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エースストライカーが途中交代に怒る理由

   

2016年Jリーグセカンドステージ第9節、鹿島アントラーズ対湘南ベルマーレ戦に起こったある出来事が話題になりました。後半25分に交代を告げられた金崎夢生が、石井監督との握手を拒否。不満を露わにし、激昂したのです。不満を露わにし、激昂したのは人としてはいい事だとは思えませんが、この出来事をエースストライカーという仕事にかせられた責任と、彼らのこだわり、プライドという側面から考えてみたいと思います。

エースストライカーは自己主張が強い

エースストライカーを任される選手は、目立ちたがりで、自己主張が強い選手が多いポジションだと思います。自分のゴールでチームを勝利に導くことが仕事なので、当然相手チームからのマークも厳しく、強い接触、ファウルを受け、辛く、痛い思いをするのも、エースストライカーの仕事の一部だったりします。チャンスに何度も顔を出しても、ボールが届かなければ、自らの行動が無駄になってしまうポジションでもあります。だからこそ、エースストライカーを務める選手は、自分の仕事に誇りを持っていて、それ相応のプライドも持っています。「自分がチームを勝たせるんだ」という想いがなければ、このポジションは務まりません。

90分通して、時に1回あるかないかのチャンスに全てをかけています。だからこそ、90分間もらえれば、必ずゴールを奪ってみせる。そんな気持ちで試合に出場しています。そして、エースストライカーはチャンスは少ないと感じるからこそ、チームメイトのラストパスに対する要求は厳しくなります。エースストライカーがよくラストパスをミスしたチームメイトに怒るシーンを観ることがありますが、チャンスは簡単には訪れないということを、彼らは知っているからなのです。

エースストライカーは途中交代が嫌い

金崎の話に戻します。金崎は第2節のサンフレッチェ広島戦以降、湘南ベルマーレ戦含めて7試合ノーゴールが続いています。金崎はノーゴールが続いているからこそ、結果を出したいと思っていたはずです。エースストライカーは自分。自分がチームを勝たせる。結果が欲しい。そんな気持ちが強いからこそ、0-0で交代するということに我慢が出来なかったのだと思います。俺を信じられないのか。金崎の顔からは、そんな声が聞こえてきそうでした。

エースストライカーは、基本的に途中交代を嫌がります。2016年Jリーグセカンドステージ第6節、ジュビロ磐田対柏レイソル戦で、ジュビロ磐田のジェイが途中交代に怒ってペットボトルを蹴り上げ、チームの規律を犯したとして、次節はベンチ外になりました。監督としては、チームの規律を犯したので、当然の処置だと思います。チームの事情までは詳しくは分かりません。ただ、ジュビロ磐田のジェイ、鹿島アントラーズの金崎の出来事を目にすると、エースストライカーの気持ちを配慮した起用をしているのか、少し疑問に感じます。

エースストライカーは特別扱いを求めます。特別扱いをどこまで許すかにもよりますが、クリスティアーノ・ロナウドやリオネル・メッシのように、「守備をしない」というのも、特別扱いの1つです。その分、彼らはゴールを決め続けることで、特別扱いに応えています。もちろん、ゴールを決められなくなったら、その特別扱いは剥奪されます。クリスティアーノ・ロナウドとリオネル・メッシが凄いと思うのは、特別扱いを剥奪されないように、常に試合に出続け、結果を出し続けてきた事です。ちなみに、クリスティアーノ・ロナウドとリオネル・メッシは、途中交代や休養を目的とした試合欠場をとにかく嫌がる事でも知られています。

ストライカーはマグロ漁師

現在、2016年Jリーグの年間首位に立つ、川崎フロンターレには大久保嘉人というストライカーがいます。3年連続得点王を獲得し、Jリーグ通算得点でも首位に立つ、文字通りJリーグ最高のストライカーです。しかし、Jリーグ最高のストライカーであるということは、Jリーグで「最も扱いにくいストライカー」と言い換えられるかもしれません。チームメイトへの要求は厳しく、試合中に大久保が味方によく怒っているシーンを目にします。2016年シーズンは、常に「攻撃のクオリティが低い」と言い続け、得意とするミドルシュートによるゴールが少なくなった要因として、川崎フロンターレが中央からの攻撃が少なくなったと、時に味方に直接、時にメディアも使って、自分がゴールを決められるように、周囲に要求し続けます。

そんな、大久保の事をコントロール出来た監督は、これまでほとんどいなかったのだと思います。エースストライカーが持つ強烈なエゴとプライドを、エネルギーに変えられる監督がいなかったのでしょう。そういう意味で、エースストライカーという仕事の特性を理解している、風間監督に出会ったというのは、大久保にとってこの上ない幸運だったと思います。

風間監督は大久保に「ストライカーはマグロ漁師」と語っているのだそうです。イワシやサンマといった小魚を獲るような仕事(例えば守備)をしないでいいから、最後の最後に大きい魚(ゴール)を釣り上げてくれればいいと、常々語っているのだそうです。最後の最後に大きい魚を釣り上げてくれればいいと考えているので、風間監督は基本的に大久保を途中交代させることもありません。

ノーゴールが続いても、3試合くらいなら平然と90分間ピッチに立たせ続けます。大久保がノーゴールが続いても、ゴールを狙い続ける姿勢が変わらなければ、たぶん風間監督はずっと大久保を起用するのではないのでしょうか。風間監督が大久保を外すとしたら、ノーゴールが続いた事に落ち込んで、やるべきことをやらなくなった時だと思います。その時は、遠慮無く外すのではないのでしょうか。

エースストライカーと監督の間に慣れ合いはありえない

以前、「佐藤寿人の起用法から考える、エースストライカーと監督の微妙な関係」という記事にも書いたのですが、エースストライカーと監督は、常に一種の緊張関係を保ち続けるのだと思います。お互いボスは自分という思いを持っているので、慣れ合うような関係にはなりません。

鹿島アントラーズの石井監督、ジュビロ磐田の名波監督、サンフレッチェ広島の森保監督は、現役時代MFの選手でした。風間監督もMFの選手なのですが、こうしたエースストライカーの特性をどうやって理解したのかの考えると、風間監督自身がどこかボスとしての気質がある人だと思うので、気質の問題のような気もします。JリーグにはMFだった監督が増えていますが、エースストライカーが持つエネルギーをどうコントロールするのか。引き続き注目していきたいと思います。

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