書評:Number「選択の人間学。~僕はこんな道を選んできた~」

2013/01/16

Sports Graphic Number (スポーツ・グラフィック ナンバー) 2013年 1/24号 [雑誌]

私たちが人生ですることは、すべて行動という言葉で言い換えられます。行動はほとんどすべて選択したもので、結婚相手、会社、仕事、人間関係は日々の選択の積み重ねといえます。今回のNumberは「選択の人間学」と題して、アスリート自らが「選択」した行動から、アスリートの本質を紐解こう、という企画です。

すべての行動は自らの選択である

本書を読んで思い出したのは、「すべての行動は自らの選択である」と考えることで、良質な人間関係を構築していこうと考える「選択理論」という心理学の理論です。ウイリアム グラッサーという人が提唱している理論なのですが、「選択理論」では10の原則が紹介されています。

選択理論10の原則

  1. 私たちがコントロールできる行動は唯一自分の行動だけである。
  2. 私たちが与えることができるもの,他の人から受け取るものはすべて,情報である。その情報をどう処理するかは,それぞれの選択である。
  3. 長期にわたるすべての心理的問題は,人間関係の問題である。
  4. 問題のある人間関係は,常に私たちの現在の生活の一部である。
  5. 過去に起こった苦痛は私たちの現在に大きく関係しているが,この苦痛な過去に戻ることは,今,私たちがする必要のあること,すなわち,重要な現在の人間関係を改善することに,ほとんど,あるいは全く貢献できない。
  6. 私たちは,遺伝子に組み込まれた5つの欲求,すなわち,生存,愛と所属,力,自由そして楽しみの欲求によって駆り立てられている。
  7. 私たちは,上質世界に入っているイメージ写真を満足させることによってのみ,欲求を満たすことができる。
  8. 私たちが誕生して死を迎えるまでにできることはすべて,行動することである。あらゆる行動は,全行動で,4つの分離できない構成要素,行為,思考,感情,生理反応によって成り立っている。
  9. すべての全行動は,動詞,あるいは不定詞や動名詞によって表現され,最も認めやすい要素によって呼ばれる。例えば,私は「落ち込んでいる」,ではなく「落ち込み行動をしている」「落ち込む選択をしている」と表現する原理である。選択を動詞で表現することが重要である。
  10. すべての全行動は,選択されたものであるが,私たちが直接コントロールできる要素は自分の行為と思考だけである。

参考記事

選択理論とは

アスリートはどの行動を選択するのか、自覚的。

本書に書かれているアスリートのエピソードを読んでいると、アスリートは特に「1. 私たちがコントロールできる行動は唯一自分の行動だけである」を強く自覚して、行動していると感じます。

例えば、今回の特集の表紙を飾る”キング・カズ”こと三浦和良は、自らのサッカー人生で実践してきた選択のポイントについて、以下のように語っています。語っている内容からは、いままで行ってきた行動は、あくまで自身のための行動であり選択である、という強い自覚が感じられます。

どこで自分の力が一番発揮できて、気持ちよく思いっきりサッカーに集中できるかが決断の一番のポイント。
若手を頑張らせるために僕はやってるんじゃない。僕の背中を見せるために、やっているわけでもない。

情報をどう処理するかは,それぞれの選択

また、アスリートは「2. 私たちが与えることができるもの,他の人から受け取るものはすべて,情報である。その情報をどう処理するかは,それぞれの選択である。」というように、情報を処理する際、きちんと自覚して選択している傾向が強いのかもしれません。

本書にも記事が掲載されている、メジャーリーグ挑戦を表明した後日本ハムファイターズへの入団を決断した大谷翔平は、与えられた情報を基に、自らの意思で選択し、処理したことが、以下のコメントからも伺えます。大谷翔平は18歳で大きな選択をしましたが、以下のような考えに基づいたのであれば、まっすぐ目標に向かって進んでいくのではないか、とさえ感じます。

こうだというふうに決めつけずに、全部聞いて、
資料もしっかり読んで決めた方が納得できる。

「アメリカではどうやって失敗するのか」
成功した人には特別なものがあると思うが、失敗する人には何か共通するものがあると思った。

私たちが直接コントロールできる要素は自分の行為と思考

アスリートにも、「10.すべての全行動は,選択されたものであるが,私たちが直接コントロールできる要素は自分の行為と思考だけである。」という点を重視し、ベストの決断をするために、慎重にじっくり考えるタイプもいます。

ロンドン五輪ボクシングミドル級金メダリストの村田諒太は、自身が物事を選択するときのポイントについて、こう語っています。村田諒太の発言からは、自分の行為と思考を一致させた上で、行動していきたいという強い意志を感じます。

  1. 一般的な定説を疑うこと。
  2. 直感を信じること。
  3. 見切り発車をしないこと。

アスリートの”選択”への意識の高さを、サラリーマンも学ぶべき

アスリートの選択から、サラリーマンが学ぶべき点があるとすれば、「”自身が選択する”という意識の高さ」ではないかと思います。この記事では3名の例を挙げましたが、3名とも自らの行動を、「なぜ選択したのか」を明確に意識しています。

その理由は、何か。理由を考えたとき、三浦和良が語っていた以下の言葉に理由があるのではないかと、思いました。

僕の場合は、リスクある選択をしているからこそ、緊張感もあり、
毎日を大切にしようという意識がどんどん強くなっていくのかもしれない。

現代は、サラリーマンであってもリスクを背負って選択しなければならない時代です。そう考えると、日々リスクを背負って生活しているアスリートが、物事を選択するときの考え方には、学ぶべき点があると思います。そんなアスリートの”選択”に対する考え方が掲載されている1冊です。

おすすめ商品

本書を読んで興味を持った方はこちら。

Jリーグ開幕までのカズの半生を描いた「足に魂こめました」が文庫本になって再登場しました。

ファイターズは、なぜ大谷翔平を獲得できたのか。
そのヒントとなるやもしれない2冊の書籍はこちら。

村田諒太さんの著書には、自分に打ち勝つためのメンタル術と謙虚な考え方が形成された理由が詳しく書かれています。

「選択理論」について、詳しく知りたい方はこちらの書籍がおすすめです。