語れること、語れないこと。書評「ニコニコ哲学 川上量生の胸のうち」

CakesというWebメディアで毎週更新を楽しみにしていた連載があります。それが、KADOKAWA・DWANGO会長の川上量生さんの連載「川上量生の胸のうち」です。川上さんの言葉はとても刺激的で、読む度に新たな発見があるので、毎週更新が楽しみでした。そんな、Cakesの連載を1冊の本にまとめたのが、本書「ニコニコ哲学 川上量生の胸のうち」です。

「なぜ、そう思うのか」

本書は、Cakesの連載を毎週読んでいた人、更新される度に繰り返し読んでいた人(すなわち僕のことです)、にとっては、基本的にはCakesで掲載された内容がそのまま掲載されているので、読み応えがないと感じる人もいるかもしれません。

ただ、1冊の本という形式で、改めて読みなおしてみて、分かった事もありました。それは、川上さんは、目の前の出来事に対して、徹底的に「なぜ、そう思うのか」「なぜ、そう考えるのか」という問いを、自らに、他人に、徹底的に繰り返してきたのだということです。

川上さんは、人から「こうなんだ」と言われることや、常識と言われることに対して、「なぜ、そう思うのか」、「なぜ、そう考えるのか」、徹底的に考えてきたことが、本書を読んでいると、よく分かります。インタビュアーを務めた、Cakesの加藤さんの様々な問いに対して、よどみなく答えられるのは、自分の頭で考え、自分なりの結論を都度出してきたからなのだと、読み終えて感じました。

「20000字インタビュー」を拒否した理由

面白かったのは、川上さんが書いたあとがきです。新しい情報が少ない本書の中で、数少ない書下ろしの箇所です。あとがきの中で川上さんは、加藤さんが「川上さんがどんな人生を送ってきたか」を語って欲しいという要望があり、それを拒否したということを書いています。川上さんが書いた拒否の理由と、その説明が面白いので、本書に興味をもった人は、ぜひ読んで欲しいと思います。

なぜ、加藤さんが川上さんに「人生を語って欲しい」と要望したかというと、川上さんの幼少期に、川上さんの思考法の原点となる何かがあるのではないかと、考えたからではないのだろうか。ロッキング・オンには「20000字インタビュー」という名物企画があります。「20000字インタビュー」は、ミュージシャンが自身の半生を語る企画です。「20000字インタビュー」は、「ミュージシャンの生き方が歌の原点」というロッキング・オンの考えがあるからです。ミュージシャンの歌の原点、それはコンプレックスです。ミュージシャンの歌は、どういうコンプレックスを抱えていて、どう自分をわかって欲しいか、突き詰めるとその事について歌っています。だから、「20000字インタビュー」をすれば、歌の原点が分かり、より作品を深く理解することが出来るというのです。

川上さんが「20000字インタビュー」を拒否した理由は本書に書かれていますが、加藤さんが川上さんに「人生を語って欲しい」と要望した理由は、川上さんが考えている理由とは違うと、僕は思いました。ただ、川上さんの「20000字インタビュー」は、本書になくてよかったと思います。僕は、いつか川上さんの「20000字インタビュー」を読める日を楽しみにしております。

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