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「何をするのか」じゃなくて「誰とするのか」。書評「ニコニコ動画が未来をつくる ドワンゴ物語 」(佐々木俊尚)

      2013/10/22

本書は2009年に出版され、ドワンゴという会社の設立の経緯から、ニコニコ動画というサービスを開発するまでを描いた1冊です。僕が、なぜこの本を手にとったのかというと、ドワンゴの会長を務める川上量生さんが「なぜ、起業に否定的なのか。」を知りたかったからです。

2009年当時のインタビューで、川上さんは以下のように語っています。

起業って、本当は、リスクが大きいんですよ。
だから学生が何になりたいか? と聞かれたときに、
安易に「起業家」と答えると許せないんです。
「おまえ、それ本気で言えるの?」と思う。
それなりの後ろ楯か、バックグラウンドがあるならいいけど(そんなものもなくて)学生からすぐに起業家を目指して失敗したら、人生崩壊ですから。
日本の企業は、一旦起業した人物は「使い勝手が悪い」と採用しないことになっているんです。
もし、そうなったら、もうツブシがきかない。

(リーマン破綻後のネットの未来像は?ドワンゴ川上会長を直撃)

2013年のインタビューで、川上さんは以下のように語っています。

現状、ドワンゴはそこそこうまくいっているとは思います。
でも、合理的に考えて、会社をつくってうまくいったのは「運」です。
優秀さなんて関係ない。本当にそう思っています。
実際に、僕よりも優秀な人が起業して、
残念ながらうまくいかなかったという例をこれまでいくつも見てきた経験からいって、そう考えざるを得ない。
(中略)
起業したいと思っている人にも、
僕は心底「悪いこといわないから、やめたほうがいいよ」と話す。

ルールとは「変わるもの」だ! [前編]―ドワンゴ代表取締役会長 川上量生

川上さんも語っていますが、なぜ、そこまで起業することに否定的なのか。ドワンゴという会社の設立の経緯が書かれた本書を読めば、分かるんじゃないかと思ったのです。

作りたくて作った会社じゃない

本書を読んで驚いたのは、ドワンゴ設立の経緯です。少し説明させていただくと、ドワンゴという社名は「Dial-up Wide Area Network Gaming Operation」というオンラインゲームサービスの名前で、アメリカのIVSという企業がサービスを提供していました。

1997年当時、ソフトウェアジャパンという会社に在籍していた川上さんは、IVSからライセンスを購入し、日本にサービスを展開していました。IVSはマイクロソフトとの提携も決まっており、これからビジネスが拡大していくタイミングだったと思いますが、そのタイミングでソフトウェアジャパンが倒産します。ソフトウェアジャパンが日本の総代理店だったため、マイクロソフトとIVSは日本のビジネスを続けていくための方法を検討する必要がありました。

そこで考えたのが、ソフトウェアジャパンでDWANGOのビジネスを主導していた川上さんを社長にした会社を設立し、日本でのビジネスを続けようというもの。そんな経緯で、川上さんは起業をすることになりるのです。本書の言葉を借りれば、「なんともアクシデンシャルな起業」です。言い換えると、川上さんは起業したくて起業したわけじゃないのです。

とりあえず、面白いことをやろう

本書を読んで驚いたことが、もう一つあります。ドワンゴは今でこそ「着メロ」と「ニコニコ動画」といったサービスで知られていますが、どちらも「これをやろう」といった強い思いがあって始めたサービスではなかったのです。「これなら出来る(かも)」と思って始めたら、あれよあれよといううちに、ヒットしている。「ヒットさせよう」といった思いがないのです。

あるのは「とりあえず、面白いことをやろう」という思いのみ。「お金を稼ごう」とか「世界で使われるサービスを作ろう」みたいな思いがない。強い本能のママ生きているような会社なのです。

「あぁ、あいつも来てればなぁ」

本書を読んでいると、ドワンゴという会社が成功したのは、川上さんが言うように運がよかっただけに思えてきます。でも、運を引き寄せる何かを、ドワンゴという会社が持っていたのも事実だと思います。

スチャダラパーの「彼方からの手紙」という歌に、こんな歌詞があります。

毎日みんなで口にするのは
「あぁ、あいつも来てればなぁ」
って、本当に僕も同感だよ

本書にも書かれていますが、ドワンゴという会社には、なんとも言えないくらい多彩で個性的な人々が集まってきます。じゃあ、なぜ個性的な人々がドワンゴに集まってくるのか。それは、ドワンゴが一貫して「誰と仕事をするのか」にこだわって運営してきている会社だからだと思います。

廃人と天才に共通しているのは、凡人にはない個性やスキルを持っている事です、凡人にはない個性やスキルを集めて、何か面白いことをやれば、他の会社には出来ないことが出来るんじゃないか。ドワンゴという会社は、「何をするか」じゃなくて、「誰とするのか」で運営している会社なのだと思います。だから、「廃人と天才が作った会社」などと言われるくらい、個性的な人々が集まっているんじゃないのでしょうか。

僕は、本書を読み終えてこんなことを考えました。
川上さんは、「何をするか」だけを考えた起業は否定するかもしれないけど、「誰とするのか」を考えた起業は否定しないんじゃないか、と。

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