試合に観客が来ないなら、いっそ「人がいるところで試合をすればいい」

無観客試合で収益をあげる試み」という記事でも書いたのですが、スポーツビジネスにおいて、何よりも重要なのは、興行を行うスタジアム、アリーナ、ホールに来場してもらう事です。実際に試合を観てもらうチケット代だけでなく、来場してもらう事による飲食、グッズの売上も貴重な収益源です。

しかし、興行を行う場所に来場してもらうのは簡単ではありません。仕事、家庭、趣味、恋愛といった、様々な事項からスポーツ観戦を選択してもらわなければなりません。また、スタジアムやアリーナといった場所の数が日本は少なく、顧客に満足してもらえるようなサービスを提供出来る場所も限られています。

どうしたら、より多くの人に興味を持ってもらえるのか。そして、どうしたらよい場所でスポーツを開催出来るのか。そんな悩みを逆手に取り、いっそ「試合に観客が来ないなら、いるところで試合すればいい!」と考え、試合を開催している団体があります。

デパートでフェンシングの大会を開催?

2017年5月に上海で開催された、フェンシンググランプリ上海大会ですが、準決勝以降はなんと現地のデパートで行われました。フェンシングはヨーロッパ(特にフランス)では人気スポーツですが、アジアでは必ずしも人気スポーツではありません。日本でも太田雄貴選手の活躍で話題に上がるようになりましたが、まだまだ知名度は高くありません。知名度が高くないので、知ってもらうために、人がたくさんいるところで試合をすればいい。たぶん、フェンシンググランプリの関係者はそう考えて、デパートで開催しているのだと思います。

フェンシンググランプリ上海大会の様子。(提供:千葉洋平)

「人がいる」場所で試合をする「3×3」

日本でショッピングモールで試合を行っているのは、3人制バスケットボール「3×3」です。2020年の東京オリンピックの正式種目にも決定し、注目度が高まっている競技の一つです。日本の3×3のトップリーグ「3×3 PREMIER EXE」は、2017年シーズンは12試合の開催が予定されていますが、開催される場所が、ららぽーと立川、名古屋のオアシス21、神戸ハーバーランド、そして12戦目の六本木ヒルズといった、「人がたくさんいる場所」で開催するのです。入場料は無料ですが、スポーツショップのゼビオグループがスポンサーを務めています。2017年6月に開催された3×3 exeの開幕戦では、約20,000人もの来場者が3×3に接触したのだそうです。

「滞在時間を増やす」きっかけを作る

こうしたスポーツイベントを、ららぽーと立川や六本木ヒルズのような場所が開催するメリットは何か。それは、「滞在時間を増やすきっかけになる」という点です。滞在時間が長くなれば、喉が乾いたり、お腹が空いたりします。喉が乾いたり、お腹が空いた顧客が、本来立ち寄る予定ではなかったお店に立ち寄り、売上が増える。そんな事が考えられます。もちろん、3×3目当てで来場する人もいると思いますが、店舗側のメリットとしては、「滞在時間を増やす」ことで、売上を増やしたいということなのだと思います。

そして、スポーツイベントを主催する団体にとっては、普段なかなか接触できない「スポーツにあまり興味がない」人達に、興味をもってもらうよいきっかけになります。SNSやWebを活用して、どれだけ情報を発信しても限界があります。ファンを増やすには、今まで興味をもっていなかった人たちに接触するしかありません。「試合に観客が来ないなら、いるところで試合すればいい」という考え方は、スポーツに興味をもってもらうよいきっかけになると思うのです。

フェンシング、柔道、レスリング、フットサルなど、少し考えただけで、「人が集まる場所」で開催できるスポーツはたくさんありそうです。以前、為末大さんが「ストリート陸上」と題して、東京丸の内で陸上競技を開催したことがあるのですが、陸上競技やパラリンピックの種目は生で観れば、迫力が伝わるのではないかと思います。

スポーツの楽しさ、可能性に触れてもらえるチャンスは考えれば色々ありそうです。ぜひ色々トライして欲しいと思います。

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