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書評「日本人が世界一になるためのサッカーゆるトレーニング55」(松井 浩,高岡 英夫)-「フィジカルが弱い」という状態はどうすれば改善されるのか(2)-

   

「日本人が世界一になるためのサッカーゆるトレーニング55」という本では、「ゆる体操」というトレーニングが登場します。「ダラー」「モゾモゾ」と言葉に出しながら、肩、腰、膝、すねといった部位を動かし、身体の力を抜いていきます。僕はこのトレーニングは、単に身体の力を抜くために行うトレーニングだと思っていたのですが、本当の目的は違いました。

「日本人が世界一になるためのサッカーゆるトレーニング55」という本を読んで初めて理解できたのですが、「ゆる体操」の本当の目的は、各部位の緊張状態を解くように動かすことで、「思い通りに動く身体」を作ることにあったのです。イチロー選手はこの状態を「神経の行き届いた身体」と表現しました。「モゾモゾ」と言葉に出しながら身体を動かすのは、声に出すことによって、身体への意識を高めることにあったのだと理解できました。

ラグビー日本代表は「フィジカルが弱い」問題をどう改善させたのか

「フィジカルが弱い」問題を解決し、躍進を遂げたのがラグビー日本代表です。ラグビー日本代表が「フィジカルが弱い」状態をどう改善させたのでしょうか。ラグビー日本代表の岩渕GMは、日本代表のトレーニングについての考え方について、こんな考えを述べています。

日本独自の理論を援用して、他の国々と差別化を図っていこうとする気持ちはよくわかります。いわゆる「関節の使い方」や「筋肉の使い方」、「ナンバ走り」のようなランニングのフォームに至るまで、海外の関係者が驚くほど専門的な理論が脚光を浴びている所以でしょう。また日本の古武術や相撲の技術論に、感服すべきものが多数あるのも事実です。

とはいえ、ラグビーのような異なる競技に理論を取り入れようとするならば、科学的、合理的なトレーニング理論と比較した上で、有効性を証明しなければなりません。
(中略)
私が代表ヘッドコーチのエディー・ジョーンズと最初に取り組んだのは、選手を徹底的に鍛え直し、身体能力を限界まで上げ切ることでした。基礎体力やスタミナの点で世界の強豪に対抗できなければ、自分たちの持ち味を発揮する以前に、勝敗が決してしまうからです。

当初はトレーニングの効果を疑問視する声も聞かれましたが、20代後半を過ぎたベテラン選手でも、運動能力が予想以上に改善されたことはデータにもはっきりと現れています。近年の強化試合で、日本代表が最後まで粘り強い戦いを展開できるようになったのは、選手たちが真のアスリートへと変貌したことも少なからず寄与しています。

Number Web「世界と戦えない「武器」はいらない。ラグビー界の技術・組織信仰を問う。」より)

ラグビー日本代表は、真のアスリートとして変貌した選手たちの身体能力を、ラグビーのプレーに活かせるように、徹底的に身体の使い方をトレーニングしました。タックル、スクラムといったコンタクトプレーで、鍛えた身体を有効に活用するために、専門のコーチを招いたうえでトレーニングを行いました。

身体中に力をグッといれたからといって、パフォーマンスが向上するわけではありません。望んだ動きを実現させるためには、「力を入れる」部分をコントロールする必要があります。身体にパワーをもたらすのは、腹筋、大胸筋といった身体の前の部位ではなく、背筋、ハムストリング、臀筋といった身体の後の部位です。そして、身体の使い方のトレーニングでは、身体よりむしろ頭が疲れます。

ラグビー日本代表が目指した「身体能力を限界まで上げる」トレーニングの目的は、「筋肉をつける」ことだけではありませんでした。重い重量を上げるトレーニングを行い、筋肉量を増やしたあと、増やした筋肉を有効に活用させるために、並行して身体の使い方をトレーニングさせる真の目的は、「パフォーマンスの向上」です。「パフォーマンスを向上」させたことで、「フィジカルが弱い」問題を解決してみせたのです。

「フィジカルが弱い」問題は、筋肉をつけても解決しない

僕は、「フィジカルが弱い」という問題意識をもった選手は、「筋肉をつける」トレーニングばかり重視する傾向にある気がします。本当に重要なのは、筋肉をつけたうえで、思い通りに動かして、パフォーマンスを向上させることのはずです。

前の記事で例にあげた最近の本田圭佑のプレーを見ていると、本田は「筋肉をつける」といった身体に力をいれるトレーニングばかりやっていて、身体を思い通りに動かして、力を入れる部分と入れない部分を使い分けるトレーニングができていないように感じます。

「苦しんだら苦しんだ分だけ、後で力になる」という考え方がありますが、パフォーマンスがよくないアスリートほど、この考えにとらわれすぎる傾向がある気がします。

そして、苦しみを与えやすい「筋肉をつける」トレーニングによってもたらされる疲労や痛みによって、自らの不安を打ち消し、満足感を得ようとしている気がしています。そして、トレーニングがパフォーマンスの向上につながらず、逆に悪化させている例も多いのではないかと、僕は感じています。

「日本人が世界一になるためのサッカーゆるトレーニング55」を読むと、「フィジカルが弱い」という言葉に潜む問題について、改めて考えさせられます。ここでいうフィジカルとは、「筋肉をつける」ことだけで改善出来るわけでも、長時間の練習をつめば改善出来るわけではありません。目的はパフォーマンスの向上です。

パフォーマンスを向上させるために、向上した身体能力をいかに使うか。そう考えると、技術と身体のトレーニングは、一緒に行う必要があるはずです。ラグビーは技術と身体のトレーニングの関連性が高いスポーツですが、サッカーも一緒に考えないと、「フィジカルが弱い」状態はいつまでも改善しないと僕は思うのです。

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