普通の会社から生まれた、特別なサービスの秘密。書評「新幹線お掃除の天使たち 「世界一の現場力」はどう生まれたか?」(遠藤 功)

先日、東京駅で新幹線に乗ろうと思った時、凄く驚いたことがあります。

新幹線が到着する際、車内清掃を担当する人たちが新幹線に向かってお辞儀をしているところを、外国人観光客と思われる人々がデジカメで撮影していたのです。

撮影しているのは、1人だけじゃありません。撮影している人の中には、中国人と思われる人もいれば、欧米の人もいました。そして、外国人観光客は、新幹線を到着するときだけでなく、清掃するときも撮影していました。

たぶん、車内清掃担当者の姿に、外国人がイメージする、日本人の「あるべき姿」のようなものがあるのだと思います。

新幹線の車内清掃を担当しているのは、車内清掃業務を担当するテッセイ(旧称:鉄道整備株式会社。現:JR東日本 テクノハート)という会社の方々です。社員の方もいれば、パートの方もいます。新幹線の清掃にかけられる時間は、およそ7分間。7分間で社内をピカピカに磨き上げるその技術や作業ぶりは、テレビや新聞などでも取り上げられ、話題になりました。

新幹線を清掃する人々は、どんな人達なのか。そして、どうやって外国人観光客が撮影したくなるようなチームを作り上げたのか。その事を詳しくまとめたのが、本書「新幹線お掃除の天使たち – 「世界一の現場力」はどう生まれたか?」です。

「清掃の会社」から「おもてなしの会社」に

新幹線の車内清掃の従業員は、最初から素晴らしい仕事をしていたわけではありませんでした。

言われたことはキッチリやるけれど、それ以上はやらない。どこにでもある、普通の清掃業者でした。しかし、2005年に赴任した矢部輝夫さんを中心に、働きやすい環境を整え、少しづつサービスの改善をしていった結果、社員の働き方が変わり、「清掃の会社」は、「おもてなしの会社」へと進化したのです。

「清掃の会社」が「おもてなしの会社」に変化する過程を読んでみても、特別なことは何一つ実行していません。当たり前のことを、忠実に実行していただけです。お客様の満足度を高めるにはどうしたらよいか。お客様の満足度を高めるには、まず従業員の満足度を高める必要がある。そのために、何をすべきか。たぶん、書籍で紹介されていること以上に、細かく、細かく、現場では実行していったのだと思います。

しつこく、しつこく、やり続ける

人の考えは、1回言っただけでは変わりません。

「しつこい」「もうわかってる」と言われるくらい伝えて、初めて人に心から理解してもらえたと思ったほうがいいです。ただ、言った人は、「しつこい」「もうわかってる」と言われるのは、好きではありません。特に神経質な人であれば、伝えた時に相手が少し嫌な顔をしただけで、自身が主張したことが例え正しいことであっても、不安に思うものです。

不安に思って、主張を変えてしまったことで、伝えなければならないメッセージが、きちんと伝わらず、変えなければいけないことが変わらずに、失敗に終わった仕事や改革出来なかったサービスや企業は山ほどあります。

成功する仕事と失敗する仕事を分ける境目は、実は「言った内容」より「理解されるくらい伝える努力をしたか」だったりします。「テッセイ」は特別な会社ではありません。ただ、他の会社より、自分たちが正しいと信じるサービスを実行するための努力をしたからこそ、「特別なサービス」を生み出すことが出来たのです。

自分の仕事も変えていける

テッセイの変化を追っていると、自分たちの仕事についても考えさせられます。自分の仕事も、考え方・やり方次第でテッセイのように変えられるんじゃないか。そんな気がしてきます。

本書を読んで、テッセイのサービスを羨むのではなく、自分の仕事をテッセイのように、輝かせる。そうするためには、どうしたらよいのか。そういう視点で読むと、非常に読み応えのある1冊だと思います。

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