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成功に必ずしもトップクラスの設備は必要ない

   

「トップアスリート量産地に学ぶ 最高の人材を見いだす技術」という本によると、現在、陸上短距離界で圧倒的な強さをみせているのが、ジャマイカです。そのジャマイカに、世界チャンピオンを多数輩出する陸上クラブがあります。100mの世界記録保持者アサファ・パウエル、100mハードルの世界陸上優勝者のブリジット・フォスター・ヒルトンなど、数多くのチャンピオンを生み出したのが「MVP」という陸上クラブです。

しかし、その「MVP」という陸上クラブのトラックは、草がはえた土のグラウンドです。グラウンドだけ見たら、この場所で陸上の世界チャンピオンが練習しているとは思えないグラウンドです。しかし、草がはえた土のグラウンドから、数多くの世界チャンピオンが生まれているのは、まぎれもない事実です。

長距離のチャンピオンは赤土から生まれる

陸上の短距離界で圧倒的な強さをみせているのがジャマイカなら、長距離界ではエチオピアです。そのエチオピアの長距離チャンピオンのほとんどは、ペコジ村という村で生まれています。10000mの元世界記録保持者で「皇帝」と呼ばれたハイレ・ゲブレセラシエもそんな1人です。

ペコジ村は高地に位置し、酸素が薄いため、長距離練習にはうってつけの場所です。ただ、それ以外特別な設備はありません。ランニングトラックはひとつだけ。朝6時から大人も子供も赤土の道をただひたすら走る。それだけです。

一億ポンドを投資しても選手が育たない

一方、チェルシーFCフットボールアカデミーは、ロンドンの高級ベッドタウンに一億ポンドもかけて最新設備のトレーニングセンターを建設し、ヨーロッパ中から十二~十八歳の才能ある少年を集めています。生徒たちはタクシーで練習で向かい、休憩時間には三つ星シェフが作った食事が出され、海外遠征の宿泊は高級ホテル。

しかし、最新鋭の設備を整え、優秀な人材を集めているにも関わらず、アカデミーの選手がトップチームに定着したのは、ジョン・テリーまで遡らなければなりません。ジョン・テリーがアカデミーに所属していた頃は、最新設備のトレーニングセンターはありませんでした。つまり、チェルシーが投資した一億ポンドは、全く効果をもたらしていません。

練習環境は厳しいトレーニングのために設計されるべき

ジャマイカで「MVP」という陸上クラブでコーチを務めている、スティーブン・フランシスは、金メダリストをどれだけ輩出し、個人としても、クラブとしても成功を収めても、設備を豪華にする予定はないそうです。技術を駆使した機器も、最新の設備が整ったフィットネス機器もありません。あるのはコーンが少しとストップウォッチ、エアコンもないほったて小屋に錆びたバーベルがいくつか。それでも、ここで世界記録保持者やオリンピック金メダリスト、世界チャンピオンがトレーニングを行っています。

スティーブン・フランシスは「練習環境は快適さではなく、厳しいトレーニングのために設計されるべきだ。成功への道のりは長く苦しいものだということを示す必要がある」と考えています。そして、こう語っています。「施設を簡素にすることで、つねに本当に大事なことに目が向く。なぜここにいるのか。どれだけの心構えなのか。何をあきらめ、犠牲にするつもりか。言い換えれば、これを一番望んでいるのは誰か。才能があっても、自分を向上させることより最新の設備や名声、快適さを求めるような選手はここにはこない」と。

間違ってはいけないのは、トップに立つためには、企業は空調を切って、壁から絵をはずし、古いPCを使って仕事をしろということではありません。世界トップクラスの仲間入りをするには、かならずしもトップクラスの設備は必要ないということなのです。

快適な設備や環境はスキルを身につける努力の妨げになる

トップクラスの人に必要なのは、たえず向上を目指して努力を続ける気持ちです。スキルを身につけるのはおもしろく、やりがいもあるが、同時に困難でくじけてしまうことがあります。苦労なしでレベルアップなどのぞめません。しかし、快適な設備環境は、スキルを身につける努力を続ける気持ちに妨げになる可能性があるというのです。

企業が学生や優秀な人材を集めるために、きれいなオフィスや働きやすい環境についてPRしています。ただ、「きれいなオフィスで働きたい」という考えで入社を希望する人は、自分を向上させることより、最新の設備や名声、快適さを求めているだけの人なのかもしれません。

ジャマイカやエチオピアの成功、チェルシーFCのアカデミーの問題は、「成功に必ずしもトップクラスの設備は必要ない」ということを教えてくれるだけでなく、成功するために本当に大切なことを教えてくれます。そう考えると、トップに立ったにも関わらず、常に満足せずに努力を続ける、メッシやクリスティアーノ・ロナウドのような選手の凄さを、改めて感じるのです。

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