書評「サッカークリニック2014年3月号-「ポゼッション」できていますか?」

サッカークリニック2014年3月号の特集は、「「ポゼッション」できていますか?」。サッカーにおけるポゼッションとは、自分たちのチームがボールを保持することを意味します。ポゼッション率とは、試合時間のなかでどのくらいボールを保持していたかという割合を示したものです。

FCバルセロナのサッカーが結果を残したことで、ポゼッション率を高めようとするチームが増えました。しかし、高まったポゼッション率が、勝率を高めてくれたかというと、そうでもないような気がします。

ポゼッション率が高いチームの監督や選手から、試合に負けた時に「負けたけど内容は悪くなかった」といった言葉を聞くことがあります。しかし、サッカーはゴールを相手より多く決めたチームが勝つスポーツです。ポゼッション率がいくら高くても、勝てなくては意味がありません。

今回のサッカークリニックの特集は、改めて「何のためのポゼッションなのか」を問いかけ、「試合に勝つためのポゼッション」とはどういうことなのかを、様々な立場の指導者の意見をもとに検証しています。「「ポゼッション」できていますか?」特集でインタビューに答えているのは、以下の6名です。

特集1:吉武博文監督(U-15日本代表)
特集2:カルロ・アンチェロッティ監督(レアル・マドリー)
特集3:ジョルディ・ロジェール監督-スペイン人指導者の考え方-
特集4:源平貴久監督(専修大学)-大学年代の指導法-
特集5:岩谷篤人総監督(セゾンフットボールクラブ)-日本代表選手を育てた指導者に聞く-
特集6:ウド・ヘルファー(ドイツサッカー協会公認S級ライセンス保持者)-ドイツ人指導者に聞く-

ポゼッションする目的

何のためにポゼッションするのか。そのことを分かりやすく解説してくれたのは、U-15日本代表監督の吉武博文さんです。吉武さんは、ポゼッションの目的として以下の3点を挙げています。

  1. カウンターを仕掛けるため
  2. 無失点に抑えるため
  3. リズムを変えるための布石

「カウンターを仕掛けるため」に、ポゼッションするとは逆説的に聞こえますが、吉武さんが意図するカウンターとは、ゴールに近いエリアでボールを奪って攻撃を仕掛けることを指します。ゴールに近い位置でボールを奪うためには、相手の陣形を崩し、簡単には攻められなくするとともに、自分たちは良い守備の形を作っておく必要があります。

良い守備の形を作るためには、攻撃の時の自分たちの形を崩さないことが重要です。自分たちの形を崩さずに攻めるための手段として、ボールを保持しながら、攻撃を仕掛ける。つまり、ポゼッションが重要になるのです。だから、ポゼッション率を上げると、相手を無失点におさえる可能性も高まるというわけです。

「リズムを変えるための布石」とは、ポゼッションによって一定のリズムをキープし、急にスピードやテンポを変えることで相手を崩して、得点を上げるために行うポゼッションの事です。FCバルセロナではメッシやイニエスタが、リズムを変える役割を果たしています。つまり、ポゼッションを高めることで、選手の個性を活かした攻撃もより効果を発揮するというわけです。

1つ付け加えるならば、ポゼッションする目的としては、「攻撃しながら休む」ことも挙げられます。守備をするということは、相手にあわせて自分たちが動くことが多く、受け身の動きが多くなります。同じ動きでも、能動的に動いたほうが、人は疲れません。だから、ポゼッションをすることで、スタミナの消耗を防ぐことが出来るのです。

ポゼッションするための技術

では、ポゼッションするためにはどういう技術が必要なのか。今回の特集とは別の記事ですが、「図解で知るスペインサッカーの流儀」に細かく書かれていたので、紹介したいと思います。

パスの精度

「パスの精度」とは「パスの方向」と「球質」を合わせたもので、「受けての足元に出すのがよいか、進行方向にだすのがよいか」や、「グラウンダーのパスがよいか、浮き球のパスがよいか」を判断し、実行することを指します。

パスの強さと飛距離の追求

相手の素早い守備をかわすためにも、ボールを速く移動させることが重要です。また、球質と強さを維持しながら、パスの飛距離を伸ばすことも重要です。パスの飛距離を伸ばすことで、選手間の距離を広げられるため、相手の守備を分散させ、突破しやすくなります。

ポジショニングと適切なボールコントロール

円滑にポゼッションを行うには、適切なポジショニングと効果的にスペースを利用することが必要です。自分のポジションを把握した上で、どこでパスを受けるのか、どう相手を外してパスを受けるのか、都度判断した上で、相手を見て、適切な動きを行う必要があります。

スペインでは「コントロール・オリエンタード」という言葉を使いますが、受けたボールをどうコントロールするのかも重要です。パスを繋ぐだけでなく、ボールを運ぶドリブルを組み合わせることで、優位な状況を作り出すことが出来ます。

パスの方向とタッチ数の変化

パスの方向を工夫することで、相手の守備をかわすことが出来ます。横パスだけでなく縦パスを組み合わせることで、相手に的を絞らせないようにすることが出来ます。また、タッチ数を2タッチや1タッチと変化させることで、ボールをつなぐテンポを変え、相手に的を絞らせないようにすることが出来ます。

ゴールから逆算して、ポゼッションのトレーニングを行う

今回の特集で改めて実感したのは、繰り返しになりますが、ポゼッションは試合に勝つために行うのだということです。ただボールを保持するのではなく、よい攻撃、よい守備を行うために、ボールをどう保持するのか。どうゴールを奪うために、ボールをどう保持するのか。改めて頭に入れておく必要があることを実感しました。

したがって、ポゼッションを高めるために、初めにDFラインからのビルドアップを練習することがありますが、ポゼッションは、「ゴールを奪う」「試合に勝つ」ための手段だと理解してもらうには、まずは相手ゴール前でいかに相手を崩すかをトレーニングしたほうが、よいのではないかと感じました。

そう考えると、川崎フロンターレの風間監督が、就任後にゴール前の崩しのトレーニングを徹底的に行なったのは、「どのようにゴールを奪うのか」という目的を意識させ、ゴールを奪うためにどういうことをしたらよいのかを、逆算して理解させるためだったのかもしれないと、この特集を読んでいて感じました。自分自身がサッカーに関して新たな見方ができるようになればなるほど、風間監督の考えには、驚かされます。

ただ、学んだ考え方をどうトレーニングに落としこんでいくのか。それがまた難しかったりします。自分の所属しているチームでは、中々練習の時間がとれません。時間がないなかで、どうやって考えを伝え、実践するか。読み終えて、現在の自分のチームの課題についても、深く考えさせられた1冊です。

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