”化粧”とは何かを伝えるCM「新しい私になって」(資生堂)

2015/02/22

特定の商品の宣伝をするのではなく、企業自体を宣伝する広告を「企業広告」と言います。今回ご紹介する資生堂のCM「新しい私になって」は、企業広告のひとつとして2006年に作られました。このCMは、当時放送されたスペシャルドラマ「メッセージ 〜伝説のCMディレクター 杉山登志 魂で撮った一瞬の美〜」でのみ放送されたCMだったのですが、映像のクオリティの高さが話題になった作品です。

モデルの動きと歌ですべてを伝える

このCMの大きな特徴は、歌とモデルの動きがシンクロしているところです。モデルの動きにあわせて歌がかぶさり、歌によってモデルの心情を伝えることで、より映像に感情移入できるような作品になっています。
このCMのディレクターは中島信也さん。日清食品カップヌードル「シュワルツェネッガー」編を撮ったことでも知られるディレクターですが、今回のCMでは歌の作詞も手がけています。ディレクターが歌詞を手がけることはめったにありませんが、映像と歌詞と曲のタイミングがきちんとあわないと成立しない作品なので、ディレクターが作詞をしたことで、映像と音楽の協調性が高まり、CMの世界観をより強固なものにしていると思います。

歌は熊本杏里さん。撮影は上田義彦さん。サントリーの烏龍茶のCMや無印良品の広告写真を手がける方で、端正で絵画調の写真で高い評価を受けています。美術も白っぽい色で統一されていて、柔らかい雰囲気でモデルの動きに目がいくようになっています。モデルはマイコさん。後年「龍馬伝」にも出演することになりますが、なんとこの作品がデビュー作だったそうです。デビュー作とは思えないほど、堂々とした演技に引き込まれます。

なお、中島信也さんは「クリエイターズ・トーク」で、このCMについて以下のように語っています。
(以下抜粋)

  • 資生堂はプランナーがいない。ディレクターがCM全体を取り仕切る
  • CM冒頭に流れる、「本日、私はフラれました」というフレーズがまず思いついた
  • 「顔を化粧することで、心が癒される効果がある」ということを知っていたので、そのことをCMに盛り込んだ
  • モデルはマイコ。当時スカウトされたばかりでこれがデビュー作だった。起用したポイントは「悲しい顔」がうまかったから
  • 絵コンテにはフラれたシーンや母親との思い出のシーンがあったが、カットした
  • 「顔を洗う」「化粧水をつける」「元気になる」という行動を丁寧に追うCMをつくった
  • 彼女の行動ですべて理解してもらえると思った


SHISEIDO Corporate Advertising 2006 投稿者 masanaotanaka

伝説のCMディレクター、杉山登志さんの遺言

最後にこのCMが放送されたドラマで取り上げられた、杉山登志さんの遺言を紹介します。杉山登志さんは、資生堂の広告などを手がけ、日本初のカンヌ国際広告映画祭で銀賞を受賞後、キャリアの絶頂にあった1973年にクビを吊って、37歳の若さで亡くなります。ちなみに杉山登志さんについて、中島信也さんは以下のように語っています。

僕にとっての神様は川崎徹さんですが、
神様の上に輝いている神様が、あの杉山登志さんです。
そして、杉山登志さんが最も輝いていたブランド「SHISEIDO」。
映像における「SHISEIDO」のイメージは、
ほぼ100%杉山さんによって確立されたんじゃないかなって思うくらいです。

後のディレクターに大きな影響を与えた、杉山登志さんが残した遺言を紹介します。

リッチでないのに
リッチな世界などわかりません
ハッピーでないのに
ハッピーな世界などえがけません
「夢」がないのに
「夢」をうることなどは・・・とても
嘘をついてもばれるものです

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中島信也さんの作品について、以下の様な記事を書いています。
存在自体がCMだった。日清食品カップヌードル「シュワルツェネッガー」編

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中島信也さんがこのCMについて語った言葉が掲載されている「クリエイターズ・トーク」の内容がまとめられた書籍はこちら。

この作品を撮影した上田義彦さんがモデル・桐島かれんさんとの間にできた家族の写真をまとめた写真集はこちら。

熊本杏里さんが歌っている「新しい私になって」はこちらでフルバージョンを聴くことができます。

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