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着たくない服は絶対着ない。誰に見られているわけでもないのだが、自分が見ているから。書評「祐真朋樹の密かな愉しみ」(祐真朋樹)

   

僕はほとんどファッションに興味はありません。

着ている洋服は、仕事の時は無印良品のチノパンに、鎌倉シャツ。休日は、cafe vivement dimancheのTシャツに、ユニクロのジーンズを履いています。仕事用に着るジャケットはPaul Smithだったりするそんな僕が、ファッションを語ったりする資格なんてないということは、よーくわかっております。

しかし、そんな僕が、図書館の本棚に並んでいた本書を手にとったのは、「ソトコト」という雑誌に連載されていた祐真朋樹さんの文章が凄く好きだったからです。ただ、読み始めても読み始めても、なかなか読み終わらない。最後は意地になって読みました。なんで読み終わらなかったって、あとがき含めて495ページもあるんですから。びっくりです。

本書「祐真朋樹の密かな愉しみ」は、メンズ向けのスタイリストとして知られる著者が、自身のサイト「SUKEZANE.NET」に掲載していた「365 STYLE」という、自身が普段来ている私服のスナップ写真と、その洋服にまつわるエッセイをまとめた1冊です。

着たくない服は着たくない

本書には、ファッションにまつわる著者の考えが、これでもかというほど濃密に語られています。TOM FORD、コム・デ・ギャルソン、PRADA、THOM BROWNE、などなど。様々なファッションブランドの名前が登場します。それにまつわる著者のエピソードも豊富で、日本だけでなく、ロンドン、パリ、ニューヨーク、など、海外の様々な都市で起こった出来事も交えているので、読んでいるだけで旅をしているような気分になっていて、読んでいてなんだかウキウキしてきます。

全体的には、著者らしい、楽しげで、ちょっと軽いタッチの文章でまとめられているんだけど、そんな文章の中にも、著者のファッションに対するこだわりが垣間見えるのが面白いところです。

僕はいつ、ファッションに目覚めたのだろうか。
自分が稼いだお金で服を最初に買ったとき、と答えるべきなのかもしれないが、
このようにガキの頃からこだわりは始まってた。

着たくない服は周りがどんなに薦めても、絶対に着たくなかった。
着たくない服を着せられると、小学校へ行かない日もあった。
(中略)
着たくない服は絶対に着ない。というのは今でも変わっていない。
納得のいかない格好は嫌なのだ。
大人になって、自分の着たい服を着ることができるというのは実に素晴らしい。
(#093 ショッパーブーツにグレンチェック。数十年の時を経ても、趣味は変わらない。)

「着たくない服は絶対着ない。」

人が、ファッションに興味を持つ理由は、突き詰めればここなんだと思うのです。

誰に見られているわけでもないのだが、自分が見ている。

そして、このエッセイはこんな言葉で終わります。

誰に見られているわけでもないのだが、自分が見ている。
この”自分が見ている”旅に終わりはないのである。

「着たくない服は絶対着ない。」し、「誰に見られているわけでもないのだが、自分が見ている」。ファッションにこだわる理由は、突き詰めるとここに行きつくのだと思うのです。

ただ、本書を読み終えると、見た目だけに特化したファッションの時代が終わりつつあるんじゃないかという気もするのです。見た目だけであれば、ファストファッションを組み合わせるだけでも、それなりに質の高い組み合わせが実現できるようになってきた中で、ファッションブランドが何をスべきなのか。ファッションからかっこよさを発信してきたスタイリストが、今後どうなっていくのか。そんな事も考えてしまいました。

最後に本書を読むときは、じっくりと時間をかけて読むことをオススメします。
なんせ、495ページもありますから。急いではいけません。

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