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書評「死ぬまでに行きたい 欧州サッカースタジアム巡礼」(斉藤 健仁)-スタジアムは街のシンボルであり、街の人々の憩いの場所-

   

死ぬまでに行きたい 欧州サッカースタジアム巡礼

サッカーが好きな人なら、一度はヨーロッパや南米で観戦してみたい。そんな人もいると思います。実際、テレビで観るのと、スタジアムで観るのとでは、同じを試合を観ているのに、全く体験できる情報が異なります。

ヨーロッパのスタジアムは、観光名所になっているところさえあります。スタジアム自体が街のシンボルであり、建築物としても優れている。そんなヨーロッパの有名なスタジアムを一覧で紹介してくれているのが、本書「死ぬまでに行きたい 欧州サッカースタジアム巡礼」です。ある時期「東京建築MAP」という本が話題になりましたが、本書はヨーロッパのスタジアムを建築物としての楽しみ方も紹介しています。

常に新鮮な驚きを与えてくれるスタジアムでの観戦

僕も、本書に掲載されているスタジアムのうち、5つを訪れたことがあります。

マンチェスター・ユナイテッドのホームスタジアムであるオールド・トラフォードは、照明がいい感じに暗くて、とてもフィールドが見やすいことだけでなく、出口の導線が3階席、2階席、1階席の人は異なる導線になっていて、70,000人以上の人々が、スムーズに退出出来る設計になっていることに驚かされました。

ローマのオリンピコでは、最寄りの「Piazza Mancini」というバス停からスタジアムまでの道が、サポーターが投げ捨てたと思われる空き瓶のガラスの破片で埋め尽くされていて、足元を気をつけながら歩いたのをよく覚えています。

ミラノのサンシーロでは、路面電車でスタジアムに向かう途中、女性のサポーターが突然チャントを歌い出し、呼応した男性のサポーターが飛び跳ね始め、路面電車が縦に揺れながらスタジアムに向かっている間、「頼むから、止まらないでくれ」と祈っていたことを、よく覚えています。

チェルシーのスタンフォード・ブリッジは、最寄り駅から近いぶん、帰りになかなか電車に乗れず、歩いて5分の道のりなのに、電車に乗るまでに1時間ちかくかかりました。2月の試合で、試合内容も面白くなかったので、身も心も凍える思いをしました。

FCバルセロナのカンプ・ノウは、スタジアムに入った瞬間、一緒にいた妻と2人でその大きさに圧倒されました。2人ともこんな巨大な建造物を見るのは、生まれて初めての経験でした。3階席がほとんど埋まっていないのに、60,000人以上を収容するスタジアム。照明も適度な明るさで、ボールが見やすく、選手もプレーしやすいスタジアムなんだろうと想像しながら感染しました。

スタジアムは街のシンボルであり、街の人々の憩いの場所

本書を読んでいて感じるのは、サッカースタジアムとは、街のシンボルであり、街の人々の憩いの場所なのだということです。

普段汗水たらして働いて、様々な不満やストレスをかかえた人々が、週に1度スタジアムを訪れ、美味しいお酒を呑んだり、友達と喋ったり、チームの応援に声をからし、チームの勝敗に一喜一憂する。そうして、普段かかえている不満やストレスから距離をおいた非日常の空間に身をおき、また気分新たに日常に戻っていく。だからこそ、スタジアムは街の人が「集まりたい」と思うような場所でなくてはならないし、集まってくれた人が楽しめるように、様々な仕掛けがなされていけないと思うのです。

ヨーロッパのサッカースタジアムは、訪れた人々が楽しんでもらえるように、様々な工夫がされています。プレーが見やすく傾斜をきつくした観客席、雨が当たらないように観客席を覆う屋根、常に芝生を最適なコンディションに保てるように排水システムが組み込まれたピッチ、など、一度作ったスタジアムに様々な改良を加えながら、常に試行錯誤していることがわかります。

また、試行錯誤するにあたって、ヨーロッパのサッカースタジアムは、歴史的背景を重要視しています。ただ建て替えるのではなく、その土地がどんな土地か、以前建てられていたスタジアムの良い点、悪い点を踏まえて、コンセプトを明確にし、コンセプトを実現させるために、新しい技術を積極的に取り入れています。日本の国立競技場問題を考えると、ヨーロッパのサッカースタジアムがどのような経緯で作られているのか、知るにはよい1冊です。そして、本書を読みながら、自分もいつかこんなスタジアムでサッカーを観てみたい。そう思いを馳せるのも、良いと思います。

ちなみに、僕が本書に掲載されているスタジアムのなかで、一度は訪れてみたいのは、ボカ・ジュニアーズのホームスタジアム「ボンボネーラ」です。「熱狂」という言葉がありますが、あのスタジアムが生み出す雰囲気ほど、その言葉が似合うスタジアムはありません。いつか、必ず訪れてみたい。本書を読んで、そんな気持ちを改めていだきました。

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