ブランドはユーザーとの約束から始まる。書評「スノーピーク「好きなことだけ! 」を仕事にする経営」

「人生に野遊びを」。スノーピークのWebサイトのトップページには、必ずこのメッセージが掲載されています。スノーピークとは、テント、コンロ、ランプ、シェラフなど、キャンプの時に使用するアウトドア用品を販売するメーカーです。スノーピークのファンは「スノーピーカー」と呼ばれているくらい、アウトドア好きには熱い支持を受けているメーカーです。

スノーピークの本社は、新潟県燕三条にあります。地方のアウトドアメーカーが、いかにして熱狂的な支持を集めるブランドとなりえたのか。本書「スノーピーク「好きなことだけ! 」を仕事にする経営」は、スノーピークCEOの山井太さんが、スノーピークの経営哲学、実行してきた施策を通じて、スノーピークというブランドをいかにして構築したのかを書いた1冊です。

企業理念がブランド構築の第一歩

スノーピークは、企業理念「スノーピークウェイ」としてこんなメッセージを掲げています。

私達スノーピークは、一人一人の個性が最も重要であると自覚し、
同じ目標を共有する真の信頼で力を合わせ、
自然指向のライフスタイルを提案し実現するリーディングカンパニーをつくり上げよう。

私達は、常に変化し、革新を起こし、時代の流れを変えていきます。

私達は自らもユーザーであるという立場で考え、
お互いが感動できるモノやサービスを提供します。

私達は、私達に関わる全てのモノに良い影響を与えます。

山井さんは「企業理念がなければ、なんのために働くのかわからない」と考え、この企業理念を作りました。この企業理念は、スノーピークという会社が掲げたユーザーに対する約束であり、自分たちとの約束でもあります。この企業理念を実現させようと努力してきたことが、今のスノーピークのブランドを作っているのだと、本書を読んでいるとよく分かります。

従業員が第一のユーザー

例えば、企業理念に「自らもユーザーである」という言葉があります。スノーピークは、この言葉を単なるお題目ではなく、実行してきました。社長の山井さんは、年間50日はキャンプをする、根っからのアウトドア好きです。社員の中には、本社に隣接するキャンプ場で宿泊してから、出社する人もいます。だから、スノーピークはまず「自分たちが欲しい商品」を作ることを意識しています。自分たちが満足する商品であれば、例え市場に出回っていなくても、自分と同じようなユーザーが、必ず買ってくれる。スノーピークはマーケティングをしないそうですが、自分たちが欲しい商品を徹底的に突き詰めて作ることで、マーケティングを不要としているのです。

ユーザーととことん向き合う

そんな、スノーピークが大切にしているのが、ユーザーとの対話です。毎年スノーピークは、「スノーピークウェイ」というイベントを開催し、顧客とスノーピークの社員が一緒にキャンプを楽しみ、イベントの中で、スノーピークの魅力、目指す方向を直接伝えているそうです。これは、毎回株主総会をやっているものだと言ったら、分かりやすいでしょうか。労力がかかるイベントですが、スノーピークはこのイベントの名前に、企業理念と同じ名前をつけるほど、重視しています。

なぜ、「スノーピークウェイ」を重視するのか。それは、スノーピークがユーザーをとことん大切にしているからです。大切だからこそ、自分たちの考えを、繰り返し繰り返し説き、正しいかどうかを、実際に声を吸い上げて確認する。繰り返しになりますが、スノーピークはマーケティングはしないそうです。ですが、これは立派なマーケティングです。もしかしたら、本当にすべきマーケティングは、スノーピークが実行していることなのかもしれないと思います。

アウトドアメーカーの経営が注目される理由

スノーピーク以外にも、パタゴニア、モンベル、バートンといった、アウトドア用品メーカーの経営が注目されています。アウトドア用品メーカーの経営が注目されるのは、所属する社員がいきいきと働いているからです。なぜ、いきいきと働けるのか。それは、社員が第一のユーザーだからなんだと思います。自分たちがユーザーだからこそ、自分たちが販売している商品を大切にし、なおかつ自分たちの市場を大切しようと努力する。それが、いきいきとした仕事ぶりに繋がっているのだと思います。好きなことを仕事にしたほうがよいという人がいますが、自分が好きなことのために、中途半端なことをする人は少ないはずだという考えがあるからでしょう。

この他にも、本書で紹介されているスノーピークの取り組みには、参考になる点がたくさんありました。図書館で借りた書籍ですが、これは買って損はないと思いました。手元に置いておきたい書籍が、また1冊増えました。

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