プロスポーツクラブのメディア化と日本のプロスポーツクラブの課題

city-matchday

sport techie」というWebサイトを読んで衝撃を受けて、Twitterでも紹介したのだが、改めて自分のブログでも書いておこうと思います。

マンチェスター・シティが提供している「CityMatchday」というアプリが本当に凄い。どういうアプリかというと、リアルタイムでの試合のラジオ中継だけでなく、試合後に試合や選手個人個人のスタッツや、選手、監督のインタビュー映像もみれるのだ。試合当日はエディハドスタジアムだけで観られる映像もあったりするらしい。本当にすぐれものです。

特に凄いのが、アプリが提供している情報量です。選手個人個人のスタッツも細かくて、例えばダビド・シルバのパス成功率も確認できたりする。レフェリーの判定に対するアンケートをアプリで集計して、掲載しているのは、日本では出来ないだろうなぁと思ったりもするんだけど、目の前の試合を様々な方法で楽しみ、その楽しみを共有する仕掛けが、至る所に散りばめられているアプリなのです。

マンチェスター・シティが凄いのは、「CityMatchday」で提供する映像を、エディハドスタジアムで直接編集していることです。エディハドスタジアム内にスタジオ顔負けの編集室を設け、スタジアムで編集した映像を、タイムラグなしでアプリやWebサイトやソーシャルメディアにアップしている。他のプレミアリーグのチームが実践しているかは知らないが、フットボールクラブが映像コンテンツを重要視していることの一例だと思います。

マンチェスター・シティの事例に衝撃を受けた理由

僕がマンチェスター・シティの事例に衝撃を受けた理由は、2つあります。

1つ目は、プロスポーツビジネスにおいて、アプリの重要度が想像以上に高まってきているということです。

NewsPicksに掲載されていた「フェイスブックを辞めて49ersへ移籍する人たち」「シリコンバレー流スタジアム体験は「デジタルおもてなし力」」という記事を読むと、NFLの49ersはスタジアム内で使えるアプリを提供して、スマホの自動ゲート、キャッシュレス、駐車場アプリ、選手のスタッツ、ビールの注文といった事が出来るような仕組みを作ろうと考えているそうです。

「CityMatchday」が提供しているサービスは49ersとは異なりますが、目的は同じです。アプリを使って顧客とクラブとの接点を増やし、スタジアムを訪れた人に魅力的な体験をしてもらう。スタジアムを訪れることが出来なかった人には、スタジアムを訪れた人と同じような体験をアプリを通じて味わってもらう。スタジアムを訪れた人も、そうでない人も、目の前の試合を通じてつながるためのハブになるのが、アプリなのです。アメリカやヨーロッパのプロスポーツクラブは、その事をとても理解していると思います。

2つ目は、プロスポーツクラブがメディア化してきているということです。

マンチェスター・シティが凄いのは、映像コンテンツを自分たちで編集し、提供していることです。もちろん、コンテンツ編集にあたっては、協力会社との連携は不可欠だと思いますが、どこかのメディアに任せるのではなく、自分たちで編集し、自分たちのアプリやSNSを通じて提供しているのです。コンテンツを編集し、発表する。この機能は、従来はメディアが担っていました。しかし、テクノロジーの発達により、コンテンツを編集するのは手軽に出来るようになりました。豊富なコンテンツを抱えていたプロスポーツクラブが、メディア機能を持ち、集客やファン獲得のために、自らがメディアとなってコンテンツを配信していくのは、当然だと思うのです。

日本のプロスポーツクラブはスポーツコンテンツの力に気がついていない

日本のプロスポーツクラブはどうでしょうか。SNSでキャラクターの写真をアップしたり、チームの活動についてアップしたりはしているかもしれませんが、ロッカールームの写真、試合前の緊迫した表情、試合後の選手の声や、監督の記者会見映像、インタビュー動画を流したりはしていません。

もちろん、スタッツや試合のプレーについて調べたり、議論したり出来るアプリを作っているチームもありません。J1のチームでも、スマホサイトがないチームがあるのは驚かされます。(川崎フロンターレはスポンサーが富士通なのに、スマホサイトがありません。いつになったら出来るのでしょうか。)

日本のプロスポーツクラブは、自分たちが持っているコンテンツがいかに量が多く、質の高いものか、気付いていないと思います。コンテンツとは、クラブを取り巻く全てのことを指します。試合だけではなく、試合に訪れるサポーター、お店、街の風景もコンテンツです。そう考えると、プロスポーツクラブが持っているコンテンツが、いかに膨大な量か分かります。

こうしたコンテンツをいかにして質を高め、発信し、スマートフォンでも、PCでも、メールでも、SNSでも、楽しめるようにするか。プロスポーツクラブが求められているのは、従来はメディアが担っていた、コンテンツを発信していく機能なのです。つまり、プロスポーツクラブは、メディア化していく必要があるのです。日本以外の人に届けようと思ったら、英語での情報発信も必要ですが、誰にでも分かるものをと考えると、映像の訴求力を無視するわけにはいきません。今後、メディア化する上で、質の高い映像を作る技術はより重要度が増してくると思います。

お金や協力を求めるための仕組みが必要

13-14シーズンのマンチェスター・シティの売上げは650億円と言われていますが、この売上規模を上回る企業は、日本にはたくさんあります。たぶん、マンチェスター・シティは全て自社でお金を出して、紹介したような取り組みを実現させているのではないと思います。

自分たちが持っているコンテンツと情報訴求力を高めるために、企業や関係者の協力を上手くあおいだ上で、自社の負担を限りなく減らし、実現させていると思うのです。日本のプロスポーツクラブは、企業の支援を上手く仰ぐため、自らが抱えているコンテンツや場所を使って、企業のサービス向上に役立てるような仕組みづくりを提供することが求められているのだと思います。

自らが抱えているコンテンツをいかにして発信し、クラブの周りの企業やサポーターに活用してもらうか。日本のプロスポーツクラブは、もっと真剣に考え、協力社を求めていく必要があるのではないかと思うのです。

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