蘇った苦い過去。書評「自分思考」(山口絵理子)

自分思考

「裸でも生きる」シリーズで、自らの半生とマザーハウスの発展の過程を書籍にまとめた山口絵理子さんが、自身の考え方についてまとめたエッセイが本書「自分思考」です。「裸でも生きる」に描かれている、辛い現実に立ち向かっていく著者の姿は「自分思考」には描かれていません。本書には、武器や鎧を脱いだというたとえはおかしいかもしれませんが、等身大の女性の言葉が綴られています。

事業計画書より1冊のスケッチブック

印象に残ったのは「事業計画書よりスケッチブック」という言葉です。事業を始めるにあたって、確かに事業計画は重要です。しかし、著者は事業計画より、自分が何を実現したいのかというビジョンの方が重要だといいます。

著者は、マザーハウスを始める前に「百貨店でマザーハウスの商品を販売したい」といったビジョンを、バッグのデザインを書きとめていたスケッチブックに書いていたのだそうです。現在、マザーハウスは小田急新宿店と池袋東武店に店舗を構えており、ビジョンとして描いたことを実現しています。

ビジョンを描けなかった過去の自分

ビジョンを描く、という点について、僕自身苦い過去があります。4年前、新規事業の立ち上げのために、中国人のメンバーと会社のお金で別会社を設立したのですが、結果的には失敗してしまいました。

うまくいかなかった理由は簡単です。メンバーと事業計画書は念入りに作っていましたが、会社を作って実現したいビジョンが共有されてなかった(というかビジョン自体なかった)ので、結局何のために作った会社か誰もわからず、半年で本社に吸収されることになりました。

今考えると、明確なビジョンがないなら、会社を成り立たせるために、どんな仕事でも請け負うべきだったのかもしれない。そんな事を考えたりすることがあります。事業計画書が不要だと言うつもりはありません。しかし、ビジョンがなければ、作った事業計画書も意味がない。その事を身をもって痛感しました。

本書を読み終えて蘇ったのは、なぜか自分の苦い過去でした。
苦い過去を思い出させてくれるのも、読書のメリットなのではないかと改めて実感しました。

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