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書評「圏外編集者」(都築響一)-「好きなことで、生きていく」は「楽なことで、生きていく」じゃない-

   

圏外編集者

珍スポット、ヒップホップ、ラブホテルなど。ほかのメディアとはまったく違う視点から、「なんだかわからないけど、気になってしょうがないもの」を追い続ける編集者、都築響一さん。著書「ヒップホップの詩人たち」は、現代を生きる人のリアルな叫び、言葉を1冊の本にまとめた傑作です。

「ヒップホップの詩人たち」のように、都築さんには誰もやりたがらない、自分が気になったもの、好きな事を本にしてきた印象があります。

YouTubeのCMで「好きなことで、生きていく」というコピーが使われていますが、自分の興味があること、自分の好きなことを仕事にしていきたい、生活していきたいと思う人もいると思います。自分な好きなことで生きていくということは、どういうことなのか。1つの道を示してくれているのが、都築さんのこれまでの歩みをまとめた本書「圏外編集者」です。

これをやらなければ、生きていけない

本書を読んでいると、都築さんは「好きなことで、生きている」ように思えます。自分が取り上げたいネタを調べ、徹底的に取材し、時には自分で写真も撮影して、1冊の本にまとめる。爆発的に売れる本ではないけれど、特定の読者の印象に残る。そんな本を数多く作ってきました。

しかし、本書を読んでいると、都築さんがやってきたことは、好きだから、という言葉だけで表現出来るようなものではないと感じました。どちらかと言うと、「これをやらなければ、生きていけない」からやる。本を作らなければ、生きていけない。生きていくために、人が取り上げないネタを取り上げる。そう感じました。

仕事とは。プロとは何か

「これをやらなければ、生きていけない」何かがあるというのが、仕事であり、プロとして呼ばれる人の第1歩だと、僕は思います。楽しいことがたくさんあるのに、もっと楽な仕事があっても、目の前の仕事や、自分に出来ることをとにかくやる。それがプロの第1歩だと思うのです。

昨今、スポーツアナリスト、トレーナー、といった方とお話をする機会が増えました。彼らは、「これをやらなければ、生きていけない」と本気で思っている人たちです。目の前にある仕事をこなすことが、未来を切り開くことにつながる。目の前がたとえ真っ暗でも、やり続けていれば、どこかにつながる。そんな想いをもって、仕事をしている人々です。本書を読み終えて思い出したのは、そんなプロフェッショナルな人々のことでした。

自分で選んだことだから「なんとかする」

「好きなことで、生きていく」ということは、決して「楽なことで、生きていく」ということではありません。苦し紛れでやったことも、どうにか七転八倒しながら形にして、乗り切っていく。とにかく乗り切る。なんとかする。都築さんも、そんなことの繰り返しています。大口を叩いても、金銭の不安が生じても、真剣に向かっていって、なんとかする。帳尻を合わせる。それが出来て、初めて「好きなことで、生きていく」ことが出来るんじゃないかと思うのです。

糸井重里さんは、きゃりーぱみゅぱみゅのMVのアートディレクションを手がけている増田セバスチャンさんとの対談「なんとかするちから」で、こんな事を語っています。

しょっちゅう
「あ、誰も乗ってこないかも」っていう
危機意識を感じながら、
「おっとっと」と苦し紛れでやったことが、
おもしろい次の展開につながっていったりする。
永ちゃんだって、
そういう苦し紛れも通り抜けて、
いろんなことをしてきているから、いまがある。
「このままじゃ古くなる」と危険を感じたら、
あらためて若いバンドを組んで、
全国の小さな会場をまわったりとか。
アメリカに行く前だって
「ほんとにだめかも」ってくらいまで
真剣に考えてますから。
真剣に向かっていって、なんとかする。
それはね、みんな永ちゃんズなの。やっぱり。

ほぼ日刊イトイ新聞「なんとかするちから」より

自分の興味があること、自分の好きなことを仕事にしていきたい、生活していきたいと思う人にとって、一番必要なスキルは、もしかしたら「なんとかするちから」なのかもしれません。自分で選んだ道だから、なんとかする。なんとかし続けていれば、どうにかなる。そんな事を教えてくれる1冊です。

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