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これから日本の人口が減ることを知らない日本人へ。書評「人口減少社会という希望 コミュニティ経済の生成と地球倫理」(広井良典)

      2014/11/06

熱風の特集「人口減少社会」を読んで、興味をもった1冊。日本は2004年に1億2,784万人でピークに達し、2005年から既に人口減少社会に入っており、2060年の人口は9,000万人を割って、8,674万人になると言われています。

日本という国は、明治維新からの約150年で人口が1億人近く増加しています。明治維新以降の富国強兵、敗戦以降の高度経済成長といった、「拡大、成長、上昇」のスパイラルを描いた日本とともに、人口も増え続けていきました。

ところが、出生率の低下に伴い、日本の人口は急激に減少すると言われています。本書に書かれていますが、鎌倉時代から日本の人口はゆるやかに上昇を続けており、これまで人口減少社会で暮らしたことがある日本人は、いません。

では、どうするべきなのか。本書「人口減少社会という希望 コミュニティ経済の生成と地球倫理」は、将来起こりうる日本社会の変化を踏まえた上で、今後の進むべき方向性を示した1冊です。

人口減少によってあるべき姿に戻る

本書の冒頭に興味深い指摘が書かれています。2011年の時点で日本の人口は1億2,780万人ですが、イギリス、フランス、イタリアの人口は6,000万人です。日本の総面積は38万平方kmですが、フランスは54万平方kmで日本の1.5倍近くあります。また、日本は山林面積が国土面積に占める割合が多く、人が住める面積が少ないと言われています。

つまり、日本の総面積から考えると、日本の人口は過剰であり、絶対に維持すべき水準であるとは言えないのです。日本の人口は急激に増えすぎたのであって、人口減少によって過密の是正や、空間的・時間的・精神的ゆとりや、環境・資源問題等々プラスの部分も大きいといえるというわけです。

社会保障と心の支え

ただし、人口減少に伴う問題を無視できるわけではありません。人口減少によって、社会保障などの「分配」をどうするのかは、早急に解決すべき課題です。しかし、高度経済成長の中で暮らしてきた社会保障を”受ける”世代は、「経済成長がすべての問題を解決してくれる」と考えていますが、これから社会保障を”負担する”世代は、「経済成長が問題を解決してくれることはない」と考えており、ここに世代間のギャップがあります。

社会保障を”負担する”世代は、高度経済経済成長の目標として目指していたアメリカで、医療保険がきちんと行き届いておらず病院に行けない人がいること、デトロイトのように、荒廃し破綻している街があることを知っています。そこで、社会保障を”負担する”世代は、地域コミュニティとの結びつきを強め、周辺社会の繋がりを活かして、社会保障の問題を解決しようとしているのです。

本書には、その具体的な例と考え方が書かれていますが、僕の友人で夫婦で働きに出たり、外出したりするときに、隣の老夫婦に子供の面倒をみてもらっている人がいるのですが、こうした地域の支えで問題を解決していくというのは、現代社会で生活していく上での知恵の一つと言えます。

個人的には、核家族は次第に少なくなってくると思います。高齢者は孤独死や介護の問題があり、若者は生活コストの増加が問題となってくると思います。そうすると、お互いの問題を解決するために、2世帯もしくは3世帯の同居が増えるのは、必然だと思います。

また、高度経済成長の時代には、「拡大、成長、上昇」することが、心の支えになっていました。しかし、高度経済成長が終わり、心の支えとなるものがなくなり、これからの将来への不安を抱く人々が増えています。精神科医の北山修さんの言葉を借りるならば、「悩む人が増えたのではなく、悩む人が行く所がなくなった」のが、現代社会なのです。

そんな社会で、今後パワースポットのような自然信仰や、宗教への依存や、スピリチュアルな考え方への依存が高まり、多様化すると言われています。本書では、今後の傾向についても詳しく書かれていますので、自己啓発やスピリチュアルな書籍を読みあさっている人(自分のことでもありますが)は、自分の状態を把握する意味でも読んでおくと良いと思います。

書かれていなかった移民の問題

本書に書かれているといいと思ったのが、移民の問題です。現在、西ヨーロッパでは移民の問題が大きく取り沙汰されています。本書では、今後の社会のモデルとして西ヨーロッパの社会の例をいくつか紹介していますが、こうしたヨーロッパの豊かな社会が、アフリカや東ヨーロッパからの移民によって支えられていることを、忘れてはいけないと思います。

人口増加社会から人口減少社会へと変化する過程で、移民の増加だけでなく、日本から海外への移民増加という問題が起こることも、予想されます。海外の成長市場に活躍の場を移すというのも、人口減少社会を生き抜くためのヒントになると思いますが、本書にはあまりその事は触れられていません。その事は、少し残念でした。

読んで損はない1冊

ただ、今後の日本社会で起こりうる変化を知る上で、本書に書かれている事を知っておいて、損はありません。すべての日本人が未体験である、人口減少社会をどう捉えて、どう楽しむか。本書には、そのヒントが数多く書かれています。オススメです。

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