな例が紹介されています。

著者が連日の激務に疲れ、久しぶりにカイロプラクティックに行こうと思い立ち、数年間通っていた東京・渋谷にある治療院のホームページをのぞいてみると、そこには以前にはなかった東京・目黒の治療院が紹介されていました。訪れてみると、目黒が渋谷の支店なのだと思っていたら、実は目黒の方が本店だったのだというのです。

なぜ目黒の人はホームページを作らなかったのかと著者が尋ねると、この治療院では、最初から広告は全然やっていないのだといいます。それには、こんな意図があったそうです。

まったく広告とかやらずに、
どこまで自分の腕だけでやれるか、
試していたかったんですよね。

冒頭に著者が挙げたこの例は、「広告とは何か」を本質的に問いかけるものだと思います。広告をしないこのお店に、なぜお客が訪れるのか。本書では、現代の広告の背景を詳しく分析した上で、著者なりの考えをまとめています。

全体図を描けるポジションの不在

著者は、現在の広告業界の背景を詳しく分析した上で、「全体図を描けるポジションの不在」を語っています。今までは、メディアも消費者もある一定の枠で定義することが出来たので、広告側のプロデューサーは、その枠組をオファーに従って調整することが役割となっていました。

しかし、メディアも消費者も多様化した現代では、枠組を調整する従来のやり方は通用しなくなってきているにも関わらず、ネット、マスメディアを横断的に考えられる人がおらず、商品と消費者をつなぐ全体的なコミュニケーションプランを描くことが出来ていない、と著者は語っています。

マーケティングコミュニケーションを考えるポイント

最後に、本書に書かれているマーケティングコミュニケーションを考えるためのポイントを紹介します。

  • その企業・ブランド・商品を取り巻くコンテクストはどう構成されているか
  • その商品を売れる理由をどう考えるか
  • その商品(やカテゴリー)に関する現在のパーセプターはどうなっているか?そこに解決すべき課題はあるか?
  • その企業・商品が過去に培ってきたコミュニケーション上の資産は何か?
  • ターゲットとする消費者層のメディア状況はどうなっているか?必要であればどのようなメディア/広告枠を開発すべきか?
  • その商品がもっとも「機能する」場所・シーンをどのように考え、演出できるか?
  • PR上・広告上のメッセージ発信のルール/ストーリーをどのように作るか
  • それらの全体構造をどのように描くか
  • それらを実現するためのスタッフを外部、内部含めて集めてこられるか

本書に紹介されているのは、あくまでこれからの広告を考える上での「ヒント」です。その「ヒント」を元に、どのように広告するかは、読み手自身にかかっていると言えます。しかし、本書に書かれている前提を把握していなければ、現代において広告を機能させることは出来ない。本書を読み終えて、そんなことを考えました。

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