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書評「Number(ナンバー)930号 清原和博「告白」」

   

2016年2月に覚せい剤取締法違反で逮捕され、5月に懲役2年6ヶ月、執行猶予4年の有罪判決を受けた清原和博。誰もが名前を知っているスポーツ選手で、成功を手にし、華やかな生活をしていた人だっただけに、ニュースを聞いた人の衝撃は大きかったと思います。僕もそんな一人です。

清原さんの「正」の部分に焦点を当て続けたNumber

清原さんの負の部分に焦点を当てた記事は山ほど目にしましたが、正の部分に焦点を当て続けたメディアがあります。それは、Numberです。長年良質なスポーツノンフィクションを掲載してきたスポーツ雑誌の老舗は、清原さんを見捨てる事はありませんでした。甲子園で清原さんにホームランを打たれた投手にインタビューした「清原和博への告白 甲子園13本塁打の真実」は、過ちを犯してしまった清原さんに対して、舞い戻って欲しいという強烈なメッセージがこもった特集でした。

周りがなんと言おうと、伝えたい情報を伝える。人が目を向けない情報に光を当てて伝える。それがジャーナリズムだと思うのですが、最近はジャーナリズムを体現するメディアが少なくなりました。そんな中、Numberの清原特集は「これがジャーナリズムだよね」と唸らされました。文藝春秋という会社には、Numberのような雑誌もあれば、週刊文春もある。対極にある両メディアを、同じ会社が運営しているというのは興味深いです。

Numberの930号は、当初「帰還 物語は続いていく」というインタビュー特集でした。ところが、発売2日前に突如差し替わりました。差し替わった特集のタイトルは、「清原和博「告白」」。清原さんは事件後に何をし、どんな事を考え、生きてきたのか。そして、清原さんに対して、友人の佐々木主浩さん、後輩の立浪和義さん、そして清原さんに対して数少ない前向きなメッセージを発信したダルビッシュ有さんのインタビューを掲載しています。

清原さんのインタビューを読んでいると、当然ですが事件から立ち直れていないという事が分かります。人目を気にしながら、自分自身が抱えている大きな闇と向き合っている段階で、とても前向きに何かを出来るという状態ではないことが読み取れます。正直、よく取材を受けたなと思いました。ただ、清原さんも語っていましたが、取材を受けたことが前に進むきっかけになれば良いなと、心から思います。

誰だってミスをする確率はある

僕が印象に残ったのは、ダルビッシュ有さんのこの言葉です。

日本の場合、(犯罪者は)一生消えろ、とか、そういう感じになってしまう。それは、1人の人生を終わらせてしまうこと。確かに、自業自得と言う人もいるでしょうけど、誰だってミスをする確率はあるわけです。例えば僕は、今日はクスリをやっていません。でも、明日のことや1秒後のことは分からない。誰も未来のことは分からないですから、他人にそういうことを言える人はいないと思おうんです。それだけ無責任に、自分がやっていないというだけなのに、やっている人に対して、その人の人生を終わらせるようなことは、僕はすごく嫌だと思いますし、簡単に終わらせてはいけないと思います。

僕がこの特集を読み終えて感じたのは、失敗や再チャレンジは誰だって起こりうる事だという事、そして罪を償えば再出発出来る社会にしなければならないという事です。誰だって、落とし穴に落ちてしまう事はあります。小説ではありませんが、ある日突然環境が変わって、自分が犯罪者のように扱われる事だってあるかもしれません。ただ、人はそれぞれ何かを背負って生きています。罪を背負い、償った上で、人に役立つ事をしている人であれば、功績を認め、きちんと評価する。そんな社会にしなければならないと思うのです。自分に起こらなくても、子供に起こることもあるわけですから。

そして、最近「夢を持て」「目標を持て」という言葉を聞きます。確かに、夢はないよりあった方がいいかもしれません。でも、夢や目標は誰でも叶うわけではありません。叶う人はほんの一握りです。夢が叶った人は、夢を持てと語りますが、夢が叶った人は、夢に敗れた人の事は分かりません。大多数の人は、夢に敗れようが、目標が達成できなくても、生きていかなければなりません。理不尽な事で達成出来ない事なんて、山ほどあります。それでも生きていくにはどうしたら良いのか。夢や目標を持つ事の大切さを伝えるなら、夢に敗れた時の対処も伝えて欲しい。僕はそう思います。

この特集はぜひ多くの人に読んでもらいたい1冊です。この特集の感想を書くのは簡単ではありませんでしたが、敢えて書かせて頂きました。

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