「3-4-3」について考える。第2回:マルセロ・ビエルサの「3-4-3」

ビエルサの狂気―知られざる戦術マニアの素顔

サッカーには様々なフォーメーションがあります。戦い方によって「4-4-2」「4-3-3」「3-5-2」といったフォーメーションを使い分けているのですが、この記事では「3-4-3」というフォーメーションについて、詳しく紹介したいと思います。

ザッケローニがウディネーゼ時代「3-4-3」を使って1997-1998シーズンにセリエAで3位になったことがあるので、日本でも「3-4-3」を使うのではないかと話題になりました。現在の日本代表は「4-2-3-1」というフォーメーションを採用することが多いですが、「3-4-3」も引続きオプションとして試していますので、今後も採用される可能性が高いフォーメーションですが、日本では、あまり使われたことがないフォーメーションなので、サッカーが好きな人でも、「3-4-3」というフォーメーションについてはよく知らないのではないかと思います。

一言で「3-4-3」といっても、いくつかパターンがあり、パターンによって強調している事は違います。そこで、僕が知る範囲で「3-4-3」のパターンと、それぞれの特徴について紹介します。

今回はアルゼンチンが生んだ奇才、マルセロ・ビエルサの「3-4-3」について紹介します。

ビエルサの指向にマッチした「3-4-3」


マルセロ・ビエルサの名前を有名にしたのは、アルゼンチン代表監督就任後です。アヤックス式の「3-4-3」を進化させた独自の「3-4-3」で、2002年日韓ワールドカップの南米予選を圧倒的な強さで突破したことで、広く彼の名が知れ渡ることになりました。

2007年からはチリ代表の監督に就任し、3大会ぶりのワールドカップに導き、2010年の南アフリカワールドカップはベスト16入りを果たしました。2011年にはアスレティック・ビルバオの監督に就任し、UEFAヨーロッパリーグではマンチェスター・ユナイテッドを撃破しての準優勝、FCバルセロナとも死闘を演じました。

ビエルサが指向するサッカーは、1点取られても2点取るような攻撃的なサッカーです。ビエルサの指向に攻撃を重視した「3-4-3」システムはマッチしていたのか、アルゼンチン代表、チリ代表の時もシステムは「3-4-3」でした。アスレティック・ビルバオでは「4-3-3」を採用していましたが、「3-4-3」も時折試しており、「3-4-3」へのこだわりがうかがえました。

サイドアタックを重視した「3-4-3」

ビエルサの「3-4-3」はアヤックスやFCバルセロナが採用した3-4-3とは異なっています。

MFの両サイドにサイドバックを配置

ビエルサの「3-4-3」では、MFの両サイドにサイドバックがこなせるプレーヤーを配置しています。アヤックスだとセードルフやロナルド・デ・ブール、FCバルセロナだとシャビやイニエスタといった選手を配置するのですが、ビエルサはサネッティやソリンといったサイドバックタイプの選手を配置しています。

ここにビエルサの狙いがあります。ビエルサのシステムでは、サイドのDFとあわせて3人の選手がサイドに配置します。「4-4-2」や「4-2-3-1」ではサイドを担当するのは、サイドバックとサイドハーフの2名ですが、3名の選手を配置することで、サイドに起点を作って攻めていこうという意図があるのです。

DFの両サイドはセンターバックタイプの選手を配置

アヤックス/FCバルセロナでは、サイドバックに「サイドバックもセンターバックも出来る選手」を配置するのが一般的でしたが、ビエルサの「3-4-3」では、サムエルやコロッチーニといったセンターバックタイプの選手も、3バックのサイドに配置させています。これによって、アヤックス/FCバルセロナタイプだと弱点になっていた中央の守備を強化することが出来ますし、サイドはMFとして登録しているサイドバックに守備してもらおう、という考えなのだと思います。

MFにはロングパスが得意な選手を配置する

ビエルサの「3-4-3」では、サイドアタックを重視してるので、MFの中央のエリアには2名しかいません。したがって、アヤックス/FCバルセロナタイプのように、中央で短いパスをつないで攻めるのは、簡単なことではありません。そこで、MFにはロングパスが得意な選手が配置されることがあります。

分かりやすい例を述べると、2002年のワールドカップのアルゼンチン代表には、ファン・セバスティアン・ベロン、パブロ・アイマール、ファン・ロマン・リケルメという3人の優れたトップ下の選手がいましたが、ビエルサが一貫してレギュラーに起用したのは、ロングパスを得意とするベロンでした。ショートパスをつかった組み立てを得意とするアイマールはベンチ、リケルメに至っては代表にすら選ばれませんでした。

運動量が求められる「3-4-3」

ビエルサの「3-4-3」はサイドアタックに強みがある反面、アヤックス/FCバルセロナのフォーメーションと比較すると、選手間の距離が遠くなっています。したがって、ロングパスを効果的に使うことでチャンスを作りやすい反面、ボールを奪われると各選手の間を相手に使われ、ピンチを招きやすいという弱点もあります。

弱点を補うためにビエルサが選手に求めるのは、「正しい動き」と「ハードワーク」です。

ビエルサは、練習ではゲーム形式の練習をほとんど行わないのだそうです。ゲーム形式の練習を行わない代わりに、コートいっぱいにコーンを配置し、コーンとコーンの間をビエルサが指定する通りに動く練習をすることで、選手に正しい動きを身につけさせようとします。また、正しい動きを繰り返す練習を行うことで、サッカーに必要な体力と正しい動きを疲労がたまった状態でも出来るようにしよう、というビエルサの狙いが見えます。

次回は「3-4-3」でイタリアに旋風を巻き起こした、現日本代表監督アルベルト・ザッケローニの「3-4-3」について紹介します。

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