日本サッカーはなぜ決定力不足なのか。-敵がいてもシュートは撃てる-

昨年10月から、月に1度の割合で、川崎フロンターレの風間監督が立ち上げた「トラウムトレーニング」の講習会に参加しています。「トラウムトレーニング」とは、「もっとサッカーがうまくなりたい、もっとサッカーを楽しみたい」という子どもたちのために、“才能を制限しない場”あるいは“才能を発見し、引き出す場”として、風間監督が立ち上げたサッカースクールです。つまり、トラウムトレーニングのトレーニングメニューは、川崎フロンターレで実際に選手がトレーニングしているメニューでもあります。

川崎フロンターレは風間監督が就任してから、見ていてわくわくするような攻撃をする回数が増えました。観客数の増加も、川崎フロンターレのサッカーに共感しているサポーターが増えていることの現れだとも思います。僕は、川崎フロンターレのサッカーの秘密が知りたくて、講習会に参加させてもらっています。

これまで、「止める」「運ぶ」「外す(この回は不参加)」「受ける」「シュート」と、5回にわたって、テーマ別の講習会に参加してきました。講習会で実践するメニューは、風間監督のDVDで紹介されているメニューとほぼ同じです。しかし、講習会に参加して、実際にメニューをやってみなければ、分からなかったことがありました。それは、トラウムトレーニングと僕がこれまで体験してきたサッカーのトレーニングは、発想が全く違うということです。

前回は、トラウムトレーニングと僕がこれまで体験してきたトレーニングとの違いについて、紹介しました。今回は、トラウムトレーニングで学んだ「シュート」に関する考えについて、紹介したいと思います。

敵がいるとシュートが撃てない

日本代表の試合を観ていると、テレビで観ていて、シュートが撃てるようにみえる場面でも、味方にパスを出したり、なかなかシュートを撃たない。そんな場面を観ることは、一度や二度ではありません。一方、メッシやクリスティアーノ・ロナウドやスアレスといった選手は、周りに敵がいようが、自分が撃てると思ったら、果敢にシュートを狙います。この違いは、どこからくるのでしょうか。

前回の記事に書きましたが、僕がこれまで体験してきたサッカーのトレーニングは、基本的に「相手のミスを誘う」ためのトレーニングです。相手がミスをしないとシュートを撃たないので、極端に言うと、日本人選手にとってのシュートは「相手がミスして、敵がいなくなった状態で撃つもの」という認識が、無意識にすりこまれている気がします。

しかし、レベルが高くなると、相手はなかなかミスをしてくれません。むしろ、攻撃側のミスを誘うようなディフェンスを仕掛けることが出来る選手たちと、対峙する機会が増えてきます。また、人数をかけて守りを固めると、相手がミスをしても、他の選手がカバーできるため、なかなか綻びをみつけるのは難しくなります。

2015年アジアカップ準々決勝のUAE戦や、2014年ブラジルワールドカップのギリシャ戦は、人数をかけて守りを固めた相手を崩せず、引き分けという結果に終わりました。相手がミスをしないとシュートを撃てず、ゴールを決められない。そんな、日本サッカーの問題が露わになった試合だと思います。ただこれは、日本代表監督の責任ではありません。なぜなら、日本では「相手がミスして、敵がいなくなった状態で撃つもの」と無意識に叩きこまれているからです。もしかしたら、「自分たちは悪くない」と思っている選手の方が、多いかもしれません。

敵がシュートコースを教えてくれる

トラウムトレーニングのシュート練習は、一風変わっています。「相手を崩す」ことが発想の原点にあるので、シュート練習でもその考えは貫かれています。

例えば、シュート練習の時「相手GKに反応出来ないようにシュートを撃とう」という指示がとびます。相手のGKに反応させなければ、シュートが入る確率が高まると考えているからです。あるいは、ペナルティエリアの外に、バラバラとコーンを置いてシュート練習を行います。これは、相手のDFが沢山いてもシュートを撃つ練習です。重要なのは、相手GKに反応させないことです。むしろ、DFがいれば、DFを利用してGKからボールを隠し、シュートを撃つことでGKの反応が遅れるので、DFがいないより、シュートが決まる確率が高いと考えているのです。そして、DFがいれば、DFとDFと間を狙うことも出来ます。足の間もシュートコースになります。リオネル・メッシが右サイドから切り込んで撃つシュートは、相手のDFを巧みに使って、GKにボールを見えない位置と、振り足を小さくして撃ちます。これは、相手GKに反応できないようにするための工夫なのです。

このように、DFがいることを利用してシュートコースを作り出す考え方を、トラウムトレーニングでは「敵がシュートコースを教えてくれる」と表現しています。「相手がミスして、敵がいなくなった状態で撃つもの」という考えとは、全く違います。

いつも、みんなゴールを狙う

トラウムトレーニングでシュート練習をしている時、口酸っぱく言われるのが「いつも、みんなゴールを狙え」という言葉です。常にシュートが打てる位置で、ボールを止める。シュートを打つためのフェイントを仕掛け、相手のDFを動かす。相手を外して、パスを受ける動きも、全てはシュートを撃って、ゴールを決めるためなのです。そして、全員が自分がシュートを決めるつもりで、相手のDFやGKを崩す動きを続けることで、ゴールが生まれるのです。

トラウムトレーニングのメニューに取り組んでいる時、パスをつなぐことや、トラップすることに神経をつかっていると、ゴールを狙う意識が薄れてしまうことがありました。常に、ゴールを狙う意識をもっていないと、相手DFを崩すことは出来ないということを、身を持って体験しました。そして、ゴールを狙う意識をもっていなければ、DFを利用することも出来ないということも。

「相手を崩す」動きと、「敵がいてもシュートを撃つ」方法、そして「常にゴールを狙う」気持ち。この3つが揃うことが、決定力不足解消の条件なんだと思います。今の日本代表は、どれも足りていません。簡単に改善出来る問題ではありませんが、この3つがどうすれば揃うのか。今後も考えていきたいと思います。

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