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書評「ラグビー日本代表を変えた「心の鍛え方」」(荒木 香織)

   

本書「ラグビー日本代表を変えた「心の鍛え方」」は、ラグビー日本代表メンタルコーチとして、ワールドカップの快進撃を支えた荒木香織さんが、最新のスポーツ心理学から導き出した「メンタルの鍛え方」についてまとめた1冊です。五郎丸のあのポーズも、荒木さんと五郎丸が二人三脚で作り上げたものです。

本書を読み終えて、印象に残った点は2点あります。

心の問題を目に見えるようにすることで解決する

1点目は、心の問題を目に見えるようにすることで解決する、ということです。「緊張する」「不安だ」「失敗するかもしれない」といった心がかかえる問題は、何が問題なのか、ぼんやりとした状態のままかかえてしまうと、問題が大きくなってしまったり、問題をかかえたまま本番を迎えてしまって、予想通り失敗するという結果をまねいてしまいがちです。

本書では、「緊張する」「不安だ」といった問題をかかえている時、「なぜ緊張するのか」「なぜ不安なのか」と問いかけ、より問題を具体化させます。例えば、不安を感じる理由が、「ミスをするかもしれない」という内容だったら、「なぜミスをするかもしれないと感じるのか」「何をしたらミスなのか」と、さらに具体的にしていきます。そして、「キャッチミスをするかもしれない」という答えが返ってきたら、キャッチミスをしない方法を考える、もしくはキャッチミスをした後に切り替える方法を考える。こうして、一つ一つ問題を「目に見える」形に変換し、具体化することで、問題を解決していく。これは、仕事の問題解決法と同じだと思いました。

コントロール出来る事と、出来ない事を分ける

2つ目は、「コントロール出来る事と、出来ない事を分ける」という考え方です。例えば、サラリーマンの僕の立場で考えると、上司の評価は100%コントロール出来ません。嫌いな上司、自分の事を評価しない上司がいても、上司の事を変える事は出来ません。

しかし、自分の行動はコントロール出来ます。自分の空いている時間をかつようして本を1冊でも多く読む、英語を勉強する、新しい技術を身につける、など自分の行動を変えた結果、上司が「評価せざるを得ない」ようにする事は出来るかもしれません。なお、五郎丸のキックに至るまでのポーズも、「行動をコントロール」することで、より精度の高いパフォーマンスを実現させようとして生まれたものなのです。

本書では、自分がコントロール出来る事、出来ない事を分けて、自分がコントロール出来る事に注力するべきだと書かれています。僕は、自分がコントロール出来る事は、自分自身の行動だと理解しました。自分が何をするかはコントロール出来ます。しかし、人の行動は100%コントロールは出来ません。そして、行動には自分の心の様が現れます。自分の心をコントロールしようと思ったら、まずは自分の行動をコントロールする。その事を、本書を通じて学びました。

本書を読み終えて感じたのは、こうしたメンタルコーチはトップアスリートになればなるほど必要なのではないか、ということです。最近、サッカー日本代表の選手から「メンタルが大切」というような言葉を聞きます。しかし、本書を読んでいると、メンタルの問題は、専門的な知識がなければ、トップアスリートのように特殊な環境におかれる事の多い人を、正しく問題解決へと導くのは難しいのではないのでしょうか。

「メンタルが大切」と語っている選手は、荒木さんのように専門的なメンタルコーチのアドバイスは受けているのでしょうか。メンタルコーチのアドバイスを受けて語っているのならよいのですが、メンタルコーチのアドバイスを受けずに、自らの経験や勘だけで「メンタルが大切」と語っているのだとしたら、それは根拠なき根性論と同じだと思うのです。たとえば、「勝負所で強い」という選手やチームがいるとして、その強さの要因を「メンタルが強いから」と捉えるのではなく、より具体化していくには、メンタルコーチの手助けが必要なのではないのでしょうか。

トップアスリートであっても、心が特別強いわけではありません。心の解決方法を学べるだけでなく、今後のスポーツにおける心の問題をいかに解決していくか、考えさせられる1冊です。

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