書評 Number(ナンバー)948号「僕らは本田圭佑を待っている。」

「僕らは本田圭佑を待っている。」

本書には、こんなタイトルがつけられている。

2017年9月を最後に、本田圭佑は日本代表に招集されていない。「本田は終わった」「本田はダメだ」。こうした声に抗うように、Numberは敢えて本田圭佑待望論ともいうべき、特集を組んだ。長年、本田圭佑を取材している木崎伸也さんによる最新の本田圭佑の動向だけでなく、本田の代理人を務める、実兄の弘幸さんのインタビューなど、あまり知られていない、今の本田圭佑が浮かび上がる特集になっています。

本田が2014年ワールドカップ当時にかかえていた「ある病気」

僕が最も印象に残ったのは、2014年の大会前に噂された、本田がかかえていた「ある病気」についての記事だ。当時日刊スポーツが取り上げたことは記憶していたが、ここまで当時の背景と実情がきちんと語られている記事を読んだのは初めてだ。そして、日刊スポーツは取り上げる前にきちんと本人にインタビューをとっていたことも、初めて知りました。

実は当時、本田の映像を観た僕の妻が、「本田は病気にかかってるよ」と指摘してくれた事があります。本田の病気については、本書を読んで欲しいのですが、実は僕の妻も同じ病気にかかり、今も治療を続けている。妻は本田ほど重くはないのだが、本田の状態をひと目見て気がついたのは、同じ病気にかかったものだけが分かる、何かがあるのだろう。

妻は本田が病気にかかっているならという前提で、こう語っていたのを思い出します。

もし、2014年ワールドカップに本田が出られたら、それだけでも奇跡だよ」と。

「もう終わった」「あいつはダメだ」と言われたアスリートほど取り上げる

今回、特集するにあたって、Numberの編集長から、Twitterで本田宛にこんな投げかけがあったそうだ。

Number編集長の投げかけに対して、本田はこう答えている。ガチな取材には、ガチで答える。本田らしい対応だ。

僕は、最近のNumberの「世間の逆をいく」特集が好きだ。清原和博、松坂大輔、そして本田圭佑。共通しているのは、「もう終わった」とか「あいつはダメだ」といった声が聞こえて来たアスリートだ。光り輝いていた時は、散々もてはやしてきたのに、成績が落ちたり、怪我をしたりといった失敗を犯したら、まるでこれまでの実績などなかったかのように扱う。SNSによって、ユーザーの声が目に見えるようになってから、その傾向が強いと感じます。

しかし、最近のNumberは、そんな世間の逆をいく特集を組んでいます。逮捕された清原和博の特集を組み、独占インタビューを掲載し、半生を振り返る連載をスタートさせました。怪我で登板機会がほとんどなかった松坂大輔のインタビューを掲載するだけでなく、「松坂世代」と呼ばれた球児たちの今を取り上げました。

そして、今回の本田圭佑。「本田は終わった」「本田はダメだ」「本田はハリルホジッチの戦術にはフィットしない」。そんな声を逆手に取るような今回の企画には、Number編集部の気概が感じられます。流行を追いかけ、世間の声に乗るのではなく、逆を行く。世間の声の逆をいくのがジャーナリズムだと、僕は思います。

本田圭佑が選ばれるかどうかは、僕には分からない。ただ、僕は「逆境に立ち向かう」男が好きだ。人とぶつかっても、世間にあらがっても、自らの道を進もうとする男が好きだ。最近幸運にもアスリートと話をさせて頂く機会があるが、どのアスリートも、自分の道を真っ直ぐに歩もうというエネルギーに満ち溢れている。他の人に出来ないことをやる。それが、アスリートに求められることなのだ。

本田圭佑が進む道は、どこに続いているのか。僕は楽しみにしたいと思います。

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