本当に住居に必要な機能を教えてくれる1冊。書評「エアコンのいらない家」(山田浩幸)

2014/08/24

暑い。本当に暑い。

冷夏だと言われていた今年の夏も、結果的には例年同様に暑い日々が続いています。夜になっても、暑さはあまり和らぐことがなく、僕が住んでいる地域でも、寝苦しい夜が続いています。寝る時にエアコンをつけなければ、熱中症になってしまいそうです。

しかし、エアコンをつけて寝ると、喉が痛くなったり、風邪をひきやすくなったり、かえって体調を崩すことがあります。また、室内は涼しくても、外が暑いため、外と部屋の中との気温差が大きいため、体調を崩してしまうこともあります。

本来、エアコンは快適な室内環境を作り出すための道具のはずです。快適環境を作り出すはずのエアコンが、かえって快適を損なう原因になっているとしたら本末転倒です。それゆえに、「エアコンをなるべく使わず、扇風機を使おう」とか「エアコンを使わずに快適に過ごす方法」なんて紹介している記事を見かけたりします。もう、わけがわかりません。

では、どうやったらエアコンがなくても暮らせるのか。そもそも、なぜエアコンを使うのか。こうした情報は、多くの人々が知りたい情報だったと思うのですが、きちんとまとめられた書籍がありませんでした。

本書「エアコンのいらない家」は、どうしたらエアコンを使わない暮らしができるのかを、真正面から考えた1冊です。そして、エアコンという道具について真剣に考えることで、「人が快適に住まうためには、何を考えなければならないのか」をきちんと捉え直した書籍でもあります。

快適とはどういう状態か

快適とは、「温熱環境を形成する各要素がバランスよく保たれている状態」の事なのだそうです。さらに、「温熱環境を形成する各要素」とは、「温度」「湿度」「気流」「放射」(「活動量」「着衣量」)の事なのだという。つまり、この6つがバランスよく「快適」の方向でまとまっていれば、人はその環境を心地よいと感じるのだそうです。

この6つの要素を一つ一つ紐解いていった上で、どういう家に住めば快適に住めるのか、本書には具体的に分かりやすく説明されています。建築に詳しくない人でも、わかりやすい内容になっています。

とにかく建物の南側をあけること

エアコン無しで過ごすには、代わりに自然の力を利用することです。本書には、計画の第一歩として、「とにかく建物の南側をあけること」が重要だというのです。心地よく過ごすために必要なのは、冬を暖かく過ごす「冬の日差し」と、夏に涼しく過ごすための「夏の風」です。この2つを取り込むためには、「とにかく建物の南側をあけること」が重要なのだというのです。

風通しのよい家にしたければ、南側から風を入れ、北側に逃す。冬でも小窓を開けることで、湿気を逃すことが出来るそうです。建物の南側を開けると、夏は強い日差しが差し込んできますが、そうなったら、すだれを使ったりして、日差しを遮れば大丈夫。こうした、工夫をすることによって、「エアコンのいらない家」が実現出来るのだというのです。

本来、住居が持つべき機能

本書を読んでいると、本来住居が持っているべき機能とは何なのだろうと考えてしまいます。本来は、人が快適な生活を送るための器として、住居はあるべきなのだと思います。しかし、現代の住居は、住居の本来の目的を果すための機能を持ちあわせておらず、設備で何とかカバーしようとしているように思えます。

本書に書かれているような、住居として必要な機能を満たそうとすれば、自ずとその土地に住む際のデザインや、必要な設備は決まっていくような気がします。しかし、こうした住居に必要な機能を満たすことを考えず、見た目の派手さや、土地の持っている特性を考えずに建てられた多くの住居は、結果的にエアコンのような設備で、快適さを維持しようとします。そこに、無理を感じるのは僕だけでしょうか。

エアコンなしで住むための秘訣を知ることが出来るだけでなく、快適に住むということの意味について考えさせれれる1冊です。これはおすすめです。

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