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書評:「Number 808 ロンドン五輪総特集 ~やまとなでしこロンドンに咲け~ 」

      2014/12/23

Sports Graphic Number (スポーツ・グラフィック ナンバー) 2012年 8/2号 [雑誌]"

今回のNumberは「ロンドン五輪総特集 ~やまとなでしこロンドンに咲け~ 」」。
“やまとなでしこ”と書いてあるくらいなので、女性アスリートの特集の方がページ数は多かったのですが、僕が注目したのは男性アスリートの特集です。特に、やり投げとハンマー投げの2人の代表選手の記事に注目しました。

カズと澤穂希との間で取り交わされた約束とは?

巻頭特集は”キング”カズと”クイーン”澤穂希のスペシャル対談。男子サッカーと女子サッカーのトップランナー同士の対談は、意外にも今回が初めてだそうですが、読み進めていくと、土壇場で幾度と無く力を発揮してきた二人の言葉には、共通点がありました。
それは、トップランナーとしての心構えです。

カズ
僕が一番、大事だと思っているのは、澤さんだったり、僕の立場のような人間が試合でボールを獲られた時にどうするか、ということなんです。ボールを獲られて”お前、頼むよ”と任せるのか、泥臭くスライディングして自らボールを奪い返そうとするのか。
メディアは、ワールドカップ決勝の澤さんの同点ゴールに注目するけど、実際の澤さんのリーダーシップはそこじゃない。1cmでも戻ってディフェンスをするかどうか、それを最年長の人間がやるかどうかでチームの雰囲気が変わってくる。チームを救うのはスーパープレーじゃない。泥臭いプレーなんだと思う。

そう思います。”上がやっているのに下がやらないわけにはいかない”ですからね。だから私は、練習でも一切手を抜きません。
(中略)

カズ

スポーツはメンタルですからね。大会を勝ち抜くためには、チームに勇気を与える存在が必要なんです。

自ら率先して泥臭いプレーをやる、という二人の考え方は、当たり前のようですが、ずっと続けるのは大変なことです。だからこそ、二人は長年の間トップランナーとしてプレーできているのだと、この記事を読んで実感しました。

この他にも「毎日すべてを出し切る」「怪我をしていても休まない」「30代になって見えるもの」など、トップランナー同士の対談だからこそ出てきた、勇気と力が湧いてくる言葉が一杯つまった対談です。

なお、最後にカズが澤に対して、「夢を叶えられた時には、なでしこのみなさんを食事に招待しましょう」と約束しています。この約束が守られたとき、それはなでしこジャパンがメダルを取った時です。ぜひ、この約束が守られることを願っています。

“鉄人”室伏広治の言葉を読み解く

4回目のオリンピックに挑む室伏広治の記事には、03年に84m86を記録した後、どのような考え方で、肉体や技術を追求していったかが書かれています。

「ハンマーを投げる」という競技の特性に興味を持ち始めた2004年、体の奥底に眠っている感覚を目覚めさせるような練習を試みた05年、疲弊しし始めた体と向き合い、怪我を予防するために長年の競技生活で偏りができていた体を、正常なバランするに戻すトレーニングを試み、世界選手権初制覇につながった2010年。

それは、試行錯誤を繰り返しながら、年齢を重ねるにつれて、衰えていく体に折り合いをつけながら、それでも潜在能力を引き出そうとする、アスリートの戦いの記録でもあります。室伏は今の自分について、こう語っています。

「いまの自分は年齢に対してもチャレンジをしているんです。どのようにやっていけば毎年力を出せるか。人間は誰でも老いるし、体は衰える。それを何かで補っていく方法がわかれば‥‥‥‥‥。これは非常に面白い研究テーマだと思うんですよ。」

選手生活晩年の清水宏保さんがそうだったように、室伏広治も記録や順位ではなく、自らの身体に対する深い探究心が、彼のチャレンジ精神の源になっているのだと、感じました。そんな室伏広治のチャレンジの集大成として、ロンドン五輪があります。この文章を読んで、結果にかかわらずハンマー投げの決勝は生で観たいと思います。

“やりなげの超新星”ディーン元気の競技哲学

僕がロンドン五輪で注目しているのは、やり投げのディーン元気です。ディーン元気の事は、日本選手権の決勝を観るまで全く知りませんでしたが、村上幸史選手との息詰まる熱戦を観ていて、すっかりファンになってしまいました。ディーン元気選手が本格的にやり投げを始めたのは、高校一年の頃。それからわずか4年でオリンピック代表に上り詰めました。

この記事ではディーン元気が、「なぜ本格的に競技を始めてから4年でオリンピック代表になれたのか」という点が書かれています。
記事を読んでいて感じたディーン元気の長所とは、「メンタル」です。

たいていの選手は競技経験の長短にかかわらず、挫折や後悔を味わったことがあるのですが、ディーンはこう語ります。

「僕の中では、大きなつまずきというのはないですね」

上昇し続ける成績がそう言わせているのかとも思ったのですが、彼はこうも語っています。

「何か失敗して、それをつまづきと考えるかどうかは自分次第だと思う。大きな失敗を次の段階で糧に出来なかった人がその経験をつまずきと捉えるんだと思います。そういった意味では僕の中につまずきはない」

失敗を失敗と捉えず、次の段階で糧に変える。これができるためには、自分を肯定する力が必要です。ディーン元気には、自分を肯定できるメンタルの力が備わっていると言えます。

また、上記の言葉から、彼は自分の言葉で、相手に自分の感覚を伝えることができるアスリートです。まだ21歳と若いですが、自分の言葉で話せるアスリートが出てきたことは、新たなスターの誕生を予感させます。

前述の室伏広治も、自分の言葉で自分の感覚を語れるアスリートでしたが、ディーン元気ならゆくゆくは室伏広治も到達できなかった境地に到達してくれるのではないか、と期待してしまいます。楽しみです。

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