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スタジオジブリを支える現実主義者。書評「仕事道楽 新版――スタジオジブリの現場 」(鈴木敏夫)

      2014/09/30

「いつも現在進行形、面白いのは目の前のこと。」―“好きなものを好きなように”作りつづけ、アニメーション映画制作の最前線を駆け抜けてきたスタジオジブリも、2015年で設立30周年を迎えます。2013年に宮﨑駿が長編映画からの引退を表明し、高畑勲も2014年現在で78歳になります。このタイミングで、長年2人の監督を支え続けてきたプロデューサー鈴木敏夫は何を思うのか。

本書「仕事道楽 新版――スタジオジブリの現場 」は、鈴木敏夫がこれまでの仕事を振り返り、宮崎・高畑両監督とのエピソードを交えながら、自身の仕事について語った1冊です。なお、本書は一度2008年に出版されましたが、新たに2013年にインタビューを行った内容が追記されています。故に「新版」というわけです。

新版で加えられた文章で印象に残ったのは、鈴木さんの役割です。

高畑さんはアーティスト、宮﨑駿さんはエンターテイナー、という違いで表現されることもあります。アーティストとエンターテイナー。言い換えれば、ある種の理想主義者だといもいえます。そんな理想主義者二人と鈴木さんがやってこれたのは、現実主義者として、割りきってクールに対応してきたからこそ、長きにわたって一緒にやれたというのです。

高畑さんは、鈴木さんの事をこう語ったそうです。

「生涯会ったいろいろな人のうちで、鈴木さんがいちばんクールだ」

鈴木さんは作品に感情移入せず、モノとして扱う作業もやってきたそうです。「千と千尋の神隠し」の時は、124分の映画の中で、登場人物がそれぞれ何秒間登場しているか、絵コンテの段階で機械的に測りました。ここに、作者の深層心理が隠されているんじゃないか。そう考えたのだそうです。ちなみに、主人公の千尋の次に多かったのが、カオナシ。そこで、「千と千尋の神隠し」を千尋とカオナシの話しというふうにしたのだそうです。

また、「おもひでぽろぽろ」では、台本が出来上がった後、そばに時計を置いて、手伝ってもらって読み合わせをやり、何時間かかるか調べたのだそうです。そうしたら、2時間を超えることが分かった鈴木さんは、シナリオの一つ一つに秒数を書き込んで、高畑さんにそれを見せて、これだけの長さになっているから、これくらいに短くしてくれないか、と頼んだのだそうです。論理的な話でなければ納得しない高畑さんも、これには納得し、短くなったそうです。

ドワンゴの会長で、スタジオジブリのプロデューサー見習いを務める川上量生さんは、情熱大陸という番組の中で、鈴木さんについて、こう語っています。

鈴木さんてね、合理的な人なんですよね。
あんまり感情じゃなくて、理屈で判断するんですけど。

で、世の中の人は、理屈でやっているように見えて、実は理屈でやってないんですよ。
正しいといわれる、何か宗教的な教義があって、その教義に従ってやってるんですよ。
いわゆるヒットの法則、有名人出したら人気が出るとかね。

鈴木さんは一々それを考えてますね。本当にそうかを。
理屈という名の宗教を信じてないから、理屈でやってないように見える。

鈴木さんの現実主義は、徹底しています。

世の中の事を知るために、一般の人々を集めて話を伺ったり(その内容が「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ」でたまに放送されます)、最新の機器は真っ先に試し、(iPadとiPhoneを使いこなしているのだそうです)、様々な人の文章から、現代という時代を読み解こうとする(それが「熱風」に掲載されていたりします)。人から聞いて、読んで、自分で試して、今という時代をつかもうとする。

夢や自分の理想で物事を考えるということは、ありません。思い込みもありません。鈴木さんが考えた企画がこれほどの成功を収めたのは、の徹底した現実主義が根底にあるからだと思うのです。これは、企画者として、大きな強みだと思います。

鈴木さんは、本書の中でこのように語っています。

人間の生き方にも二つあると思っています。
目標を持ってそれに到達すべく努力する。
それは、簡単にできる事ではありません。
僕なんかも目標がなかったから。
もう一つは、目の前にあることをコツコツこなす中で、
自分次向いていることを見つけていく。
これが”生きる”ということだと思います。

その中では困難にもであるでしょうが、困難は楽しんだほうがいい。
その時のコツは、困難を”他人事”だと思うこと。
問題を客観的に見ると、解決方法が見つかることがあるんです。

こんな言葉にも、鈴木さんの現実主義者としての考え方が現れています。

長年にわたって名監督2人を支え続けてきたプロデューサーの仕事に対する考え方には、仕事を楽しむためのヒントがいっぱい詰まっています。普段本を読まない僕の嫁も「面白かった。読みやすい」と語っていた1冊。ぜひ、読んでみてください。

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