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昔話だからこそ、聞く価値がある。書評「90歳の昔話ではない。 古今東西サッカークロニクル」(賀川浩)

   

2014年ブラジルワールドカップを取材した最年長ライターが日本人だったことを、どれだけの人がご存知だろうか。その名は、賀川浩。1974年、50歳の時に、ドイツワールドカップを自費で取材してから、40年。常に現場で取材し、日本にサッカーの魅力と、ワールドカップの魅力を伝えてきた方です。生き字引という言葉は、賀川さんのためにある言葉だと思います。

そんな賀川さんが、1930年の極東大会に始まり、1936年のベルリン五輪といった、もはや誰も知らない過去の名選手、過去の大会から、2014年のブラジルワールドカップまでを書いた文章をまとめたのが、本書「90歳の昔話ではない。 古今東西サッカークロニクル」です。

サッカーの魅力をずっと伝えてきた

本書には、小難しい戦術論や、「日本代表こうあるべき!」といったことは、全く書かれていません。本書に書かれているのは、賀川さんが感じた、サッカーの楽しさ、サッカーの魅力についてです。サッカーの魅力とは、選手達がフィールドで繰り出す素晴らしいプレーはもちろんなのですが、監督、コーチといったチームスタッフ、大会を運営するスタッフ、そして、サッカーを観る人々や、サッカーを観に行ったことで生まれた出会いも含めて、サッカーの魅力なのだということが、本書を読んでいるとよく理解できます。

賀川さんほどの知識と経験の持ち主であれば、もっとご意見番のような立場として、言いたいこともあるのだと思います。しかし、賀川さんは、あくまで最前線で自分の眼で見て、サッカーの魅力を伝えることにこだわってきました。ヨハン・クライフやケビン・キーガンといったレジェンドたちに英語で直接インタビューし、自身の考えをぶつけ、貴重な言葉を引き出しています。

歴史を知らないメディアとサポーター

だからこそ、本書の最後に、「日本代表と日本サッカー」という段落に書かれたこんな言葉は、非常に説得力があります。

ブラジルへ入る前、ダラス空港でアメリカの新聞を見た。その大会特集ページの日本の項に「中盤はいいが、前と後ろが弱い」とはっきり書かれていた。日本には戦前から68年メキシコオリンピック銅メダルチームの得点王・釜本邦茂までストライカーの系譜があり歴史があったのだが・・・。

JFAもJリーグも、もう一度ストライカーについて考え、先人を見つめる必要があるだろう。ブラジルのスタンドでもピッチでもプレスルームでも、サポーターも代表もメディアも”若さ”が目立った。

日本のサッカーは、Jリーグ開始後、急速に発展を遂げました。しかし、急速に発展を遂げたことで、過去の歴史や過去の名選手の事を知らない人が、増えてきたのも事実です。釜本邦茂や杉山隆一がいかに凄い選手だったか、ベッケンバウアーやオベラートの凄さを理解すれば、もっと違う観点でサッカーを観ることが出来るはずです。

日本サッカーの転換点と言われている今だからこそ、本書は多くのサッカーファンに読んでもらいたい1冊です。なぜなら、歴史は過去を振り返るために必要なのではなく、未来を考えるために必要なのですから。

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