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技術も、心の余裕も、すべてのベースは身体にある。

   

昨日、ラグビートップリーグのサントリーサンゴリアス対コカコーラレッドスパークスの試合を観に行きました。観に行ったきっかけは、コカコーラ・レッドスパークスのチーフアナリストを務めている船戸さんと、なぜかFacebookで友達になったのがきっかけです。

船戸さんとは、お互い読んでいる本や、見ているWebサイトも似ているので、お会いしたことはないのですが、Facebookを通じてメッセージを交換するようになりました。いつかは忘れましたが、船戸さんからこの試合を観に来るようにすすめられ、トップリーグは観に行った事がなかったので、観に行く事にしました。

なお、サントリーサンゴリアスのアナリストを務めている須藤さんも、日本スポーツアナリスト協会の会員向けのイベントでお会いしたことがあります。

僕はラグビーは素人なので、ルールやプレーの事を詳しく知っている人と観に行った方が楽しめると思ったので、前の週に早明戦を観に行くほどのラグビーファンである父親と、2人で観に行きました。(せっかくなので、チケットは自分で買いました。たまに「招待します」と言って頂くこともありますが、僕はチケットは自分で買って観に行きます。言いたいことも言いたいですし。)

明らかだった両チームの差

試合開始前のトップリーグの順位を見ると、サントリーサンゴリアスは2位、コカコーラレッドスパークスは14位。サントリーサンゴリアスが勝つのだろうなと思って観に行ったのですが、試合開始前のウオーミングアップを観て、僕はもう勝敗が分かったような気分になりました。サントリーサンゴリアスのウオーミングアップの方が、動きの強度が高く、スピードも早く、コンタクトも強く、動きも統制がとれていたからです。本番さながらの「バチン」という音が聞こえてくるほどのウオーミングアップを観ているだけで、両チームの差は明らかでした。

両チームの選手の体格も、明らかに差がありました。特にサントリーサンゴリアスのFWの選手は、コカコーラレッドスパークスの選手に比べて、明らかに筋肉で身体が盛り上がっていて、身長も高く、体重も多く、それでいて素早く動く事が出来ます。ラグビーは身体と身体をぶつけ合うスポーツです。パワー、スピード、そして身長、体重といった身体自体がもつ要素が、勝敗に大きく影響するスポーツです。

時間が経つにつれて、サントリーサンゴリアスの優位性はどんどん明らかになっていきました。試合開始後にコカコーラレッドスパークスが連続トライで12点を先制しましたが、サントリーサンゴリアスは全く慌てません。モール、スクラムで相手を押し込み、相手にジワジワとダメージを与え続けます。相手の守備者が集まるスペースでも、身体を当て、相手を押し込み、ジワジワと相手の守備を壊していきます。特に、畠山、真壁、ヘンドリック・ツイといった選手は、日本代表に選ばれる選手だけあって、密集時の相手の守備をこじ開ける力強い動きが素晴らしかったです。

サントリーサンゴリアスは焦らずに前半のうちに逆転。後半はほとんどの時間をコカコーラレッドスパークス陣内でゲームが行われました。コカコーラレッドスパークスは足が止まり、相手の素早く、力強い守備の前に、ミスを連発。自陣を出たくても出れません。ハーフコートゲームになってしまいました。

昨日の試合は、僕がコカコーラレッドスパークスのアナリストだったら、頭をかかえた気がします。当然試合を振り返り、映像や数値を分析すれば、どんな場面でどちらが優位だったか、どんなミスが起きたかわかります。ただ、解決方法を考えろと言ったら、「もっと身体を大きくしよう」「もっとトレーニングして、スピードとパワーをつけよう」という解決策しか提案出来ない気がしました。細かい戦術の問題で解決できない差が、両チームの間にありました。

この試合を観ながら思い出したのは、ラグビー日本代表GMの岩渕健輔さんが語っていた「世界と戦えない「武器」はいらない。ラグビー界の技術・組織信仰を問う。」という記事です。この記事は公開時大きな反響を呼びました。日本のラグビーおよびスポーツは技術に注力しがちですが、技術を発揮する前に、相手にパワーで圧倒され、スタミナ切れをおこして負けていると語ったのです。

日本ラグビーの生命線が、組織的なプレーにあることは指摘するまでもありません。ところがインテンシティー(強度)の高いプレーが連続すると、目指していたはずの組織的なプレーが展開できなくなってしまう。個々の選手はチームに尽くそうと固く心に誓っていたとしても、相手にパワーで圧倒され、スタミナ切れを起こすからです。語弊を恐れず述べれば、日本のアドバンテージとされていた要素は、世界の舞台では武器として通用してこなかったのが実情なのです。
(中略)
直接の原因は、基礎的な身体能力の不足と「ゲームフィットネス(強いプレッシャーにさらされた状況下における体力)」の欠如となりますが、これは一種の「結果」に過ぎません。真の要因は閉ざされた思考様式、つまり「ボール扱いの巧みさ」や「組織的なプレー」が、世界と戦う武器になるはずだと思い込んできたこと自体にあるからです。

岩渕さんは、すさまじい肉弾戦のなかで日本のスタイルを発揮するためのベースがないと、競合相手に勝つことは出来ないし、そもそも勝負にならない。そう考え、実行しました。岩渕さんの考えが

日本独自の理論を援用して、他の国々と差別化を図っていこうとする気持ちはよくわかります。いわゆる「関節の使い方」や「筋肉の使い方」、「ナンバ走り」のようなランニングのフォームに至るまで、海外の関係者が驚くほど専門的な理論が脚光を浴びている所以でしょう。また日本の古武術や相撲の技術論に、感服すべきものが多数あるのも事実です。

とはいえ、ラグビーのような異なる競技に理論を取り入れようとするならば、科学的、合理的なトレーニング理論と比較した上で、有効性を証明しなければなりません。ところがラグビー界では、そのような検証がなされずにきました。こうして日本はトレーニング理論の分野においても、世界の流れと乖離してしまったのです。

私が代表ヘッドコーチのエディー・ジョーンズと最初に取り組んだのは、選手を徹底的に鍛え直し、身体能力を限界まで上げ切ることでした。基礎体力やスタミナの点で世界の強豪に対抗できなければ、自分たちの持ち味を発揮する以前に、勝敗が決してしまうからです。

当初はトレーニングの効果を疑問視する声も聞かれましたが、20代後半を過ぎたベテラン選手でも、運動能力が予想以上に改善されたことはデータにもはっきりと現れています。近年の強化試合で、日本代表が最後まで粘り強い戦いを展開できるようになったのは、選手たちが真のアスリートへと変貌したことも少なからず寄与しています。

むしろ本当に大変なのは、ここからになります。いかにアスリートとしての能力が上がっても、単純な骨格の大きさで上回る相手に同じ方法論で勝負を挑んだりすれば、粉砕されることは目に見えている。身体能力を上げただけで世界に対抗できると考えるのは、ある意味では「ボール扱いの巧みさ」や「組織的なプレー」が武器になると思い込む以上に危険であり、ナイーブだと言わざるを得ません。

そこで次に求められてくるものこそ日本のスタイル、すさまじい肉弾戦の中で違いを作り出していくための、独自のアイディアと能力になるのです。

サントリーサンゴリアスとコカコーラレッドスパークスの試合を観ながら、僕は日本のスポーツチームが負けるパターンを思い出しました。日本のスポーツチームが負けるパターンは、岩渕さんが語っているとおり、相手のパワーやスピードの前にスタミナを奪われ、強みを発揮する前に負ける。このパターンです。一方、相手のパワーやスピードにある程度対抗できている時は、技術やグループ戦術で優位に立ち、勝利を掴む事が出来ています。

身体の力が勝敗を分けているBリーグ

2016年9月に開幕したBリーグを観ていても、身体の力の差が、勝敗を分けていると感じます。Bリーグの中でも、川崎、東京、三河、栃木、千葉、三遠といったチームは、相手の身体の力が残っている1Qではリードされることもあります。しかし、ディフェンス、オフェンス時の身体のぶつかり合いなど、ひとつひとつ強度の高いプレーを積み重ねている内に、相手のダメージが蓄積してきて動けなくなり、技の精度が落ちた3Q頃に逆転し、試合をひっくり返しているのをよく観ます。僕は勝敗の要因を技術の差ではなく、身体の力の差なのではないかと感じていました。

そんな僕の仮説を裏づけるように、シーホース三河の金丸晃輔は、12月2日、3日と行われた栃木ブレックスとの試合の後に、こんなコメントをしています。

「ボールを持っていないところでも、必要以上に体を当ててくるんですよ。コンタクトされる分、体力の消耗も激しい。ディフェンスがしっかりしているチームは、そういうことをやってきますね。去年のファイナルだって東芝さん(川崎ブレイブサンダース)にやられて、最後の方でちょっと体力を奪われてしまい、本来のプレイができなかった。」
昨季苦しんだ故障も回復し、Bリーグ屈指の点取り屋として、持ち味を発揮している金丸」より

僕はトップリーグを観終わり、一つの仮説が浮かんでいます。それは、勝負強いチームとは、精神力が強いチームではなく、身体が強いチームなのではないかという事です。身体が強いから、相手が疲れるまで待つことが出来るし、技も発揮できる。身体の強さで相手より優位に立てるので、心も余裕がある。だから、最後の最後で相手を上回り、勝つことが出来る。そう思ったのです。

青木功さんは、「心技体」ではなく、本当は「体技心」だと語っています。野球の投手の球速は、身体がレベルアップしなければ実現できません。大谷翔平が身体を大きくしたことによって、全力を出さなくても160km/hを出せるようになったと語っていましたが、体がレベルアップすることで表現できる技もあるということを、大谷は証明してくれました。バットのスイングスピード、ボールの飛距離を伸ばそうとしたら、スイングを改善するより、身体を強くするトレーニングをしたほうが効果的です。

日本のスポーツは、「心技体」のうち、「体」を軽視しがちです。どうしても、技や心を追求していくと、体の事を忘れてしまいます。でも、技を表現し、心を司るのは身体です。データにばかり注力していると、どうしても表現する身体の事を忘れてしまいます。改めて「身体」の大切さを感じた、初めてのトップリーグ観戦でした。

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