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力を出し惜しみしない。後の事も考えない。自分の力で登るしかない。書評「登頂 竹内洋岳」(塩野米松)

   

世界には標高8000メートル以上の高峰が14座存在しますが、日本人で初めてそれら14座への完全登頂を、無酸素で成し遂げた登山家がいます。それが、竹内洋岳さんです。そんな竹内洋岳さんが、13座目のチョー・オユー、14座目のダウラギリに登った時に、自身の体験を語った言葉をまとめたのが、本書「登頂 竹内洋岳」です。

変わっているけど、普通な人

8000メートル以上の高峰なんて、どんな世界なのか、僕らには想像もつきません。そんな世界に挑戦する人は、ちょっと変わった人なんではないか。神経がちょっと外れた人なんじゃないか。そんなイメージを持っていました。しかし、テレビで篠宮龍三さんとの対談で竹内さんが喋る姿を観た時、その予想は、半分当たっていて、半分外れていました。

篠宮さんに10座目に登頂したガッシャブルムⅡ峰に登頂した時、7000メートル付近で雪崩にあい、背骨を骨折する重症を負ったエピソードを披露している時の竹内さんは、その様子を他人ごとのように淡々と、そしてちょっと面白いエピソードを語るかのように、淡々と語っていました。(聞いていた篠宮さんがちょっと引いてました。)重症を負ったエピソードを語るとき、少し大げさに話しをするのが、人間というものです。しかし、竹内さんの語り口はどこか他人ごとで、自分の身に降り掛かった出来事ではないかのように、語るのです。ちょっと変わってます。

しかし、そんな竹内さんは、180cm,65kgというちょっと痩せた風貌で、どこかホワっとした見た目は、どこにでもいる普通のお兄さんといった印象を受けます。こんな人のどこに、標高8000メートル以上の高峰を14座も登頂する力があるんだろうと思ってしまいます。

ピンチも淡々と語られる

本書には、そんな竹内さんが13座目、14座目に登頂する様子が、語り口同様淡々と書かれています。淡々と語られているからといって、13座目、14座目ともに簡単に登頂できたわけではありません。

13座目のチョー・オユーでは、新たに募集したパートナーを途中で下山させ、カメラマンと2人で登ったものの、天候に恵まれず、途中で下山。2回目のチャレンジで登頂を果たしました。

14座目のダウラギリは、同行していたカメラマンを途中で下山させ、無事に登山したものの、下山途中でルートを見失い、途中でビバーク(緊急野営)。着の身着のままの姿で、日が昇るのを待たなければなりませんでした。そんなピンチも、本書では淡々と語られています。

遅い人や弱い人に合わせていたら、全員頂上には立てない

本書を読んでいて印象に残ったのは、竹内さんが登山について語ったこんな言葉です。

登山では遅い人や弱い人に合わせていたのでは、
全員頂上に立てなくなります。
力のある者が先にルートを作って登っていく。
力を出し惜しみしたり、後の事を考えてなんて言ってたら、
誰も登れないですよ。
自分の力で登っていくしかないですから。

この言葉は、登山というスポーツの本質を端的に説明しているだけでなく、何か目標を達成するにあたって、重要な心構えとして、頭にいれておくべき言葉ではないかとも思うのです。

何かの目標にチャレンジすることを、登山に例えることがあります。チームで何かの目標を達成しようとするなら、力のある者が先にルートを作り、後に続くものがその作られたルートを登っていく。こういうやり方が、チームで目標を達成する最も確実な方法なのではないかと、竹内さんの言葉を読んでいて感じました。そして、ルートを作る者、作られたルートを登る者、それぞれが自分の力で山を登らなければ、高い山に登頂し、下山してくることなんて出来ないのだ、と。

今まで地上で楽しむスポーツばかりしていた僕のような人でも、山登りへの興味を掻き立ててくれる1冊です。

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