書評「観察の練習」(菅 俊一)

本書はこんな言葉で始まります。

観察とは、日常にある違和感に、気づくこと。

本書「観察の練習」は、こんな言葉から始まります。この本では、著者が「違和感に気づく」ために、日常的に行っている「観察」の例を、写真と文章で紹介しています。まず見開きに著者が撮影した写真が掲載され、次のページをめくると、著者が観察して感じた所感が書かれています。

「写真で一言」

本書を読んでいて思い出したのは、松本人志さんが得意としている「写真で一言」という芸です。

「写真で一言」は、スクリーンに映し出される写真を見た後、松本さんが思いもつかない一言を言って、笑いをとるという芸です。現在は「IPPONグランプリ」という番組疲労されていますし、Webでは「ボケて」というユーザー投稿型のサイトも人気です。

「写真で一言」は、写真に映っている情報を見て、他の人の解釈とは、違う解釈をしたり、より細かく状況を説明して、笑いを引き起こしています。芸人の解釈による笑いを楽しみながら、芸人の方々の違和感に気がつく能力にはいつも感心します。

観察によってより多くの事に気がつく

著者が観察を日常的に行うようになったきっかけは、高校生のときに読んだ、「サウンド・エデュケーション」という本がきっかけだそうです。サウンドスケープという概念を提唱した著者によって書かれた本には、音への感受性を高めるための課題が沢山掲載されており、その課題の一つに「今聞こえる音をすべて書き出してみなさい」という課題があったそうです。この課題に取り組んでみると、想像以上にさまざまな音が、自分の周りで鳴っていたことに気づいてびっくりしたと、著者は書いています。

この体験をきっかけとして、著者は「物の見方や感じ方は、自分の意識によってあっさりと変更することができる」「自分には見えているようで見落としているものがあまりにも多い」という事を学んだそうです。そこで、著者はより自分自身が得る気づきを増やすために、日々の「観察」を練習することを始めます。本書に書かれているのは、そんな著者の観察の記録です。

僕は著者ほど著名ではありませんが、著者の言わんとしていること、考えていることは、とてもよく分かります。なぜなら、僕にとって、自分の「観察」を記録しているのが、このブログだからです。

僕がこのブログを始めたきっかけは、自分自身が普段の生活で感じていること、本を読んで感じたこと、サッカーを見て感じたことなど、自分自身が普段は気づかなかったり、気づいているにもかかわらず、言葉にしていなかったことを言葉にすることで、自分自身が「こんな事を考えていたのか」という気づきを得られる。そんな気づきが得られるからこそ、僕はブログを書き続けています。そして、僕が気づいた事で、人にお裾分け出来るなら、きちんとお裾分けしたい。そう考えています。

最近、僕が書くサッカーの文章を読んだ方から「どうやったら、サッカーの分析が出来るようになるのか」と聞かれる事があります。そんな質問に対して、僕がら言えることは、「試合を見て、自分が感じたことを、箇条書きで抜き出してみてください」でしょうか。「選手がかっこいい」でもよいのです。とりあえず書き出してみる。その後、「なぜそう思ったのか」を考えて、感じたことを書き出す。この繰り返しを続けること、それ自体が「分析の第一歩」だと僕は考えています。

本書を読み終えて、「観察」は「分析」する第一歩であり、観察によって得られた気づきが、改善やイノベーションを作り出すのだということを教えてくれます。ぜひ読んでみてください。