山あり谷ありの20年を振り返る。Number798号「Jリーグ20年記念-歴史を動かした20人 」

2012/11/19

Number798号は「Sports Graphic Number (スポーツ・グラフィック ナンバー) 2012年 3/8号 [雑誌]」という、Jリーグの20年の歴史を振り返る企画。Jリーグも振り返ると、よくここまで続いたなと思うほど、山あり谷ありの20年だったと思います。

最近Numberはサッカー特集が多く(前号もFC Barcelona特集)、いくらサッカーが好きといっても、お腹いっぱいな気分になりがちですが、Jリーグのことを書くライターは、きっちり取材をし、短い文字数でも良記事を書く方が多いので、今回も楽しく読ませて頂きました。個人的に印象に残った記事を3つ取り上げたいと思います。

三浦知良「Jリーグの成功を託された男」

Jリーグ創設時の特集を語るなら、この人は外せないということで、キング・カズこと三浦知良の記事が巻頭記事。ライターは一志治夫さん。カズのことをずっと追いかけてきたライターが今回取り上げたのは、カズが日本に帰ってくるときのエピソード。

当時のブラジルのプロサッカーリーグは、ヨーロッパに移籍している選手も少なかったこともあり、現在よりもずっとレベルの高いリーグでした。そんなブラジルで活躍してたカズが帰国するきっかけとなったのが、読売クラブの森下源基との交渉でした。この記事では、Jリーグの20年の歴史の始まりを予感させる当時の様子が、当事者のエピソードを交えて語られています。

この記事を読んで感じたのは、当時のJリーグには約束された成功はなかったけど、未知の世界を開拓しようという希望に満ちあふれていたのだと感じます。その後Jリーグは成功も失敗も経て今にいたるのですが、果たして20年目のJリーグが当時と同じ希望を持てるものになっているのか、もう一度そのあり方を考えたほうがよいのではないか、と改めて感じます。

Jを支えた裏方たちの告白「前例なき道を行く者」

最近メールマガジンなどで、刺激的なルポルタージュや先鋭的な技術論を書いてきている木崎伸也さんが、今回書いたのは意外にもJリーグを支えてきた「裏方」の方々。Jリーグの初代チェアマンを務めた川淵三郎、浦和レッズに栄光をもたらした犬飼基昭、川崎フロンターレで地域密着の新しい形を提示する天野春果、西澤明訓や遠藤保仁などの日本代表選手の代理人を務めた、西真田佳典、という4人です。

個人的には、天野さんの特集が印象に残りました。僕は1999年から2002年までフロンターレのボランティアスタッフをやっていたことがあり、天野さんのことは多少存じ上げています。1999年の時は、フロンターレはまだJ2にいましたので、天野さんの地域密着の施策も手探りといった感じでした。

今でも忘れないのは、当時準ホームだった長野で試合があるということで、ボランティアに行ったときのこと(もちろん交通費は支給されませんでした)。

僕の担当は、試合を見に来ていたサポーターのコメントを記事にするライターの仕事だったのですが、(今考えるとボランティアにライターをやらせた発想は、秀逸)当時実施していたハーフタイムのイベントとして、ふろん太くんと地元のサポーターと二人三脚競争をやることになっていたのですが、人が足りないということで、急遽僕も参加することに。長野まで自費でボランティアに行き、二人三脚をやったことは一生忘れられない思い出です。

記事にも書かれていましたが、当時の天野さんの企画は斬新すぎて、社内にも理解者は少なかったのではないのでしょうか。でも、粘り強く活動を続けた結果、天野さんの発想と実行力に周りが付いて来たのだと思います。

そして、天野さんの周りのスタッフが当時からほとんど変わらずに継続して働いていること(井川さん、吉富さん、谷田部さん)も、成功の大きな要因だと思います。

このやり方を現在真似ているチームがありますが、簡単に真似できるやり方ではありません。僕は、フロンターレに対抗して、他のやり方を提示するチームが出てくることを願ってます。

ヤス革命「ギラヴァンツ北九州、躍進の舞台裏」

今回一番楽しく読ませていただいたのは、吉崎エイジーニョさんの書いたギラヴァンツ北九州に関するノンフィクション。去年のJ1最優秀監督賞はネルシーニョが受賞しましたが、J2に最優秀監督賞があれば、間違いなくギラヴァンツの三浦泰年監督が受賞していたと思います。

記事を読むと、三浦監督は特別な事をしたわけではなく、一つ一つ丁寧に問題を解決していくことで、結果的にチームを変えていったことが、よく理解できました。

一番印象に残ったのは「これからのチームのスタンダードは自分だ」と言い切ったこと。そして「すべて変わる」と付け加えたことです。成果を残せないチームは、結果が出ていないにもかかわらず、自分が慣れた手法や形式から抜けだせず、負の連鎖に陥ることがあります。

三浦監督は、まず負の連鎖を断ち切ることを始めたのは、とても興味深かったです。また、未経験の三浦監督を周囲の反対を押し切って起用した、社長とGMの英断は、監督の手腕と同じく評価されるべきだと思います。

僕はギラヴァンツ北九州は、有望な若手を多く獲得したことで、昇格レースの台風の目だと思っています。今年は応援しているヴェルディはもちろんですが、J2を観る時は、ギラヴァンツ北九州にも注目してみていこうと思います。

最後に

今回の特集でひとつ残念なのは、Jリーグ全体の歴史を振り返る年表がないことです。こういった”歴史を振り返る”類のコンテンツでは、年表を見ることで「こんなこともあったのか」「あの時はこうだったなぁ」などと、過去を振り返ることで、Jリーグ創設時のサポーターだけでなく、最近のサポーターも楽しめたのではないだろうか。そこがとても残念でした。

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