「3-4-3」について考える。第3回:アルベルト・ザッケローニの「3-4-3」

ザッケローニの哲学

サッカーには様々なフォーメーションがあります。戦い方によって「4-4-2」「4-3-3」「3-5-2」といったフォーメーションを使い分けているのですが、この記事では「3-4-3」というフォーメーションについて、詳しく紹介したいと思います。

ザッケローニがウディネーゼ時代「3-4-3」を使って1997-1998シーズンにセリエAで3位になったことがあるので、日本でも「3-4-3」を使うのではないかと話題になりました。現在の日本代表は「4-2-3-1」というフォーメーションを採用することが多いですが、「3-4-3」も引続きオプションとして試していますので、今後も採用される可能性が高いフォーメーションですが、日本では、あまり使われたことがないフォーメーションなので、サッカーが好きな人でも、「3-4-3」というフォーメーションについてはよく知らないのではないかと思います。

一言で「3-4-3」といっても、いくつかパターンがあり、パターンによって強調している事は違います。そこで、僕が知る範囲で「3-4-3」のパターンと、それぞれの特徴について紹介します。

今回は「3-4-3」でイタリアに旋風を巻き起こした、現日本代表監督アルベルト・ザッケローニの「3-4-3」について紹介します。

セリエAに衝撃を与えたザッケローニの「3-4-3」

1997-1998シーズンのセリエAで旋風を巻き起こしたチームがありました。3年前に昇格した、「ウディネーゼ」が、ACミランやASローマといった強豪クラブを抑えて3位でシーズンを終えたのです。当時ウディネーゼの監督を務めていたのは、現日本代表監督のアルベルト・ザッケローニです。予算が少ない地方クラブが強豪クラブを抑えて3位に入ったことで「奇跡のウディネーゼ」と賞賛されました。

当時ウディネーゼが採用していたのが、「3-4-3」のシステムです。ザッケローニは翌年ACミランに引きぬかれ、「3-4-3」を採用して(シーズン途中でフォーメーションを変更することになりましたが)スクデット(リーグ優勝)を勝ち取ります。「ザッケローニ=「3-4-3」」というイメージが定着したのが、この頃です。

少ないパスでゴールを奪うための「3-4-3」


ザッケローニの「3-4-3」は、アヤックス/FCバルセロナやビエルサの「3-4-3」とも異なります。

FWの2人はサイドではなく、1トップの背後に配置

アヤックス/FCバルセロナやビエルサの「3-4-3」とザッケローニの「3-4-3」との最も大きな違いは、FWの配置です。アヤックス/FCバルセロナもビエルサも、両サイドにFWを大きく開き、サイドラインギリギリに位置するポジショニングが求められていました。しかし、ザッケローニの「3-4-3」では、FW3人のうち2名は中央のFWの背後に位置し、中央のFWをサポートするようなポジショニングが求められます。

縦パスを有効に使った攻撃

中央のFWの下に2名のFWを配置することのメリットとしては、縦パスを使った攻撃がしやすいという点があげられます。従来の「3-4-3」では中央のFWが1人しかいないため、相手が4-4-2の場合、センターバック2人に対してFW1人ということで、縦パスを入れようとしても、数的不利のため、なかなか縦パスを使った攻撃が出来ませんでした。

ザッケローニの「3-4-3」であれば、CB2人に対して、FW3人のため、中央のエリアが数的優位になります。したがって、数滴優位を活かして中央のエリアを攻略していくことが可能になるのです。もともとイタリアのサッカーは、少ないパスで素早くゴールを奪う攻撃を得意にしており、パスを回して、サイドを崩す攻撃はあまり得意としていません。ザッケローニの「3-4-3」はイタリアのサッカーで「3-4-3」の攻撃性を活かそうとして生まれたフォーメーションなのです。

守備の時はMFのうち1人がDFラインに入る

ザッケローニの「3-4-3」はビエルサ同様に、MFの両サイドはサイドバックの選手が担当します。ザッケローニの「3-4-3」の特徴としては、守備の時は両サイドのMFのうち1名がDFラインに入り、DF4人で守備をします。この守備方法はビエルサの「3-4-3」も同様なのですが、DF3人と両サイドのMFとで、緊密な連携が求められます。

日本代表は「3-4-3」を導入する時、ディフェンスから攻撃、攻撃からディフェンスの時のポジショニングに戸惑っているため、うまく機能していないのだと、個人的には思っています。

ザッケローニ流の「3-4-3」は真似がしやすい

ディフェンスの約束事を除けば、ザッケローニの「3-4-3」は比較的導入がしやすいフォーメーションです。他のチームが導入する時は、守備をするときは両サイドのMFをDFラインに下げて「5-4-1」の形で守るようにしています。現在J2で3位と好調なヴィファーレン長崎も、このやり方で守ってます。

セリエAでもザッケローニ式の「3-4-3」を導入しているチームがあります。代表的な例は、今年インテル・ミラノの監督に就任したマッツァーリ監督です。彼はレッジーナに中村俊輔が在籍していた時の監督でもありますが、一貫して「3-4-3」を採用しており、昨年まではナポリの監督を務め、ナポリをチャンピオンズリーグ出場へと導きました。テレビで観ていると、基本的な約束事はザッケローニの「3-4-3」とあまり変わりないように思えます。

日本ではザッケローニの「3-4-3」の長所である「縦パスを有効に使った攻撃」とビエルサの「3-4-3」の長所である「サイドアタック」を組み合わせて攻撃するペトロビッチ方式の「3-4-3」というものもあります。攻撃の時は「4-1-5」、守備の時は「5-4-1」と常に局面局面で数的優位を作ることでゲームをコントロールしようというサッカーですが、1トップの後ろに2人のFW(シャドーという言い方をしていますが)を置くシステムは、ザッケローニの「3-4-3」と同じです。

3回にわたって「3-4-3」というフォーメーションの自分なりの見解をまとめましたが、一言で「3-4-3」といっても戦い方によって、選手の配置が微妙に異なります。その微妙な違いがフォーメーション論の面白さだったりします。将棋が好きな日本人はフォーメーション論が好きですが、数字の組み合わせだけにとらわれず、数字の裏側にある意図を汲み取って観戦すると、より深くサッカーが楽しめるようになると思います。

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