ビジネスでも役に立つプロレスの本。書評「棚橋弘至はなぜ新日本プロレスを変えることができたのか」(棚橋 弘至)

2015/03/01

今、プロレスが凄いらしい。特に新日本プロレスが凄いらしい。

地方公演は軒並みソールドアウト。1月4日に東京ドームで開催された「WRESTLE KINGDOM 9」も36,000人を動員しました。10年ほど前、総合格闘技が盛り上り、プロレス団体にとって厳しい時代を考えると、この新日本プロレスの成功は、凄いことだと思います。

そんな、現在の新日本プロレスを支えるのが、棚橋弘至。自らを「100年に1人の逸材」と呼び、新日本プロレスを牽引している棚橋さんは、実は長年の間、「新日本プロレスのエースに相応しくない」とプロレスファンからブーイングを浴び続けた時代がありました。

ガラガラの会場、ブーイングの嵐、会社の身売り…存亡の危機にあった新日本プロレスを支え続け、ついに奇跡の復活へと導いた立役者は、どうやって、新日本プロレスを変えたのか。本書「棚橋弘至はなぜ新日本プロレスを変えることができたのか」は、プロレスファンからの罵倒を乗り越え、不動のエースになった「100年に1人の逸材」が、逆境の中でもがき続けた日々について書いた1冊です。

とにかくプロモーション

本書でぜひ読んで欲しいのは、新日本プロレスが存亡の危機からいかにして立ち直ったかについて、書かれた箇所です。新日本プロレスが存亡の危機にある中、棚橋さんはひたすらやれる事を実践します。オフの間に直接地方に足を運んで、ラジオ局、新聞、タウン誌、とにかく出してもらえるところには、どこにでも足を運び、いろんな話をして場を盛り上げ、大会の告知をしつづけました。プロレスの事を知らない人には、まず棚橋弘至自身に興味をもってもらって、1人でも多くの方に観に来てもらえるように、自分自身を売り込み続けたそうです。そこには、お客様の視点にたった棚橋さんのプロモーション戦略がありました。

また、棚橋さんは、積極的に自ら情報を発信し続けました。プロレス専門誌のコラムだけでなく、ブログ、Twitterなど、地方プロモーションと同じように、繰り返し繰り返し情報を発信し続けました。棚橋さんが凄いのは、「情報は一度発信しただけでは、伝わらない」と考えていたことです。実際にその通りで、「同じこと言ってるよ」「知ってるよ」と思われるくらい繰り返し同じことを発信し続けないと、情報が伝わったとは言えないのです。

006年にプロモーションを始めて、風向きが変わったと感じたと書いているのが、2011年。実に5年間かけて、棚橋さんは新日本プロレスを立て直しました。めげそうになったこともあると思いますが、棚橋さんは、全力で繰り返し繰り返し、自分の考えと新日本プロレスの魅力を訴えつづけたことが、風向きを変えたのです。

変革と信用を得るには、時間と手間がかかる

棚橋さんの本を読んでいると、物事が変わるには時間がかかること、人々の信用を得るには時間がかかること、そして変革と信用を得るには手間がかかることを、改めて実感します。1つの出来事で風向きが変わることがあっても、その風を受けて、物事を進めていけるかどうかは、苦しい時代にいかに努力していたかにかかっているのだと、本書を読んで改めて感じました。

変化の激しい時代、地道な努力を続けることは、簡単ではありません。でも、お客様の事を考えて、人のために自分が出来る事を続けていけば、いつか花開く事がある。いつになるかは分からないけれど、とにかく自分で考えて、出来る事を続けていく素晴らしさを、本書は教えてくれます。

本書は、いかにファンを獲得していくかということについて、とても大切なことが分かりやすく書かれた1冊です。ファンを獲得するということについては、ビジネスも同じです。本書は、プロレスという言葉で、読むのを敬遠するには惜しい1冊です。ぜひ多くの人に読んでいただきたいと思います。

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