書評「超一流になるのは才能か努力か?」

ステファン・カリー、リオネル・メッシ、クレイトン・カーショー、ノバク・ジョコビッチ、こうした超一流のアスリートは、持って生まれた才能があるから、人々を魅了するプレーが出来る。そう思っている人もいると思います。しかし、持って生まれた能力だけでは、人より優れた結果を出し続ける事は出来ません。努力し、才能に磨きをかけ、新たな能力の習得および向上し続けなければなりません。

本書の著者は、練習がどのように新たな能力の習得あるいは向上に結びつくかを解明することに研究生活を捧げ、特に練習をテコに、自らの能力を高め、世界トップクラスになった人々に注目して調査をすすめた。すると、「傑出したプレーヤー」を研究した結果、音楽、スポーツ、チェスなど分野を問わず、最も有効な練習法は例外なく同じ原理に基いているという結論に達したという。真に有効な練習方法は、いずれも基本的には同じ仕組みに基いているという。

新たな能力の取得、向上を促す練習法とはどのような練習法なのか。そして、超一流と普通の人を分けるポイントはどこにあるのか。本書「超一流になるのは才能か努力か?」は、世界トップクラスのプレーヤーの取組を調査し、トッププレイヤーになるために必要なポイントをまとめた1冊です。

新たな能力の習得や向上に結びつく「限界的練習」

著者によると、新たな能力の習得や向上に結びつく練習法は、「限界的練習」という方法です。人はある事を始めたら、ある程度まで出来るレベルにはすぐに達する。自転車を運転できるようになったり、スノーボードやスキーが滑れるようになるのと同じです。しかし、ロードレーサーのように走れるようになったり、プロのスノーボーダーのように、様々なトリックを決められるようになるには、改善にむけた練習を積み重ねる必要があります。

新たな能力の取得、向上を促すためには、自分が改善したいポイントを明確にして、練習しなげればありません。そして、練習は改善すべき点に集中して行います。長時間行えばよいというわけではありません。そして、練習はやるべきことが出来ているのか、出来ていない場合は改善すべき点のフィードバックを受け、さらに練習をする。地味ですが、この方法が最も効果的だというわけです。

そして、最も重要なのは、「コンフォートゾーン」、すなわち「居心地のいい場所」から飛び出すことが重要だと、本書には書かれています。新たな能力の取得、向上は決して楽な事ではありません。自分の限界と思える「居心地のいい場所」を少しだけ超えて、自分の限界を広げる努力を続けること。これが、「限界的練習」と言われる練習なのです。

「限界的練習」を長年にわたって続けたイチロー

本書に書かれていた「限界的練習」を読んで思い出したのは、イチローのこの言葉です。

今年メジャーリーグで3000というヒットを達成することができました。こういうことがあると、たくさんの人から褒めてもらえます。そして、イチローは人の2倍も3倍も頑張っていると言う人が結構います。でも、そんなことは全くありません」

「人の2倍とか3倍頑張ることってできないよね。みんなも頑張っているからわかると思うんだけど。頑張るとしたら自分の限界……自分の限界って自分で分かるよね。その時に自分の中でもう少しだけ頑張ってみる。ということを重ねていってほしいな、というふうに思います。

みんなが今、僕を目の前にして……日本のプロ野球で何年かやってアメリカに行って16年終わったんだけども、そういう目に見える結果を残したからそんなふうに言えるんじゃないかって思っているかもしれないけど、それは全く違っていて、僕もみんなと同じように野球少年だったし、ここに今日来てくれた関根選手もみんなと同じ。しかも彼は毎年、1回戦負けの選手でした。ね? みんなの方が成績がいいんだよ。現段階では。

彼もきっと人との比較ではなくて、自分の中でちょっとだけ頑張った。そのことを続けていくと、将来、思ってもいなかった自分になっている。と僕は思うし、実際、僕だってメジャーリーガーになれると思っていなかったし、アメリカで3000本打てるなんてことは全く想像が当時できなかったんだけど、今言ったように、自分の中でちょっとだけ頑張ってきた。

それを重ねてきたことで、今現在(の自分)になれたと実感しているので、今日はこの言葉をみんなに伝えたいと思います」

Number Web「「人と比較せず自分の中で少し頑張る」イチローが野球少年に送った人生訓。」より

このイチローの言葉は、本書に書かれている「限界的練習」を、イチローが長年にわたって積み重ねてきたという事を示しています。目的を持って、少しだけ自分の限界を超える。この「少しだけ超える」の積み重ねが、傑出したプレーヤーを生み出す、唯一の方法だというわけです。

では、「限界的練習」をどのようにして積み重ねていけばよいか。それは、本書をぜひ読んで欲しいと思います。「短期間でスキルを身につける方法」といった宣伝をよく見かけますが、スキルの向上に近道はありませんし、スキルを向上させ続けるには、継続した努力が必要です。本書はその事を教えてくれる1冊です。

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